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私だけの菓子をその場で
森永、包装に印刷

私だけの菓子をその場で森永、包装に印刷

 森永製菓は2016年12月、スマートフォン(スマホ)で撮影した写真を使い、その場でお菓子「ハイチュウ」を包装して提供するサービスを始めた。ネットベンチャーと連携して仕組みを築いており、リアルタイムの体験を菓子に融合させる。イベントでマーケティングに使いたい企業から、1年間に50件の受注を狙う。

 ネットと連動した印刷サービスを提供するINFORICH(インフォリッチ、東京・目黒、秋山広宣社長)と協力し、サービスの仕組みをつくった。

 企業は、専用プリンターや「ハイチュウ」を森永などから受け取って、イベントの際に自ら環境を整える。

 イベント参加者がスマホの写真をツイッターやインスタグラムといった交流サイトに投稿すると、専用プリンターにデータが送られる。プリンター画面には他の人の写真も表示されており、自分の写真をえらぶ。

思い出の写真が入ったオリジナルの菓子が完成

 写真があしらわれたパッケージは、20秒ほどでできあがってくる。スタッフがハイチュウを包装し、オリジナルの菓子が完成する。

 体験を重視する消費のながれに、森永も注目した。新領域創造事業部の渡辺啓太氏は「ハイチュウに形として残る楽しさを提供できる」と話す。

 16年1月、写真を使ってオリジナル菓子を作れるサービスを始めていた。ただ、画像データを送ってから菓子ができあがるまで約2週間かかるなど、リアルタイムな魅力に欠けていた。

専用プリンターの画面上から自分の写真を選択する

 その点、20秒程度で菓子を受け取ることができる新サービスの魅力は大きい。加えて、従来のサービスは有料だったが「新サービスは物販ではなく、企業のマーケティングツール」と渡辺氏。消費者は無料で菓子を受け取れる。

 仕入れた菓子を無料配布する企業は、菓子代や設備のレンタル費用も払う負担がある。写真を印刷する間、プリンターの画面にCMを流したり、菓子に自社のロゴを入れたり、マーケティングに使える機会をつくる。

 家族を対象にしたイベントを開く企業の注文を見込んでいる。設備の利用時間や菓子の量に連動するが、受注規模に制限は設けない。森永は参加者が50人で、開催が2~3時間のイベントだと30万円程度に利用料金を設定する。

 ハイチュウだけでなく「チョコボール」「エンゼルパイ」など、多くの人気ブランドを持つ森永。2014年に新領域創造事業部を立ち上げるなど、新たなビジネスモデルの構築へ力を入れる。

 今回の事業もその一環で、将来の収益化の可能性を探っている。

 インフォリッチは印刷サービスとして写真のみ対象としてきた。内野晃宏最高執行責任者(COO)は「森永製菓との連携によって写真にとどまっていたサービスをモノに広げるチャンス」と語っている。

 当面はハイチュウのみが対象だが、今後は他の人気菓子に広げることも検討する。

 菓子メーカーが製販事業に次ぐ柱を模索している。森永は体験型の新サービスの他に、食品素材の研究開発にも力を入れている。16年10月、抗加齢の効能を持つパッションフルーツ由来の食品素材の販売を始めた。
 江崎グリコは赤パプリカから抽出した機能性素材「キサントフィル」の販売を6月から始めた。ダイエットサプリや健康食品での採用を狙っている。
 全日本菓子協会によると、2015年の国内菓子の生産額は前年比2.4%増の2兆4524億円だった。高価格が好調なチョコやビスケットが押し上げているが、少子高齢化が進む中でこれまでのような量重視の販売は厳しくなる。
 それでも国内市場に焦点を当てるとき、菓子事業をどう築き直していくことができるのか。ハイチュウの体験型サービスのように、菓子とほかの価値との組み合わせがひとつのヒントになるのだろう。

(企業報道部 湯前宗太郎)[日経産業新聞2016年11月29日付、日経電子版から転載]

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