日本経済新聞 関連サイト

OK
[ skill up-自己成長 ]

島キャンリポート(19)沖永良部を「知っている」自分がいることも島おこし

authored by 島キャン
島キャンリポート(19) 沖永良部を「知っている」自分がいることも島おこし

 こんにちは! 日本大学法学部2年の清藤日菜子(せいとう・ひなこ)です。2週間島で暮らし、インターンシップをしながら島おこしについて考える島キャン。私は2016年夏に沖永良部島(おきのえらぶじま)の和泊町(わどまりちょう)役場企画課に就業していました。

 島キャンでは事前にいくつか就業希望を出します。公務員志望だった私は、希望通り役場に就業したのですが、廃校を再利用した素敵な和泊町役場の中で働いた日は結局1日もありませんでした(笑)。それではどこで、何をしていたのか。仕事内容や島での生活に触れながら、2週間を通して私自身が考えたことを伝えられたらと思います。

私の仕事は"島を知ること"

 みなさんは「沖永良部島」を知っていますか? サンゴ礁が隆起してできた、海風が吹き抜け続ける真っ平なこの島には、魚やサンゴが透ける透明な海、寝転べば足元にも広がる素敵な星空、ゴツゴツの洞窟、そして赤土があります。書ききれない魅力満点の自然が当たり前に生活の隣にある、そんな素敵な島です。特に花き産業が活発で、「えらぶユリ」という素敵なブランドユリがあり、5月には1面のユリ畑がみられます。

作業はガジュマルの下で。雨も日差しもしのげる贅沢な自然のパラソルです

 そんな沖永良部島での私たちの主な仕事は、ユリの球根の仕分けでした。町の植栽を担当している町田さんにご指導していただき、公園に植えるユリの球根を大きさ別に仕分けしました。島の小学生が植えたユリから、ボランティアの方々が掘って取り出してくださった球根が多く、島全体で「ユリ」を島のシンボルとして誇れる活動が活発であることを感じました。

 島にいくつかある広い公園や、病院前の花壇の手入れのお手伝いも時々させて頂きました。普段はそれらを町田さんとシルバー(定年後雇用者)さんの5人だけで植栽整備していると聞いて驚きました。手入れだけでも大変だと思うのに、同じような公園にしないような工夫を懸命に考えていました。例えば、笠石公園ではハイビスカスを使ったアーチ、花の里公園にはバラを使ったアーチを考えているなど、子供やお年寄りが過ごしやすく、見た目にも楽しい公園を作ろうとしていました。島の気候を考慮しながら、思い通りに育ってくれない植物と奮闘していました。 その姿はとても素敵で、皆が心地よく過ごせる景色を作る裏側の苦労も、勉強させていただきました。

笠石公園で担当者の町田さんが摘んでくれたハイビスカス。公園内ではこんなカラフルで形も様々なハイビスカスが一度に見られます。色はカラフルなものから灰色、紫まであり、形も八重や風鈴のようなものまで実に様々でした!

見て、話して、島を知る

 「島を知る事が君たちの仕事」とおっしゃる町田さんに連れられて、午後は島を案内して頂きました。島の色んな面を見ることができた思い出深い時間です。様々な海岸やグスク跡、学校などに連れて行っていただいたり、島の植物を使った遊びを教えていただいたり、昔の島の様子を知る方とお話をしたり、いろいろな経験をさせていただきました。島はどこも絶景貸切放題なので、釣りをするまでちょっと時間をつぶすつもりが結局午後中海に夢中になってしまった日もありました(笑)。

 そう言うとちょっと遊んでいるようにも聞こえますが、直接足を運んで気づく魅力がたくさんありました。たとえば島には写真では絶対に伝わりきらない良さがあります。それは人の距離感。島の方は子供から大人までみんな人懐っこくてキラキラしています。魚取りに混ぜてもらったり、お家で作ったお菓子を食べさせてもらったり、井戸端会議に混ざっておしゃべりをしたり、島の自然以上に魅力満点のたくさんの"人"に出会うことができました。

島で仲良くなった子供たちと。真ん中の青いTシャツを着ているのが筆者

島おこしに熱い島、沖永良部。島おこしは「島全体で1チーム」

 魅力満点の人といえば、和泊町役場の「(たぶん自称)沖永良部島クリエイティブエージェンシー」と「(たぶん自称)沖永良部情熱営業マン」の肩書を持つ安田拓さんという方がいました。安田さんはとにかく熱い! 主に島のイベントに参加する日にお話を伺いましたが、その短い時間でも島に対する熱い思いがビシビシと伝わってきました。

 中でも「地域おこしは行政だけで盛り上げようとするのではなく、農業も商業も一緒になって盛り上げていくことが大切。島が1チームになって動けたら絶対に強い」という話は、私の中に印象強く残っています。

たくさんある海岸の写真の中でも1番のお気に入りの写真。島ではこんな素敵な場所も貸し切りです

 当たり前だけど地域おこしって、地域に観光客を呼ぶことがゴールではないのです。ガジュマルやユリを輸出して島外の人に島を知ってもらうことも大切ですが、島に住む人の生活が豊かになっていくことこそが最も重要。そんな当たり前のことになんだかハッと気づかされました。

 私は「将来は地域を盛り上げる職に就きたい」という気持ちから地方公務員を目指していました。「安定志向なの?」「もっと外に出ている仕事が向いていそう」――。周りからのそんな声にちょっと迷っていたけれど、すさまじくアクティブで地域のために走り回る安田さんの姿は、その迷いを一瞬で消し飛ばしてくれました。

 その一方で、島では観光協会や花きセンター、そして居酒屋やホームセンターのお兄さん等々、職種は全く関係なく様々な人が、地域活性化を身近な課題として取り組んでいました。狭い地域だからこその声の通りやすさもあるのかもしれないですが、自分の分野を生かして地域を盛り上げる姿も格好良く映り、いい意味でわたしの将来の夢は揺らいでいます。

業務時間が終わっても島暮らしは終わらない

 仕事の時間以外ももちろん島での生活は続きます。私の1日は毎朝7時に始まり、まず考えるのは天気のことでした。「今日はいい天気かな」「何をするのかな」。そのまま飛び起きて、宿のおばちゃんにお手伝いをさせてもらうこともあれば、島のおじさんたちとおしゃべりしたり、子供たちと走り回っていることもありました。そして気づけば仕事の時間に。帰ってきたら夕食の支度を手伝ったり、満点の星空の下に寝てみたり。童心に返ったような気分でした。

 でも走り回って、見知らぬ誰かと笑いあって、今度はその誰かのために自然に動いて、「ありがとう」がたまらなく嬉しい。それはいつの間にか忘れていたけれど、きっと小さい頃は当たり前だった懐かしい感覚で、気持ち良い生き方だなと気づかされました。

バレー部が団体で泊まった日に皆で宿のおばちゃんを手伝って作り終わった時の一枚。おばちゃんのご飯もまた食べに行きたい!

 おしゃべり好きな私は、島では一人でいる時間がほぼありませんでした。朝も、夜も、日中も、いろんな人がいろんなものを見せてくれます。島の人の島キャン生への接し方は「与えて、与えて、与える」。これに尽きます。おかしな話ですが、いただけることが多すぎて、その日何をしたのかと聞かれて、ぱっと答えられなくなるくらい、たくさんの刺激をいただきました。

 「なんでもやります!」をモットーにいろんなものを食べ、見せてもらい、教えてもらいました。三線や釣り、トラクターの運転など初めてだらけの2週間。私にとってはどれも代えがたい経験で、思い出で、感謝しかありません。

 しかし同時に「与えられて終わってしまう怖さ」を痛感した2週間でもありました。観光バスのラッピングをデザインする島キャン生や釣りマップを作成する島キャン生もいる中で、「私は島に何を残してきたのだろう」と、帰ってからしばらくもやもやした後悔として私の中に残りました。

島キャンを終えて思うこと

 私は正直この2週間で「島おこし」に貢献したとはとても思えません。何か課題をこなしたわけでもなく、何か島に残してきたわけでもありません。だけど島に行く前と、今と、世界は全く別に映ります。私の夢は「地域を盛り上げるために走り回っていたい」です。島では本当にたくさんの出会いがありました。島キャンという環境も手伝って、地域のために奔走している方々をたくさん目の当たりにしました。そして沖永良部に生き、島を愛している方々にもたくさん出会いました。

 その誰もがとてもかっこよく、どれも話し出すときりがない素敵で大切な出会いでした。それをきっかけに自分の世界がガラガラと崩れて、つまらなそうだった大人の世界がびっくりするほど魅力的で、冒険しがいのある世界だと気づくことができた感覚は忘れられません。

沖永良部を出るフェリーから島キャン生9人集合写真。「今までの島キャン生で一番泣いてるよ~」といわれながらのお別れでした

島キャンは通過点

 島キャンで初めて沖永良部の名前を見たとき、私は「なんて読むのかな」なんて思っていました。だけど島でたくさんの魅力的で温かい人に出会って、島への想いを聞いて、気づいたら「次帰ったときにはどんな風に成長した自分を連れてこよう」なんて思えるもう一つの、大好きな自慢の"地元"ができていました。

 何も残せなかったのは、ただの自分の力不足かも知れないけれど、でも今はそれでよかったのかもしれないとも思います。沖永良部の方々が見せてくれた島、そして伝えてくれた想いを、今は「知っている」自分がいる。沖永良部のために何かしたいと思う自分がいる。島キャンでの2週間は準備期間で、家族や、友人たちに島について話して「今度行こうか!」なんて計画を立てている。そんな今こそが島おこしの本番なのかもしれません。

このレポートだけでは濃密な沖永良部の魅力の1000分の1にも満たないけれど、この文章に「出会って」私の想いの一部を「知って」くれた方が、沖永良部に足を運んで、本物の沖永良部島の魅力と衝撃に"出会って"くれたら嬉しいです。きっと私が出会った時よりもさらにパワーアップした沖永良部島が待っているはずです。

清藤日菜子(せいとう・ひなこ) 日本大学法学部2年。2016年夏の島キャン生。千葉県印旛村出身。子供とおしゃべりと甘いものが大好き。同じ名前の日菜子さんと就業していたため島では「(背が)大きいほうの日菜子」と呼ばれたり。
【島おこしインターンシップ「島キャン」】
離島での就業体験をしながら、離島の島おこし・地域活性化に貢献する新しいかたちのインターンシップ企画。
http://www.shimacam.com/index.php

お気に入りの1枚! 確か半崎からの夕焼けです。船が横切ってとっても素敵でした