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career-働き方

理系学生のための企業研究(3)会社がほしいのは社会貢献より
「会社」貢献する人

増沢隆太 authored by 増沢隆太戦略人事コンサルタント
理系学生のための企業研究(3) 会社がほしいのは社会貢献より「会社」貢献する人

 企業が採用を決める基準、「採用基準」とは何でしょう。当然各社採用にあたってはそうした基準を設定しているはずですが、一般的にそれは「一律な指標」や「数値」ではありません。どうやって評価するかという方法はデジタルなものではなく、普通は開示することはありません。

 そのような正体不明の「正解」を求めるよりも、その企業の「仕事」を理解できれば、採用で重要なポイントは推定できるようになります。前回はその企業がどんな仕事をしているのか見てみました。今回はさらに深く、企業の価値観を知るために会社の仕組みを検証します。

その会社の「仕事」を知らなければ就活は不可能

 本稿は企業研究にフォーカスしていますが、実際に就活を始めると、「志望動機」と「自己PR」の2大要素でたいへん苦労する学生が多いのです。「貴社のグローバルな将来性に惹かれ、自分を成長させていただける環境に魅力を感じます」のような、もっともらしく見えて実は中身がまるでない言葉のられつになってしまいかねません。

 企業が企業として存在する理由に、組織の維持・存続があります。民間企業である限り、この根本的な会社組織の原則は変わりません。製品やサービスの販売を通じて、適正な売上と利益を獲得することによって社員に給与を支払い、製品・サービスの性能を上げるべく設備投資を行い、より効率的な製品・サービス提供のために物流を整備するという、組織全体の維持が必要になります。

 細かい財務指標など経営データより、その会社の仕事の仕組み「ビジネスモデル」を理解する方がずっと重要で、なおかつすぐにでも可能です。ちなみに財務分析や経営数値の分析は、プロのアナリストでも簡単なことではなく、それらに意味がないのではなく、今優先順位として、特に理系学生には後回しで良いのではというのが私からのアドバイスです。財務分析が不要であるという意見ではありませんので、真意をご理解下さい。


利益確保ができなければ企業は存続できない

 企業という組織を維持するための原資は売上です。この基本原理はどんな企業であっても変わりありません。しかし企業は決してお金儲けだけのためにあるのではありません。適正な売上を上げることで、企業が成り立ち、そのための仕組み、モノやサービスの流れが商売であり、仕事です。売上を上げることで初めて利益が得られるのですから、利益を得ることも含めて当然企業の使命だと理解しましょう。

 なぜくどくこんなことを書くかというと、実はESや面接において、この根本原理を理解していない学生が驚くほどたくさんいるからです。商売の仕組みや企業という組織の存在理由を理解せず、適正な商売すら否定するかのようなきれごとの単語を並べていて採用基準を満たせるでしょうか?

 社会貢献を社是に上げる企業もありますが、その企業組織が維持存続できるからこそ社会貢献は可能になります。適正な売上と利益確保ができなければ企業は存続できず、結果として社会貢献もできません。社会に貢献するために社員を雇うのではなく、まずは「会社」に貢献することで、結果としてそれは社会に還元されるのです。

 価値観を理解するということは、こうした商売の成り立ちを理解することです。単に「好きだから」「興味あるから」「専門研究したから」という理由で、企業の根本的価値感に適合するでしょうか。会社に貢献してもらうために給料を払うという当然の理屈がわかっている人の方が企業の価値観に合うのは明らかです。

 自分が欲しいもの「好きな研究」「楽な職場・短い労働時間・高い給与」「自己成長」を与えることは企業の目的ではありません。社員が仕事で成果を出すことによって、それらは結果として得られるものです。会社側も労働者(学生)側も、どちらか一方だけが与えられたり、権利を満喫できるものではありません。

企業価値への貢献

 その会社がどのように運営され、何を目指し、実際どういう状況になっているかは調べなければわかりません。大学生・大学院生では、たとえ文系の経営・経済系の専門であっても、実社会の実態をわかっているのはまれで、まして理系学生が企業の実態をわかっていることは普通はありません。

 そうした企業知識がない中で企業を選ぶとは、単に不十分な情報の中で選択をしている訳で、きわめて不正確で危険なものになります。結果として文系理系問わず、一定の「有名」企業だけに応募が殺到し、社会人から見れば立派な一流企業でも、一般人への知名度が低いBtoB系企業はなかなか人員が充足しないという状況になっているのです。

 このような一般学生の流れに乗ることなく、本稿で述べているような理系学生は現実的にできる企業選択を行うことで、人と違った戦いができるようになります。激しい消耗戦で過大な時間とエネルギーをかけて、勉強や研究そっちのけで活動するほど愚かしいことはありません。成果も限りなく出ないことでしょう。

 それよりは企業選択の「正解」のような存在しない採用基準を追い求めるのではなく、企業の価値観を理解できれば良いのです。ビジネスモデルといいましたが、どうやってその会社が日々の仕事を回しているのかを理解することが最優先の企業研究です。絶対に自分の勝手な判断で「この会社はこう」「○○業とはこんな仕事だ」と決めつけないようにしましょう。

 次回はビジネスモデルと自分の能力のマッチングについて述べたいとと思います。