日本経済新聞 関連サイト

OK
liberal arts-大学生の常識

VR、フレキシブル…
17年デジタル未来は

VR、フレキシブル…17年デジタル未来は

 2017年、急速な変化が続くデジタルテクノロジーの世界では、どんな技術やサービスが注目されるのか。日本経済新聞社でエレクトロニクス、情報、通信、インターネットの各分野を取材する記者6人に、来年トレンドになりそうな「17年のデジタルキーワード」を解説してもらった。

フレキシブル

 折り曲げたり皮膚に貼り付けたりできる「フレキシブル技術」に注目が集まっている。ディスプレーやセンサーなどの個別の技術開発は研究レベルで進んできた。耐久性と生産品質を高め、身近な製品に実装していく段階に入りつつある。

 まず注目されるのはスマートフォン(スマホ)への応用だ。メーカー各社は有機ELなどを利用して「曲げられる画面」を備えた製品開発を目指す。現状は性能の安定など課題はあるが、使い勝手やデザインでスマホに新たな展開をもたらす。

東京大学の染谷隆夫教授らが開発した超柔軟ディスプレー

 フレキシブルなセンサーも技術の蓄積が進む。「デジタル技術=硬い」という制約が解き放たれると、ヘルスケアや工場効率化などで、従来は思いもよらなかった有用な情報を取得できる可能性がある。

 ただ当面、高速演算や記憶をつかさどる半導体チップのフレキシブル化は難しそうだ。チップ自体の薄型化や配線用の導電材料の開発など、フレキシブル技術と半導体チップを接合する技術も欠かせない。

 半導体製造装置や素材では日本は今も世界をリードしており、新領域で果たすべき役割は大きい。

ブロックチェーン、金融以外に

 仮想通貨の基盤技術である「ブロックチェーン」は、これまで金融とIT(情報技術)を融合した「フィンテック」分野で大きな注目を集めてきた。しかし今後は流通や製造、医療など、フィンテック以外のさまざまな分野で応用されそうだ。

 ブロックチェーンはインターネット上の複数のコンピューターでデータを共有し、互いに監視し合う。このためデータの改ざんが事実上不可能なほか、高価な管理サーバーが不要なことからシステムのコストを10分の1以下に減らせる。

 ブロックチェーンをデータ記録システムとして利用すると、データの改ざんが許されない幅広い用途に利用できる。例えば、流通の履歴データや製造業の検証データ、医療の治験データなどの記録に向いている。

 すでに実証実験も始まった。システム開発のセゾン情報システムズなど3社は12月、ブロックチェーンで情報を記録する宅配ボックスシステムを開発し、実証実験に成功した。「誰がいつボックスを開閉し、何を受領したのか」といった情報を半永久的に証明できるという。

スマートデバイス

 スマートデバイスはパソコンのように多彩な処理を実現できる機能と、ネットワークにつながる機能を備えた機器のことだ。これまではスマートフォン(スマホ)やタブレット(多機能携帯端末)が代表格だった。今後はスマートデバイスの候補が増えていきそうだ。背景にはスマホ登場以来の部品やネットワーク環境の進化と、あらゆるモノがネットにつながる「IoT」の普及がある。

 スマホの登場で電子部品の小型化や高性能化が進んだ。さらにクラウドサービスの活用が容易になって、複雑な処理を任せられるようになった。ウエアラブル端末などの小型端末でさえもネットワークにつながって、多彩な処理を実現できるようになる。

 ネットワークにつながることが前提のIoT機器もスマートデバイスの候補だ。各機器の機能が限られていても、機器同士がネットワークを介して連携すれば多彩な処理を実現できる。エアコンに話しかけるとテレビに必要な情報を表示するといった具合だ。

 これまでスマホに集約されてきた機能はIoT機器に分散していく。

エッジコンピューティング

 「エッジコンピューティング」と呼ばれる解析手法も注目だ。大量のデータをクラウド上のサーバーなどに集めて解析するのではなく、データが発生した場所ごとに解析をし、解析済みのデータをつなげて世の中の動きをとらえる手法だ。

 16年5月にコニカミノルタが買収したモボティックスは監視カメラのメーカーだ。カメラは高解像度になり、動画は4Kが普及。この大容量の情報をネット経由で24時間集めるのは不可能。モボティックスのカメラは店で顧客の動向、工場の動線などをその場で解析する。解析用コンピューターは様々な場所にあるコンピューターと連携できる。

 キヤノンは町中のカメラで、ひったくりなど通常とは違う人の動きを検知し、犯人を自動追尾するシステムを米IBMなどと共同開発している。動画以外にも、データ容量の大きい業界で17年以降の重要技術になりそうだ。

パーソナルアシスタント

 人間の生活を補助する「パーソナルアシスタント」と呼ぶ機能を備える端末やサービスも17年は拡大しそうだ。既に提供されているものでは米アップルの「Siri」が有名だ。

シャープが発表したホームアシスタント

 天気など知りたいことをスマートフォン(スマホ)に話しかけると人工知能(AI)で処理し、瞬時に情報を返してくれる。あらゆるモノがネットにつながる「IoT」と人間の接点としても注目される。

 スマホ以外でもパーソナルアシスタントを備える端末が登場してきている。日本上陸が噂されている米アマゾン・ドット・コムの機器「エコー」のほか、シャープも16年秋の家電見本市「シーテック」でロボット「ホームアシスタント」を発表した。

 音声認識機能を持つ端末が普及すれば、リモコンやスマホに触れず、家電を操作することもできる。家族の行動データを蓄積すれば先回りして快適な環境にしてくれるなど、「賢い家電」が本格的に活躍する時代も見えてきそうだ。

VRショッピング

 仮想現実(VR)端末の「プレイステーション(PS)VR」が登場するなどVR市場が活気づくなか、17年はVRをショッピングに応用する取り組みが増えそうだ。商品を様々な角度から見たり、仮想空間で友人と話したりしながら買い物できる。VRを使って商品(モノ)をただ見せるのではなく、体験(コト)を与えて販売拡大につなげる動きもある。

 IT(情報技術)ベンチャーのカブキ(東京・千代田)はVRを活用したネット通販のアプリを16年8月に始めた。スマートフォン(スマホ)をはめるゴーグル型のVR端末を使う。

 例えば、ファッションショーで着用された衣料品を選ぶと、ショーの様子を会場にいる感覚で見られる。実際に着用して歩く人を見て購入を検討できる。

 アプリ上でフェイスブックやLINEなどを選んで友人にメッセージを送ると、相手も同じ空間に簡単に接続して買い物を楽しめる。スマホを通じて会話もできる。

 VRコンテンツを簡単に作成できる編集ソフトや撮影技術が普及し始めたことで、VRで体験を楽しむ「コト消費」を演出する手法の広がりが期待できるだろう。
(企業報道部 新田裕一、木村雅秀、河合基伸、小河愛実、諸富聡、池下祐磨)[日経産業新聞2016年12月29日付、日経電子版から転載]

「日経College Cafe」のお勧め記事はこちら>>