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貧弱な中古市場、
「スマホ墓場」は存在するか

貧弱な中古市場、「スマホ墓場」は存在するか

 かつては「ガラパゴス化」といわれた携帯通信の世界だが、最近の日本の通信サービスは良くも悪くも世界標準に近づいてきた。端末市場ではいわゆるガラケーが徐々に少数派になり、「iPhone(アイフォーン)」をはじめとするスマートフォン(スマホ)が主流になった。ツイッターやフェイスブックなどのグローバルSNS(交流サイト)の利用者も増え、ネットフリックスのような米国発のコンテンツサービスも市民権を得つつある。

 だが、すべてが世界並みになったわけではない。日本にいると「当たり前」と思って見過ごしているが、海外からみると「なんで日本にはこれがないのか」と不思議に思う事象がまだ残っている。その一つがスマホの中古品市場がきわめて貧弱なことだ。

中古を扱わない国内キャリア

 例えばドコモショップで「中古品の端末を買いたいのですが......」とリクエストしても、「扱っておりません」と冷たく返されるのがオチだろう。そもそも買う側も携帯ショップは新品しか売ってないのが当たり前で、中古品のことなど頭の片隅にもないことがほとんどだろう。どうしても中古を手に入れたいなら、ブックオフやゲオモバイルなどを訪ねる必要がある。

 ところが、米国では事情が違う。例えば米AT&Tの公式ホームページにある、携帯端末の販売サイトを訪ねてみよう。希望の価格帯やメーカーなどの条件を入力するとそれに適合した端末が画面に出てくる仕組みだが、その条件の一つに「condition(状態)」という項目がある。そこには

・new(新品)
・certified like-new(認証済みの新品同様の中古品、いわゆる新古品)
・certified pre-owned(認証済みの中古品)

の3つの選択肢が並んでいる。「中古で十分」と考える消費者は後ろ2つのいずれかをクリックすれば、その時点で入手可能な中古端末が閲覧できる。実際に試してみると、中古品の品ぞろえがそれほど豊富なわけではないが、それでもAT&Tの公式サイトで中古スマホを扱っているのは事実である。

国内では中古スマホの取り扱いは中古店が中心だ(写真は都内の中古スマホ売り場)

 そこでNTTドコモの吉沢和弘社長に「なぜドコモショップでは中古品を扱わないのか、今後扱う計画はあるのか」を聞いてみた。答えは「検討の俎上(そじょう)には載せるが、現時点では考えていない」というものだった。

 そもそもドコモをはじめとする三大キャリアは新型スマホを売るときに、古い端末を下取りすることが多く、大量の中古スマホを保有しているはずだ。それをどう活用しているか聞くと、「(状態のいいものは)スマホを壊してしまったお客様に提供するリフレッシュ品として活用している」という。残りは業者に卸して、彼らが海外市場に売ったり、リサイクルして貴金属を取り出したりすることもあるようだが、中古品として国内市場に還流することは現状ではまずない。

公取委、多様な選択肢提供を望む

 こうした状況を踏まえて、公正取引委員会は今年8月に出したガイドラインで「日本の中古スマホの流通数は2014年度で227万台にとどまり、新品出荷の8%程度にすぎない」と指摘し、競争政策上問題があるという考えを示した。自動車には新車市場と中古車市場が並立し、消費者に多様な選択肢がある。それと同じくスマホでも「少々型落ちでも安く手に入れたい」人向けに中古品市場の発展が望ましいという考え方だ。

 その上で「メーカーがキャリアに対して中古品の市場還流を禁じたり、あるいはキャリアが業者に卸す際に、その端末の国内市場での販売を制限したりする行為があれば、独占禁止法上問題となる恐れがある」と指摘した。

 それにしても、ドコモなどのキャリアは大量に下取りした中古スマホを実際にどう処理しているのか、実像は見えにくい。一説には都内の某所に巨大な倉庫があり、そこに大量の中古アイフォーンなどが眠る「スマホ墓場」があるというが。これは都市伝説の類いで、その実在が確認されているわけではない。
(編集委員 西條都夫)[日経電子版2016年11月8日付]

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