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日本経済新聞「未来面」
学生からJA全中会長への提案
「農業タウン」でワクワク感を

日本経済新聞「未来面」学生からJA全中会長への提案 「農業タウン」でワクワク感を

 日本経済新聞の未来面は、読者や企業トップの皆さんと課題を議論し、ともに作っていく紙面です。共通テーマは「革新力」です。今回は全国農業協同組合中央会(JA全中)会長・奥野長衛さんからの「どうすれば若者が夢を持てる仕事になりますか?」という課題について、学生の皆さんから多数のご投稿をいただきました。

 ここで紹介したのはほんの一部です。掲載できなかったアイデアを日経電子版の未来面サイトで紹介しています。

【課題編】「どうすれば若者が夢を持てる仕事になりますか?」

奥野長衛・全国農業協同組合中央会(JA全中)会長「ITや法人化で新たな世界」

 農業はいま大変厳しい状況にあります。就業者は平均67歳になり、生産高と収益が落ち、右肩下がりが続いています。農地集積が進まず、耕作放棄地が増えています。この流れをどこかで変えないと壊滅的な状況になると思っています。他産業に人が流れ、就農人口が減るのは先進国の宿命という面もあります。米国でもそうです。だから農業をやる人が減っていくことに歯止めをかけるのは難しいかもしれません。それでも様々な形で農業をしたいと考える若い人たちもいます。

奥野長衛・全国農業協同組合中央会(JA全中)会長

 日本の社会と経済は中間層が支えているとずっと言われてきました。それがいま崩れつつあります。そういう時代にあって農業を志す人が新たに登場してきました。私の地元でも30歳くらいの若者が農業をするため仕事を辞めて戻ってきました。イチゴをつくって頑張っています。昨年5月、かつて自分が通った農業高校に講演に呼ばれました。そこで教師から「女子生徒がどんどん増えていますが、彼女たちは果たして農業をやっていけるのでしょうか」と聞かれたので「『田んぼに力』と書くと『男』という字になりますが、田んぼに力と書かなくても農業をできる時代がすぐそこに来ています」と答えました。

 例えば、農業でICT(情報通信技術)を使いこなす人が求められる時代が来ようとしています。農業が好きで、マーケット情報をしっかりみることができて、経営センスがあることが大切です。これからは体力勝負で農業をやる時代ではなくなります。だから男女を問わず立派に農業をできるんです。

 では農業の世界に入ってくる若い人たちをどう支援すればいいでしょうか。ひとつは農業経営を法人にすることです。会社の形にすれば、人を雇いやすくなります。一方で法人に勤めるのではなく、個人で農業をやりたいという人もいるでしょう。そういう人のために、私が組合長をしていた伊勢農業協同組合(三重県度会町)は子会社を設け、そこで社員として2年間受け入れ、独立に向けて教育する仕組みをつくっています。

 大金持ちになることは難しくても、会社員なみの収入があれば、もっと多くの人が農業の世界に入ってくることができます。若い人が夢を持てる農業に変えないといけないのです。そのためには何が必要なのか。皆さんのアイデアをお聞かせください。
(日本経済新聞2017年1月10日付)

◇    ◇

【アイデア編】

アイデア001 「農業タウン」でワクワク感伝える
中村 元美(駒澤大学経営学部3年、21歳)

 農業に関する施設がたくさんある「農業タウン」をつくり、若者が農業に関わる機会を与える必要がある。若者は農業にマイナスイメージを持っている。だが例えば国際連合大学で行われている「ファーマーズマーケット」はおしゃれで健康的でもあり、今の若者の需要に合ったプラスイメージが根付いて高齢者よりも若者のほうが多く訪れている。若者が農業と関われる環境をつくるには、ただ農業イベントなどを開くだけでなく、若者に行きたいと思わせる必要がある。農業タウンには農業体験ができる場所やヘルシーメニューの飲食物を販売するカフェなど様々な施設を設ける。実際に農業を仕事にしたいと考えている人は農業タウンで体験することもでき、初心者なら研修や農具の貸し出しなどの支援もしてくれる。このような農業タウンをつくれば若者と農業をつなげられるだろう。

アイデア002 大学で農業を考え、経験しよう
阿座上 拡(山口大学大学院創成科学研究科修士1年、23歳)

 若者が農業関連の仕事に就かない原因は、学生が農業をする喜びを経験できず、実感もできないからだろう。私自身も農業の経験がなく、学生が大学で農業の喜びについて知る企画を実施することが大切だと思う。身近な学生と農業の懸け橋としては学生食堂がある。学生食堂では農作物がメニューのなかの商品として私たちに届けられるが、実際に作った野菜が学生食堂のメニューになる喜びを感じることが農業理解の一歩になると考えている。そこで私は食堂で使う農作物を学生がインターンシップで実際に収穫するプログラムを提案する。本プログラムは大学生協と大学、食堂と連携したプログラムで、1年間にわたる栽培から収穫を通して農業の難しさや喜びを感じられれば良い。単位を認定するなど大学と連携して農業の経験機会を増やすことが重要だと考えている。

アイデア003 農家がお互い鍛え合う「ポイント制」導入
森 輝(海陽学園海陽中等教育学校高校2年、17歳)

 農業にポイント制を設けるといいと思う。例えば、スーパーで売られる野菜に付けたバーコードをレジで読み取ると、その野菜を作った農家にポイントがたまるようにする。たまったポイントがお金や商品になる仕組みだ。そうすれば、農家はたくさんのポイントをためようとするだろうし、高品質の野菜を作るきっかけにもなる。副業として野菜を作っている人にも朗報だと思う。さらに、その野菜を作っている地域のスーパーで売れば、さらにポイントが農家に付与される、という形にすれば「地産地消」にもつながる。二酸化炭素(CO2)の削減もできるし、一石二鳥だろう。1年間でポイントを最も多く獲得した人に優秀賞を与えるなど表彰すればその人の農業へのモチベーションがあがり、他の人はもっと頑張ろうと奮起する。農家同士が切磋琢磨(せっさたくま)することで、農業の世界はもっと活発になっていくだろう。

アイデア004 技術・ノウハウ学ぶ塾あれば
渡辺 理(会社員、41歳)

 私は北米で農業IT(情報技術)関連の仕事をしている。北米と日本では農業の規模は違うが、農家が専業でしっかりもうかっているという特徴がある。頑張れば企業の役員並みに稼げる可能性もあり、それを支援する仕組みもある。規模が大きいと投資余力もあり、先進的な技術を試して生産性を高める好循環が生まれている。規模集約の手助けや農業経営に必要な塾のような仕組みがあると良いのではないか。ベンチャー企業に投資するベンチャーキャピタリストのように農業経営をしたい人材に資金やノウハウを出すほか、農地を集約したり貸与したりする仕組みを整えて支援していく。皆が憧れる成功事例をつくることが大事だ。北米で見ている農業は「面白い」「自分もやりたい」と思うワクワク感がある。

【講評】奥野長衛・全国農業協同組合中央会(JA全中)会長

 農業を若者が夢を持てる仕事にするというテーマで、200を超すアイデアをいただきました。ありがたいことに「3K(きつい、汚い、危険)」という農業の古いイメージを払拭するようなご意見がたくさんありました。実際、田植えなどは専用の長靴を履かなくてもできるようになっています。

 「技術・ノウハウ学ぶ塾」ですが、農業を強くするためにいろんな仕組みを作らなければならないのは確かです。日本の地理や気候に合った適地適作の作物で、世界標準の農業にするという発想は非常に大事です。守るのではなく、輸出で世界に打って出るような気持ちがないと前に進むことはできません。

 「農業タウン」に関してですが、たくさんの人が接点のある裾野の広い産業ほど元気です。最近は農家の子どもでさえ農作業をしたことがないこともありますが、多くの人が農業に接する機会をつくることが大切です。

 「休日とれる仕組みづくり」は農業全体に人手が足りなくなっていて、みんな何とかしなければならないと感じています。機械化などを進め、もっと休みのとれる環境を整えることが必要でしょう。
(日本経済新聞2017年1月30日付)

 日本経済新聞社は未来面の関連イベントとして、3月9日(木)に青山学院大学・本多記念国際会議場(東京・渋谷、青山キャンパス内)でシンポジウムを開きます。大手企業トップが求める人材像について語るほか、参加者の質問にも答えます。日経電子版で「就活相談室」を連載する曽和利光氏も登壇し、就職活動を成功に導くコツを伝授します。入場無料。定員300人。詳細はこちら

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