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チャレンジャーズ(5)新人研修の課題が「絶景」ブームに
~詩歩さん

八木彩香 authored by 八木彩香フリーライター
チャレンジャーズ(5) 新人研修の課題が「絶景」ブームに~詩歩さん

 こんにちは。フリーライターの八木彩香です。この連載では、様々な分野で活躍する人の人生を深堀りしていきます。ビジネスやスポーツ、芸術、IT、教育、音楽など、それぞれの舞台でチャレンジし続ける人たちのお話を聞いて、大学生の参考になる経験談やアドバイスをお届けしていきたいと思います。

 今回ご紹介するチャレンジャーは「死ぬまでに行きたい!世界の絶景」プロデューサーの詩歩さん。世界中の絶景を紹介するFacebookページ「死ぬまでに行きたい!世界の絶景」を運営し、70万以上のいいね!を獲得し話題に。現在は複数の書籍を発売し、フリーランスで様々な分野で活躍しています。

 そんな詩歩さんに、今までのご経験やこれからの「チャレンジ」についてお話をお聞きしました。

勉強も遊びも全力だった学生時代

――まず、簡単に今までの経歴を教えてください。

 私は静岡県浜松市出身で、大学への進学を機に上京しました。進学した早稲田大学では主に環境問題を学び、その後はインターネット広告代理店で2年間勤務しました。その会社の新人研修で作成したのが、今の活動のきっかけになった「死ぬまでに行きたい!世界の絶景」というFacebookページです。

 そのページが70万以上のいいね!を獲得したことで、出版社から書籍化のお話をいただきました。2013年にはじめての書籍「死ぬまでに行きたい!世界の絶景」を出版し、その後も2014年に「死ぬまでに行きたい!世界の絶景 日本編」、2015年には「死ぬまでに行きたい!世界の絶景 ホテル編」を出版することができました。2016年8月には最新刊「死ぬまでに行きたい!世界の絶景 体験編」を発売し、現在は「死ぬまでに行きたい!世界の絶景」プロデューサーとしてフリーランスでお仕事をしています。

――大学時代はどんな学生でしたか?

イタリアのランペドゥーザ島で撮影した、空を飛んでいるように見える船

 高校生まではガリ勉タイプで、それに比べると大学生になってからは勉強に割く時間が減っていたかもしれません。勉強だけに時間を使うのではなく、合気道や環境問題に取り組むサークル活動に参加し、様々な刺激を受けていました。勉強も遊びも全力で、あまり寝ていなかったですね(笑)。

 大学の授業で環境の学問は学べていたのですが、実際に活動するところまでは踏み込めていなかったので、2年のときに「em factory」というサークルに加わりました。ボランティアではなくビジネスの視点で環境問題を考えている部分に惹かれて参加を決めました。昔から環境のことは考えていたのですが、収益を出して持続可能な活動にする視点はなかったので、とても勉強になりましたね。

――なぜ昔から環境に興味があったのですか?

 幼い頃から読書が好きで、その中で見つけた「最後の藁」という言葉が環境に興味を持ったきっかけだと思っています。この言葉はラクダの背中に藁を1本ずつ乗せていくと最初は軽くてなんでもないのですが、100万本乗せたらラクダの背骨が折れて死んでしまう。つまり「一つ一つは些細なものだとしても、積み重なっていけば破滅を引き起こす」という意味です。

 この言葉の意味を逆に考えると、小さなことの積み重ねが何かを救うことになるのではと思いました。例えば北極の氷が溶けて沈んでしまうシロクマがいると考えたとき、部屋の電気を1回消すだけではそんなに効果は無いけれど、それを100万回積み重ねれば、氷が1センチ減るのを遅くらせることができるかもしれない。そんなことを幼い頃から考えていて、家中の電気を消してお母さんに怒られたこともありました(笑)。

震災で実感したインターネットのパワー

ニュージーランドのテカポの星空

――なるほど。環境に興味がある中で、なぜネット系の広告代理店へ就職を決めたのですか?

 社会人になってからやりたいことがすごくたくさんあり、合計で100社ぐらいは受けましたね。環境関係の仕事に就くことも考えたのですが、化学やバイオなどの分野が多く、私は文系だったのでイマイチしっくりこなくて。どちらかというと「環境にいい技術を持ったものをどうやって広げるか」に興味のあったんですよね。サークルでも広報担当だったので、人を啓蒙して何かを広げることを社会人になってもやりたいなと思っていました。

 そういった想いからメーカーや車関係の企業や、環境省と一緒にキャンペーンをできる可能性もあると思い、広告代理店も受けていました。最終的に進路の決め手になったのは2011年の震災ですね。Twitterで生存確認ができたり、電話が通じなくてもポータルサイトの掲示板で家族と連絡がとれたり、いざという時のネットのパワーはすごいなと感じました。これからの時代、特に若い世代に何かを広めていくには絶対にネットの知識が必要になると思ったので、ネット系の広告代理店への就職を決めました。

――就職してから今の独自のポジションを確立するまで、どんな経験をしてきたのでしょうか?

 まず今の「死ぬまでに行きたい!世界の絶景」というテーマが生まれた背景には、卒業旅行でオーストラリアに行ったときに起こった出来事があります。友人5人とオーストラリアをまわっていたとき、交通事故に遭いました。車が道を外れ、そのまま2回転半横転したんです。友人たちと一緒にドクターヘリで病院に運ばれて、レスキュー隊には「みんな死んでいてもおかしくなかった」と言われました。新聞の一面に載るほど悲惨な交通事故だったので、本当に誰も死ななくてよかったと思っています。

 そして何とか怪我も治り、予定通り4月に入社しました。そこの新人研修で各自好きなテーマのFacebookページを作り、新入社員同士で「いいね!」の数を競う課題が出たんです。そのテーマを決める際に卒業旅行のアクシデントから「人間はいつ死ぬかわからないから自分がこれから行きたい場所を集めてみよう」と思い、「死ぬまでに行きたい!世界の絶景」というFacebookページを作ることにしました。

 そこからFacebookに私が本当に死ぬまでに行きたい場所の写真を掲載していき、6月に研修が終わったときにはいいね!が2万ほど集まっていました。新入社員の中ではぶっちぎりのトップ(2位は約200いいね!)だったのでやめるにやめれず、そのまま続けていたら年末には約45万いいね!まで伸びました。そのタイミングで出版社の編集者さんから書籍化のお話をいただき、その後入社から2年経ったときに会社を辞め、今に至ります。

――今まで行った中で好きな絶景や、今最も行きたい絶景はありますか?

乾季のウユニ塩湖

 好きな絶景は「ウユニ塩湖」ですね。今は「絶景といえばウユニ塩湖!」と有名になっていますが、やはり有名になるに値する魅力的な場所だと思います。ただ、正直言って一番好きな場所は決められないですね。国単位だったらニュージーランドが好きだし、大自然を体感したいのであればアイスランドをおすすめしたいし、住みたい場所だったら日本が1番だと思うし、星空だったらニュージーランドが好きだし...。気分によって「今日はカナダが一番好き」という日もあります(笑)。

 これから行ってみたいのは「南極」です。理由は、まず大地が氷でできていること。そしてどこの国でもない場所に行くという体験自体が面白いなと。あとは歴史が好きなので、何万年も前からある氷が溶けて、空気がプチっと出てきた瞬間に「今出てきたのってマンモスの時代の空気かも...」と想像してワクワクしてみたいです。

学生時代は「寝ずに遊べ」

――今までで挫折した経験はありますか?

 1番大きな挫折は大学受験に失敗したことですね。本当は国立の大学を目指していました。当時は私立にも行きたくなかったし、東京にも行きたくなかった。ただ、結果的に東京に出てきてよかったと思っています。田舎に住んでいたときは人の評価は勉強かスポーツで測られることが多いと思っていたのですが、早稲田大学には帰国子女や社長令嬢、モデル、起業家など様々な分野で活躍している人がゴロゴロいて、価値観が変わりました。勉強やスポーツだけではなく、世の中には多様な価値があると感じたんです。その環境の中で「人生は何が起こるかわからないから、いったんやってみてから考えよう」と思うことが多くなりましたね。

新刊「死ぬまでに行きたい! 世界の絶景 体験編」

 例えば会社を辞めたいと思っても、「今のプロジェクトは私が抜けたらヤバイし...」「人事に相談するのが嫌だ」「次の就職先が決まらなかったらどうしよう」など、ネガティブな想像はいくらでもできると思うのですが、実際にやってみると意外と何とかなることが多い。何か失敗しても日本だったらすぐにバイトは見つかるし、死ぬことはないのでいったんやってみてダメだったら考えればいいと思います。

――これからの展望を教えてください。

 今は日本語での仕事がほとんどなので、もっと英語の勉強をして海外に向けて日本の絶景を発信していくインバウンドの仕事もできたらいいなと思っています。2020年にはオリンピックがあるので、それまでには英語がもっとできるように準備しています。

――最後に学生に向けてアドバイスをお願いいたします。

「寝ずに遊べ」ですね! 私はいったん全部やってみようと思い、3つのバイトをこなしてお金を稼いで旅行に積極的に行っていたし、奨学金をもらえるぐらい勉強も頑張って、サークルも掛け持ちして、就活も100社ぐらい受けました。今振り返ってみても大学時代ほど自由な時間はないと感じるので、体を壊さない程度に精一杯謳歌してほしいです。

「死ぬまでに行きたい!世界の絶景」プロデューサー。1990年生まれ。静岡県出身。世界中の絶景を紹介するFacebookページ「死ぬまでに行きたい!世界の絶景」を運営し、70万以上のいいね!を獲得し話題に。 書籍「死ぬまでに行きたい!世界の絶景」シリーズを出版し累計55万部を突破。アジア等海外でも出版される。昨今の”絶景”ブームを牽引し、2014年は流行語大賞にノミネートされた。 現在はフリーランスで活動し、旅行商品のプロデュースや企業とのタイアップなどを行っている。2016年8月には最新刊「死ぬまでに行きたい!世界の絶景 体験編」を発売し、注目されている。
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