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発信! 理系女子(7)医学部保健学科で選んだ進路

authored by 東北大学サイエンス・エンジェル
発信! 理系女子(7) 医学部保健学科で選んだ進路

 こんにちは。東北大学サイエンス・エンジェルの佐藤花保です。私は医学部の保健学科の出身で、学部では臨床検査を勉強していました。現在は大学院に進学し、「遺伝カウンセリング」を勉強しています。医学部といっても医師を養成する医学科と違い、保健学科の同級生の多くは、大学病院の検査部や検査センターなどで臨床検査技師として働いています。また大学院に進学した友人の多くは、基礎研究をしています。そんな中、なぜ私が現在の大学院に進学したのか、進路選択を通して考えたことなどを紹介したいと思います。

保健学科とは

 東北大学では、医学部は医師を育成するための医学科と、看護師や検査技師、放射線技師を育成するための保健学科に分かれており、入試は医学科と保健学科の専攻ごとに行われます。保健学科は看護・検査・放射の3専攻に分かれています。看護専攻は看護師や助産師、検査専攻は臨床検査技師、放射専攻は放射線技師を養成するためのコースで、各専攻とも大学4年次に国家試験を受け、合格すると無事資格を得ることができます。東北大学の医学部保健学科では国家試験に合格して資格を得ることはもちろんですが、研究にも力をいれているため、卒業後に大学院に進学する人も多いです。

進路に悩んだ学部時代

大学3年次の白衣式。この式を経て、病院実習が始まります

 高校生の頃は、「仙台に住みたい」→「免許持っておくと便利かも」→「研究にも興味がある(高校生の時に参加した検査専攻のオープンキャンパスでは、研究者への道も紹介されました)」という理由で進路を決めました。今考えると、非常に安易な考えで大学や学部を決めたことは否めません。そのため、大学1・2年生の頃は何がやりたいのか分からず、悶々としていました。

 その中で少しずつ、臨床検査技師に向いていないのではと思い始めました。手先が不器用なので、精巧な作業が必要とされる検査技師としてキャリアアップすることは難しいと感じたのです。また、私は、元々飽きっぽい性格です。授業の一環として行われる実習では、顕微鏡を用いて細菌や血球・組織を観察しました。同期の友人の中には、顕微鏡実習が好きで、いくらでもレンズを覗いていられるという人もいましたが、私にとって、その実習はあまり楽しいとは思えませんでした。このころから、直接"人"に関わることを仕事にしたいと漠然と考えるようになりました。

検査専攻の授業の様子

 進路を変更するもう1つの大きなきっかけは、大学3年時に祖母が膵がんになり、患者さんの立場に立った経験です。それまでの大学生活2年間は、検査の勉強中心で、医療について学びながらも患者さんと接し、患者さんのことを考える機会はほとんどありませんでした。

 祖母が病気になって入院し、患者さんの立場から医師や看護師と関わることで、「患者さんや家族はこんな思いを持っているんだ」「医療スタッフのちょっとした気遣いや言葉がけに救われることがある」と感じることができました。検査という視点から医療をみた後に、祖母の病気を通して患者さんの視点から医療をみたことで、私は患者さんと直接関わり、支援していきたいと思うようになりました。

遺伝カウンセリングとの出会い

 「遺伝カウンセリング」という仕事を知ったのは、大学3年生の病院実習において遺伝子検査部門を回ったときです。採血をして、自分の染色体を観察する実習だったのですが、その時担当だった技師さんは、「遺伝情報は、あなた達だけのものではなく家族と共有している。生涯変化することはなく、調べることで将来発症する病気が分かる可能性がある」と話してくださいました。

 そこで初めて遺伝情報を調べることの重さを知り、尿検査や心電図検査など他の検査から得られるデータとは意味合いが異なることに気が付き、興味を持ちました。検査を受ける前に遺伝情報や検査の特殊性を患者さんにきちんと説明し、検査を受けるか受けないかを十分に考えたうえで選択してもらう必要があると感じました。

出身高校での進路セミナー

 さらに技師さんは、遺伝情報を調べる検査の技術はどんどん進化しているのに、その情報を患者さんに伝え、そこで生じてくる問題を一緒に考えていく場(=遺伝カウンセリング)や担う人材(=遺伝カウンセラー)が不足していることを教えてくださいました。患者さんは自分の病気について、「家族やパートナーに話せない」「子どもに病気が遺伝しないか心配だ」など様々な悩みを抱きます。その思いや悩みに耳を傾け、必要な情報を分かりやすく提供し、その人自身で納得のいく選択ができるように、遺伝カウンセラーという立場から関わりたいと考えるようになりました。 

多様性の集まり

 学部時代に学んでいた"臨床検査"からは、少々進路を変更することになりました。私の研究室の大きな特徴としては、バックグラウンドが多彩なメンバーが所属していることです。私の同期は2人いますが、1人は工学部出身です。専門はバイオインフォマティクスで、生命学と情報学を融合させた分野の出身です。もう1人は理学部の出身で、生殖について研究をしていました。このように、全く異なるバックグラウンドをもつ3人が集まっています。

大学院の講義

 学部時代は、情報を解析したり、細胞を観察したりするような研究をメインにしていましたが、「人と関わる仕事がしたい」「情報・医療と人をつなぐ仕事がしたい」と思いこの分野に進学を決めています。このように様々なバックグラウンドを持った人が集まる研究室は少し珍しいかもしれません。ただ私たちの研究室では、その"多様性"を大切にしていて、遺伝カウンセリングに興味のある様々なバックグラウンドを持った人に門戸を広げています。

 学部時代を振り返ってみると、何がやりたいのか分からず勉強が楽しく感じられなかったことが多々ありました。"遺伝カウンセリング"を知り、これまでの経験や興味関心がうまく統合した分野に出会えたと思います。異なる分野に進学することは少々勇気やエネルギーのいることですが、皆さんの持っている興味や関心、そしてこれまでの経験をフル活用して、本当にやりたいことを見つけてください。
(佐藤花保)

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