日本経済新聞 関連サイト

OK
liberal arts-大学生の常識

平和のかけら(3)平和の種を蒔く活動とは?

栗田佳典 authored by 栗田佳典認定NPO法人テラ・ルネッサンス 啓発チームマネージャー
平和のかけら(3) 平和の種を蒔く活動とは?

 「NGOは海外での活動はイメージしやすいのですが、国内でどんな活動をされているのですか?」。こうした問いを多くいただきます。きっと多くの方々のイメージでは、NGOが指す「現場」は「海外」が強いのだと思いますが、私にとって、「現場」は「日本」も含まれます。

 確かに海外での支援活動は非常に重要です。しかしながら、支援対象国で起こっていることは私たちの生活と全く無関係ではありません。食べ物、着る物あらゆる生活の中で、つながりは日に日に深くなり、私たちの行動1つで海外での課題が深刻になる可能性もあります。同時に、解決へと進める可能性もあります。対象国においての「支援(=処置)」同様に、日本を含め、関係のある国々の人々に啓発することで、その課題の根本を解決し、「予防」につながると私は考えています。

 第1回目では、認定NPO法人テラ・ルネッサンスの活動紹介を、第2回目では、そんなテラ・ルネッサンスで私が働く理由についてお伝えしました。第3回目では、「現場」の活動経験をお伝えしていきたいと思います。

高校での講演の様子

海外現場での経験を平和の種へと変える

 「貧しいと聞いていたのに、子どもたちが髪を染めてお洒落をしている」。私がカンボジアの農村に初めて訪れたときの印象でした。金色や茶髪の子も多く、驚いたのですが、現地駐在員の説明にさらに驚きました。「これは子どもたちの意思ではなく、栄養失調のため、髪の毛の色素が抜けて、茶色や金色になってしまっているだけ」だと。

 紛争が続くコンゴ民主共和国での訪問時には、こんなことがありました。近くに寄ってくる子どもたちは「ニーゴ」と私たちを呼んできます。挨拶なのかと思って答えていたら、実は「国連平和維持軍の兵士」という意味。通訳曰く、外国人はみんな兵士に見えるのだそうです。その子たちは、ムタルレ村の出身。その村は武装勢力の被害に遭い、避難を余儀なくされた村です。現地も視察しましたが、建物や衣服の焼け跡がそのまま無残に残されていました。幼い子どもたちが、外国の人を見て発する言葉が兵士とは、まだこの国に、平和が訪れていないことを実感しました。

 自分が当たり前だと思っているものが当たり前ではないことを教えてくれるのが海外の現場です。そして、同時に先入観だけで作り上げた「貧困=貧しい人たち」の眼鏡で見てしまっていた自分に気づかされます。そんな自分の実体験や海外の活動現場で見聞きした現状を日本の人々へ伝え、関心を集めること、そして支援へとつなげ、社会をよい方向へと変えていくことが私の役割だと考えています。そのために、年に1回ほどの海外出張では、現場の状況を確認し、そうした今を、人々の声をいかに伝えていくかを考えるようにしています。

髪の毛が茶色の女の子(カンボジア)

知る機会を作る

 海外の活動地で集めた情報をもとに、まずは伝えることから始まります。具体的にはイベントや、講演などで実際に写真などをお見せしながら報告しています。人権、平和教育、国際理解教育、キャリア教育といったテーマに沿って、30分~120分と講演時間も様々。私自身、2016年度は約50件の講演をしました。教育機関だけでなく、企業、行政、NPOなどの団体、様々な形で機会をいただいているのも、テラ・ルネッサンスの特徴と言えます。

 「子ども兵といった教科書には載っていない世界の現実を、ありのままに語ってほしい」。そんな先生方の願いを受け、開催した中学、高校での講演では、「私もこうした仕事がしてみたい」「私にできることで関わりたい」など、次なる一歩を踏み出してくれています。

 私が地雷をテーマに話をした当時小学6年生の女の子は、多くの人に、地雷のことを知ってほしいと自身でマンガを作ってくれました。中学2年の女の子は周りに声をかけ、古本を集めてくれました。クラスや全校生徒、地域の人々を巻き込み、行動するその姿を目の当たりにし、知る機会をつくることの大切さを出逢う子どもたちから教わっています。

小学生が描いたマンガ(一部抜粋)

参画する機会を作る

 知るだけに留めず、行動を起こすことも重要です。課題を周りに伝えることも重要な行動の一歩。さらにもう一歩を踏み出していただくために、テラ・ルネッサンスでは、様々な取り組みを実施しています。「めぐるプロジェクト」という取り組みでは、書き損じはがきや、古着、古本、古紙、携帯電話、アルミホイールを集め、活動のための資金へと変える取り組みを行っています。私の仕事は、そうした仕組みを整え、協力してくださった方々へのお礼など、海外と日本の協力者をつなぐ役割があります。

 「いつかやろうではなく、今すぐ私にできること」が重要です。小学生には小学生でできることを。社会人なら、会社や地域でできることを。そうした活動に参画することで、自分も平和な社会をつくる1人なんだと体感してもらえると嬉しく思います。京都の中学生は古本を集めるため、人気漫画の全巻を寄付してくれたこともありました。

仲間を増やす

 平和な社会をつくるためには、決して1人ではできません。仲間を増やすことが大切です。そのために、インターンシップ生の受け入れであったり、スタディツアーの開催を通して、活動をともに行う仲間を増やすことも実践しています。実際にこれまで108名のインターンシップ生を受け入れ、青年海外協力隊や他NGO、あるいは企業や行政など、それぞれの場面で活躍してきました。

 私はボランティアをするという行為は、「時間の寄付」あるいは「能力の寄付」だと考えています。自身が関心を持つ課題に取り組む団体、共感する団体があれば、積極的にかかわることが大切です。皆さんのもつ時間や能力をもって、実践されることを願っています。勤務地が京都という壁があるかもしれませんが、テラ・ルネッサンスも定期的にインターンシップの募集を行っていますので、ぜひ、検討いただけますと嬉しいです。

 冒頭の「NGOは海外での活動はイメージしやすいのですが、国内でどんな活動をされているのですか?」という問いへの私の答えは、「平和の種まき」。私は海外での経験をもとに、日本で講演やイベント出展を行い、まずは知っていただくこと、そして参画してもらうための仕組みを整えることを通して、仲間を増やすことを実践しています。

テラ・ルネッサンススタッフの集合写真

 この記事を通して、日本でもNGOの仕事ができるのだ、ボランティアといった様々な関わりができるということを実感してもらえると嬉しく思います。私はこれからも、こうした現場での活動を通して、平和な社会を実現するべく、挑戦を続けていきたいと思います。

 次回(最終回)は、現在海外に派遣されている駐在員の経験も記事に交え、私の連載に散りばめた「平和のかけら」をつなぎあわせていきたいと思います。

お知らせ
現在、テラ・ルネッサンスでは、めぐるキャンペーン2016を実施しています。書き損じはがき15000枚を目標に、その他、古着、古本、古紙、アルミホイール、携帯電話の呼びかけも強化しています。書き損じた年賀状、余ってしまった年賀状がご家庭にあれば、ぜひご協力ください。詳細はこちらをご覧ください。
「インターンシップの募集」についてはこちらをご覧ください。