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教科書は街おこし(5)大学生歓迎! すみだ北斎美術館のBiz@北斎と熱中小学校

久米信行 authored by 久米信行久米繊維工業会長
教科書は街おこし(5) 大学生歓迎! すみだ北斎美術館のBiz@北斎と熱中小学校

 2016年11月22日に、待望の「すみだ北斎美術館」が開館いたしました。墨田区に生まれ暮らした世界的絵師「北斎」の作品を、数多く収蔵し、展示する美術館です。すみだ北斎美術館は、1度目にしたら忘れられない独創的な建築設計も魅力です。これは建築のノーベル賞と言われるプリツカー賞を受賞した世界的な建築家、妹島和世先生の手によるものです。

 既に訪日外国人に大人気の両国国技館や江戸東京博物館、そして2018年開館予定の刀剣博物館と合わせ、墨田区の両国エリアが日本文化を世界に発信する一大拠点となることは間違いありません。勝手に観光協会たる私も、すみだ北斎美術館が東京スカイツリーと並ぶ観光地域づくりの起爆剤になると確信して、計画段階から応援を続けて参りました。

オープン直前の「すみだ北斎美術館」と、学芸「人」の葛飾ふとめ・ぎょろめさん

 2009年には美術館の名称決定、2010年にはシンボルロゴマーク決定の委員を務め、美術館建設に反対する区民も多い中、2012年には区報に応援コメントを掲出。2014年には、北斎アイディアフォーラムを開催し、2015年からは、北斎コミュニティデザイン実行委員会の委員長を務めました。

 同委員会では、開館前から独自に活動を続けてきました。例えば、美術館共同創設者でもある東京東信用金庫(ひがしん)澁谷哲一会長は、両国支店をいちはやく北斎ギャラリーに改築して観光スポットに変えました。また、JTB深沢レイチェルさん、サンケイリビング東京の和田直子さん、FMG花村ひろ子さん、昭文社ことりっぷ大川朝子さんなど、区外の達人委員のアドバイスで、美術館建築現場ツアー、第一ホテル両国での和のアフタヌーンティー、緑公園のマルシェ、学芸「人」葛飾ふとめ・ぎょろめデビューなどを進めてきたのです。

▼すみだ北斎美術館
http://hokusai-museum.jp/
https://www.facebook.com/THE.SUMIDA.HOKUSAI.MUSEUM/

美術館を「変人」発見と教育の場に

 そこまで私が気合いを入れるのには理由があるのです。

 世界に誇るべき「すみだ北斎美術館」も、ただの美術館=ハコモノで終わらせてはもったいない。東京下町すみだ=イーストトーキョーから、新しいムーブメントの大波を巻き起こす一大拠点にしたいのです。

 私の想いは「21世紀の北斎を探せ! 育てよ!」という一点に尽きます。

 今でこそ世界に知られる北斎も、今お隣に暮らしていたら即クレームが殺到しそうな、言わば奇人変人です。絵さえ描いていれば幸せで、寝食を忘れて描き続ける。部屋を片付けることもせず、散らかり放題で、限界まで汚れると引っ越す。同居する自分の娘を、名前ではなく「アゴ」とか「オーイ」と呼びつける。

布団にくるまって描く北斎と、それを見つめる娘、応為(すみだ北斎美術館展示より)

 70代で富嶽三十六景など名作を遺していながら、80歳を過ぎてもネコの絵ひとつまともに描けないと涙を流す。死の床にあって、あと5年あれば真正の画工になれたのに......と残念がる。

 しかし、その変人北斎の画業は、当時の大衆を惹き付けただけではなく、世界の美術界に革命を起こし、今なお世界で愛され続けているのです。北斎が描いたタコの春画=ポルノグラフィーが、あの大英博物館で絶賛されるなんて、痛快ではありませんか?

 ところが、今の日本は息苦しい「同質化強制社会」になってしまいました。学校であれ、会社であれ、街中であれ、ちょっとでも人と違うとイジメに遭う。役所に通報されれば、役人はビクビク、すぐルールを厳しくする。ネットで炎上すれば、メディアもオロオロ、すぐに放送自粛する。

 これでは、北斎のような人を見出し、版元から彫師、摺師まで大らかに育てる文化風土は生まれようもありません。


すみだ北斎美術館 共同創設者 ひがしんビジネスフェアのためのTシャツ

 だからこそ、すみだ北斎美術館を「世界に誇れる変人→偉人を育てる」拠点にしたいのです。そして、わが郷里、墨田区を世界一「変人許容度の高い場所=百年後の偉人が生まれる場所」にすることが私の夢「墨田区百年の計」なのです。

 そのため、美術館開館を期に、まずは2つのムーブメントを始めました。いずれも、大学生にこそぜひ参加してほしい月例の学びの場です。まさに、まちをビジネススクールにするための一環と言って良いでしょう。

▼明大講義ブログ「墨田区百年の計」

Biz@北斎=すみだ北斎ビジネス創造ワークショップ

 Biz@北斎は、すみだ北斎美術館や東京下町すみだにふさわしい、楽しく面白い新商品・新サービス・新ツアー・新イベントなどを思いついた人の10分間プレゼン大会です。

 せっかく素晴らしいアイデアを思いついても、残念ながら日本はヨソモノ・ワカモノ・バカモノに厳しい縦割りのムラ社会。地元のキーパーソンに出会い、紹介してもらわなければ実現が難しいのが現状です(実は、多くの公職を持つ私でもアイデアを実現することはままなりません)。

 そこで、月に1度、地元の役所、商工会議所、観光協会、金融機関、有力企業・NPOのリーダーに一堂に会していただき、その場でプレゼンをしてもらおうと企画したのがBiz@北斎です。

 ただプレゼンをするだけでなく、実現のカギとなるキーパーソンに逆質問をしてアドバイスをいただくこともできます。さらに、会場に集まった数十人の達人からのアドバイスシートも受け取って、未来のお客様やパートナーを見つけることもできるのです。また、ボランティアでBiz@北斎の運営をサポートしてくれている井上佳洋さん、山田直大さんたちは、区内で数々のイベントやPR企画を成功させている達人ですので、面白い企画があれば心強いサポーターになってくださるでしょう。

 また、ここでのプレゼン資料や動画はネットに公開されますので、より広く助言や支援を集めることもできます。墨田区ではキーパーソンの多くがFacebookなどSNSを活用している方が多いので、ネット拡散も期待できます。

「わらび座」のミュージカルを通じて、北斎の素晴らしさを伝えようと山川社長が提案

 去る10月3日に、Biz@北斎 Vol.0を試験実施しましたところ、6人のプレゼンターが手を挙げて熱い想いを語りました。その中には、なんと秋田の街おこしの雄「わらび座」山川龍巳社長もプレゼンにご参加くださったのです。東京オリンピックに向け、墨田区でミュージカル「北斎」を定期公演、地元の子供達から海外のVIPまで、北斎の偉業を楽しく伝えようとご提案くださいました。その熱い提案に心動かされ、地元の経営者有志が、場所探しなどに動き始めたところです。

 Biz@北斎Vol.1は、12月12日に開催いたします。ぜひ大学生にも、まずは聴衆=アドバイザーとして参加いただき、いずれはプレゼンターやそのサポーターとして活躍していただきたいのです。大学の講義では接することのできない、地域のリーダーの息吹に触れ、実際にプロジェクトに参加することで、大いに「社会人基礎力」を高めることができるでしょう。

▼Biz@北斎 

熱中小学校 東京分校@すみだ北斎美術館

 2015年10月、「もういちど 7歳の目で世界を」のキャッチフレーズの基、山形県高畠町の廃校が「熱中小学校」として甦りました。熱中小学校は、学びたい気持ちのある人なら誰でも参加できる大人の社会塾。現在、18歳から77歳まで、114人の生徒が学んでいます。

 熱中小学校を運営するNPO法人はじまりの学校は全国展開を進めて、福島県会津に會津熱中塾、富山県高岡市に高岡熱中寺子屋、東京都八丈島に八丈島熱中小学校が同様の理念の基に開校し、今では約400人の生徒が、各界で活躍するビジネスパーソンを中心とした100人以上の著名ボランティア講師の授業を受けています。私も、熱中小学校発案者で用務員の堀田一芙さんにお声をかけていただき、山形、福島、高岡で、道徳や観光地域作りの先生を務めています。

 今後、北海道更別村では十勝さらべつ熱中小学校、徳島県上板町で、とくしま上板熱中小学校、宮崎県で宮崎こばやし熱中小学校が2017年4月の開校に向けて準備をしており、1年半で7校になる予定です。これらの取り組みは2016年度の「グッドデザイン賞」にも選定されました。

 こうした全国の熱中小学校・熱中塾・熱中寺子屋の東京分校として、すみだ北斎美術館が選ばれました。単なる美術館ではなく、現在の我が国の大きなテーマである地方創生のために、学びに対する熱意をもつ首都圏の皆さんと地方の生徒さんが交流する場所になるのです。

 今後、熱中小学校は、Biz@北斎などとも連動して、地方と東京が一体となって人材育成、起業、商品開発、EC通販などを恊働しながら、共に成長するモデルを模索していきます。

 おかげさまで、来たる12月5日に開催されるオープンカレッジも、あっという間に満席となりました。同校の校長でもある内田洋行の大久保昇社長のご厚意で、12月5日午後6時30分~ネット中継もされますので、ぜひご覧ください。
https://abemafresh.tv/uchidayoko/62578

 熱中小学校の東京分校は、2017年に開校予定です。山形県高畠町をはじめとして、地方の課題を一緒に考え解決する、地方創生の主役となれる人財を募集します。ぜひ、東京で学ぶ大学生も、熱中小学校東京分校に参加して、第二の故郷を見つけて欲しいのです。大学の講義では決して得られない各界達人講師との出会いと貴重な現場体験は、きっと社会人基礎力を究める好機になるでしょう。

▼熱中小学校
▼熱中小学校東京分校

大学以外に学びの場を持とう!

 Biz@北斎も、熱中小学校東京分校も、月に1、2回、平日夜の参加ですから、大学の講義とも両立できます。参加費も月1000~2000円前後と、カラオケや居酒屋1回分ぐらいの低コストですから、大学生でも気楽に参加できるでしょう。

 こうした「まちをビジネススクールに変える」試みに積極的に参加すれば、自らの人生を変え、地域の未来を変えられるはずです。すみだ北斎美術館を拠点に始まった2つのプロジェクトへの熱い大学生の参画を、心からお待ちしています。