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発信! 理系女子(11)成長につながる「聞く力」

authored by 東北大学サイエンス・エンジェル
発信! 理系女子(11) 成長につながる「聞く力」

 こんにちは、東北大学サイエンス・エンジェル(SA)の邉見ふゆみです。「教えることは最大の学び」とはよく言いますが、長年学生の立場にいた私が、実際に指導する立場に立ったことで学ぶことは本当にたくさんありました。そのうちの1つが「聞く力」の大切さです。前回の記事では大学生に必要と言われるコミュニケーション能力のうち、「伝える力」について私の考えを紹介しました。今回は、大学院生が高校生の研究指導をしたことで気づいたもう1つのコミュニケーション能力「聞く力」とは何か、についてお伝えしたいと思います。

アドバイスを聞ける人、スルーする人

メンタリングした高校生が研究発表会で優勝した際、アメリカへのアワードツアーに同行させてもらいました。(左が筆者)

 私はSA活動のほかに、東北大学が高校生向けに開講している科学講座で、1~3名の少人数の高校生チームが行う自主研究をサポートする「メンター」としての活動を4年ほど続けています。太陽電池、画像処理、バイオエタノール、生物の生態調査...などこれまで多岐にわたる分野の研究を見てきました。

 こんなにバラバラの研究テーマを同じ人が指導できるのか、と思われるかもしれませんが、メンターの役割は研究内容そのものに口を出すというよりは、研究の進め方や発表方法についてアドバイスすることがメインなので、専門知識よりもマネジメント能力が問われる立場です。そこで高校生とのコミュニケーションが重要になってきます。

大学院生がメインで通う東北大学片平キャンパス。緑が多いです

 私が関わってきた高校生たちは、研究テーマ以上に多様な個性を持っていました。提案を素直に受け入れテキパキ実験する子、自分で本を読み込んで院生顔負けの知識を持つ子、周囲を気にせず自分の考えを貫き通す子、中には自分の研究内容をよく分かっていない子も...。

 研究に取り組む姿勢は様々でしたが、私が高校生を見た中で感じたのは、先生やメンターのアドバイスを素直に受け入れられる力を持った子は、たった3カ月~半年間という限られた研究期間の中でもどんどん成長するということです。

 高校生たちの中で、メンターのアドバイスを素直に受け入れ、研究に反映できる子は案外多くはありません。本来、研究を前にしてはメンターも高校生も互いに一人の「科学者」であるため、どちらが正しい、といった答えはなく、対等にそれぞれの意見をぶつけ合うことは大切なプロセスです。しかし、中には明確な反論を示すでもなく、アドバイスをただ聞き流してスルーしてしまう高校生もいました。

研究室での実験風景

 一方で、メンターのアドバイスに素直に応えられる子たちはもれなく、なぜそうした方がよいのか自分で考えたり、+αの実験を提案したりと、ちょっとした一言から研究を発展させられる力を持っていました。

 内容を熟知しているはずの自分たちの研究であっても、一歩引いた目線からでないと気が付かないことは意外とあります。研究に夢中になっていると、気づかぬうちに本来の目的から脱線して違うことをやっていた、というケースも珍しくないのです(ただし、その脱線から思わぬ発見が生まれることもあるので、芽を摘んでしまわないよう気を付ける必要があります)。アドバイスを聞き入れた上で議論ができる高校生たちは、客観的な視点を取り入れることの重要さを感覚的にわかっているのかもしれません。

実際、アドバイスを素直に受け入れる子は、みるみる成果を上げ、高校生の枠を飛び越えて海外の研究会で発表・表彰されていきました。反対に、メンターのアドバイスに耳を傾けなかった子は、発表会でも聴衆の方々に全く同じアドバイスをされることも多く、メンターとしては歯がゆい思いをしてきました。こうした経験から、他人の意見をどんな形であってもひとまず聞き入れ、自分の中に吸収できる力=「聞く力」は、時に「伝える力」以上に重要なのではないかと感じています。

「聞く力」を身につけよう

研究室のある東北大学電気通信研究所附属ナノ・スピン実験施設

 人の意見を聞き入れるということは、相手を信用するということにもつながります。メンターや指導者側も信用されていると感じればさらに踏み込んだ有益な助言をしてくれるでしょう。

 私はアメリカへ研究滞在していた際、「聞く力」を持つ高校生のことを思い出して、周囲の学生や先生に積極的に意見を求め、実行するようにしました。そのおかげか、1カ月半という短期間の中でも彼らと打ち解けることができ、たくさんの良いアドバイスを受け取ることができました。「聞く力」を持つ子たちが国内外問わず活躍していける秘訣は、「聞く力」によって多くの人の信頼も同時に手に入れ、良質なアドバイスをたくさん得られるからなのかもしれないな、と思います。

修士1年時に研究滞在で訪れた米国・MITにて。「聞く力」の大切さは世界共通!

 研究する高校生たちの姿を見ていると、自分の研究姿勢はどうだろうといつも反省します。先生や同期、先輩後輩から、あるいは学会でいただいた意見等をきちんと反映できているだろうか、と...。まさに教えることで改めて学んだことです。私は春から社会人になりますが、上司や先輩といった目上の方はもちろん、将来は後輩の意見も常にまっすぐ受け止められる人でありたい、と思います。

 2回に渡って「伝える力」「聞く力」についてお送りしてきました。「伝える力・聞く力」の両方を身につけて、コミュニケーション上手になりたいですね!

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