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島キャンリポート(16)将来、島で農業をしたいという夢を
追いかけて

authored by 島キャン
島キャンリポート(16) 将来、島で農業をしたいという夢を追いかけて

 こんにちは! 千葉大学園芸学部2年の山本康代です。インターンシップをしながら島おこしについて考える島キャン。夏休みの2週間を利用して、奄美群島の喜界島にインターンに行ってきました。

マンゴー、ゴマ、サトウキビ

 360度海に囲まれ、自然豊かで人との距離が近い小さな島にもともと興味があり、将来は移住したいと考えていた時に見つけたのが島キャンでした。インターン先に農家さんがあり、将来農業をしたいと考えている自分にはぴったりのインターンなのではないかと思い参加しました。私は夏休みの2週間、喜界島の南村製糖さんにお世話になりました。南村製糖さんはマンゴー、ゴマ、サトウキビを作り、加工もしていてゴマ油や黒蜜を作っています。主に仕事を教えてくださったかずやさんの思いや私が仕事や島での生活で感じたことをお伝えしていきたいと思います。

かずやさんの畑でとれたマンゴー

今までに経験したことない太陽、この暑さにも理由が

 私は8月上旬にインターンに行ったので、仕事は主にマンゴーの収穫、マンゴーハウスの片づけでした。マンゴーはハウスの中で栽培されており、仕事は暑さとの闘いでした。外にいると太陽の光が肌に突き刺さるような痛さを感じ、ハウスの中ではサウナのような蒸し暑さでした。本当に暑い日には意識がもうろうとする時もありました。作業をしていると滝のように汗が流れてきて、前が見えなくなるほどです。このようにとても暑いハウスでも遮光をすればある程度ハウス内の温度は下がります。

 しかし、かずやさんのハウスは遮光していませんでした。その理由を聞くと、「遮光をするとマンゴーが真っ赤にならんのよね。そういうマンゴーは好かんのよね。真っ赤なマンゴーを育てたい」と答えてくださいました。真っ赤なマンゴーは見た目が美しくなります。かずやさんは、お客様にどのようなマンゴーを届けたいか考えながら育てているのだと知り、真っ赤なマンゴーにはかずやさんの熱い思いがこもっているのだと思いました。だからおいしいのですね。

マンゴーと私

 マンゴーは収穫した後、肥料まきと剪定を行います。肥料は木一本一本に丁寧にやります。実はかずやさんの育てているマンゴーは肥料と共に喜界島のゴマももらっている贅沢なマンゴーなのです。ここで、肥料にも混ぜている喜界島のゴマについて少し紹介させていただきます。日本のゴマの99%は輸入品のゴマです。残りの1%が国内産のゴマで、そのうち6割が喜界島で作られています。喜界島のゴマは香りがとても強く、高級な、貴重なゴマなのです。

ゴマの花

 そんなゴマを肥料に混ぜてまいているのです。この肥料と共にまくゴマは、ゴマ油を搾った後のゴマです。ゴマをまくことでマンゴーにどのような影響を与えるかはわかっていないそうですが、同じ島で育ったゴマの恵みを、かずやさんはおまじないのような感覚でまいているそうです。来年もおいしいマンゴーがたくさんなりますように、という思いがたくさん詰まっているのです。

 肥料をまいた後に行う作業が剪定です。剪定は次の年にマンゴーを木にならせる、これからの木の形を決めていく大切な作業です。剪定をしないとハウスの中が荒れ放題になってしまい、マンゴーの実に栄養がうまくいかず、来年甘いマンゴーができなくなってしまいます。

 私が就業していた時期にたまたま剪定の技術職員の方がかずやさんのマンゴーハウスに来てくださり、かずやさんと剪定の仕方を学び、私も剪定の仕事をさせていただきました。私が技術職員の方からもらった仕事はかずやさんが木のおおもとの剪定をしやすくするため、一節戻すという小さい剪定でした。一節戻すというのは、簡単に言うと枝の先端を20cm程度切ることです。

 剪定をしていると、かずやさんから「剪定をさせるのは康代が初めてだよ」と言っていただいたのはほんとうにうれしく、さらに「康代が先に剪定していてくれるとその後の剪定がしやすい」とまで言っていただきました。剪定に慣れてきた頃、かずやさんに「1本剪定してみようか」と言っていただき、昨年実をつけなかった木ではありますが木1本丸々剪定させていただきました。剪定を始めてみると、どの枝を切っていいのか、かずやさんの剪定を見ていても実際自分がやるととても難しく、かずやさんの3倍くらいの時間がかかってしまいました。剪定をおえると、かずやさんに「よくできたね」とほめていただけたので安心しました。

 肥料まきや剪定をさせていただき、農業は本当に大変だということを改めて実感しました。1年間かけて夏の収穫時期に向け手入れを行います。朝早くから、夜までハウスで作業するのはとても体力がいるし、作業のほとんどは頭を使う作業です。体力的にも精神的にも大変だなと思いました。しかし、今回マンゴーハウス作業をしていて、私はハウス作業が苦にならず、とても楽しくできました。来年はどのような木ができるのかなとか、来年もおいしいマンゴーなるかなとか1人で考え、ワクワクしながら作業していました。

 普段はスーパーに並んでいる野菜や果物を見て、作った人のことなどは考えず、ただ高いなと思って買っていました。けれども、実際に農作業をやっていると、いままで高いと感じていた野菜や果物もあんなに大変な思いをして育てているのに、これでは安いなと思うようになりました。マンゴーも1個3000円程度しますが、安いなと感じるようになりました。2週間という短い時間で農業を通じて考え方が大きく変わりました。

マンゴーの剪定を行う筆者

家族の一員になれた2週間

 先ほども書いたように、マンゴーハウスでの作業は本当に大変でした。しかし、そんな大変な作業を毎日楽しみながらできたのは南村さん一家の支えがあったからです。かずやさんの奥さんのしのぶさんにはとてもお世話になりました。午前中に1回、午後に1回ある休憩時間にはマンゴーやお菓子、飲み物などたくさんの差し入れを持ってきてくださいました。またお昼御飯もいつも作ってくださいました。

 お昼ご飯で特に印象に残っているのは伊勢海老とマンゴーのカレーです。マンゴーはそのまましか食べたことがなかったので衝撃でしたが、贅沢な一品でとてもおいしかったのを覚えています。休憩やお昼以外にも一緒にテレビを見たり、語ったり、本当のお母さんのような存在でした。かずやさんのご両親や親せきを集めてバーベキューまでしてくださいました。暖かく私のことを迎えていただき本当にありがとうございました。

お世話になったかずやさん(左)と筆者(右)

想像以上の島生活

 2週間喜界島で生活をして、人の温かさに本当に驚かされました。隣のおばあちゃんは車をかしてくださったり、毎日野菜をくれるだけでなく、次の日の夕飯のおかず、東京に帰る日には柏餅を作ってくれ持たせてくれました。私が「島で農家のお嫁さんになるのが夢なんですよ」と言えば、みんながいろいろな人を紹介してくれました。小学生も人見知りすることなく「康代おねえちゃん」と言って寄ってきてくれるし、通りかかっただけのおじいちゃんと1時間以上話し込んだのも思い出です。

しのぶさんが作ってくださったマンゴー伊勢海老カレー

 かずやさんのお母さんのふさえさんも「ここまで島になじんで、顔も広くなって、人柄がいいんだね」と、帰る前の日に言っていただいたのは今思い出しても泣けてきます。いろんな方に出会い、いろんなつながりができた2週間でした。最後に空港で小学生からもらった手紙、東京に帰ってから届いたビデオメッセージ。東京に帰ってきてからも広がる島の方たちとの出会い。まだまだ出会いが広がりそうでワクワクします。

 また、蒸し暑いハウスでの作業、毎日の水やり、収穫時期を見逃さないなど農家さんの苦労を改めて知り、生半可な気持ちでは農家にはなれないと改めて感じさせられました。喜界島で2週間過ごしてみて、やはり、将来は島に住んで農家になりたいと、より強く思うようになりました。そして、島独特のゆっくりと過ぎていく時間とか、東京とはまた違った人の優しさなど島の魅力をたくさんの人に知ってほしいな、とも思いました。

 今、私が東京にいてできることは、喜界島のことをたくさんの人に知ってもらうことだと考えているので、積極的に島の発信をしていきたいなと思います。そして、来年の夏も南村さんのマンゴーハウスにお邪魔して、私が剪定した木にマンゴーがなっているか確かめてきたいと思います。またお手伝いさせていただき、戦力になるよう、今は勉強を頑張りたいと思います。

山本康代(やまもと・やすよ) 千葉大学園芸学部園芸学科に通う学部2年生。2016年夏喜界島南村製糖に就業。趣味は旅にでること。将来の夢は日本の隅々まで旅をすること。島で農家になること。
【島おこしインターンシップ「島キャン」】
離島での就業体験をしながら、離島の島おこし・地域活性化に貢献する新しいかたちのインターンシップ企画。
http://www.shimacam.com/index.php

南村さんの娘のつむぎちゃん(左)、しのぶさん(中)と筆者(右)