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中国、次はネットで爆買い?

中国、次はネットで爆買い?

一時話題になった中国からの旅行者の「爆買い」が失速する中、次に期待されているのが「越境EC」です。いったいどんな仕組みなのでしょうか? イチ子お姉さんとからすけが話しています。

イチ子お姉さん 旅行で日本の土産をいっぱい買う「爆買い」が減ったそうよ。代わってインターネットで買い物をする中国の消費者が増えているって知ってる?
からすけ 中国からの旅行者でいっぱいだった日本の百貨店の売り上げが、落ちているみたいだね。買い物の仕方が変わったのかなあ。

外国製品 居ながら購入

 イチ子 わが家ではよく、インターネットを使って本や食品を買っているでしょ。商品や値段を比べながら注文できるので店に行く手間がかからないし、家まで届くから便利よね。支払(はら)いはクレジットカードで済むから楽だし。わが家で使っているのは国内のネット通販(はん)だけど、同じようなことが、国と国の間でも活発になっているわ。国境を越(こ)えて注文と商品が行き来しているのよ。

 からすけ インターネットを使えば国境は関係ないんだね。

 イチ子 そうね。特に中国の消費者が積極的で、外国の商品を直接買っているのよ。ネット通販のことをエレクトロニックコマース(EC)というんだけど、注文や商品が国境をまたいで行き来するから、最近は外国製品をネットで購(こう)入することを「越境(えっきょう)EC」(キーワード)と呼び、中国の消費者に人気になってきたわ。

<キーワード>
 越境EC 国境をまたいで注文や商品をやり取りする国際的な電子商取引。ECはエレクトリックコマースの略。
 保税区 関税や通関手続き前の貨物を保管する場所のこと。中国の税関が港湾や空港の近くに設けている。

 からすけ どんな仕組みで、商品を注文したり配送したりするの。

 イチ子 中国にはアリババ集団(天猫)や京東集団(京東商城)といったネット通販大手をはじめ、いろんな企業がサイトを開いているの。そこには日本のメーカーの商品が掲載(けいさい)されているわ。中国の消費者がこうしたサイトから欲しい商品を注文すると、日本のメーカーが中国向けに商品を国際便で送る仕組みよ。日本の物流会社が商品の配送を請(う)け負うことも多いわね。

 からすけ なるほど。

 イチ子 最近は送料を抑(おさ)えてより素早く商品を消費者に届けようと、あらかじめ中国国内の保税区(キーワード)に商品在庫を置く方式が広がっているわ。中国の消費者にすれば、居ながらにして海外の製品が自宅に届くという訳なの。

 からすけ だから、利用が伸びているのか。

 イチ子 日本の経済産業省がまとめた資料があるわ。2015年に中国の消費者が越境ECで日本から購入した商品の金額は約7960億円だったの。15年、中国人観光客が日本で買い物した金額は約8090億円だったので、越境ECが「爆買い」に迫っているわ。日本から買う越境ECは今年は日本での買い物を上回る見込み。経産省の推計だと16年は1兆円を超え、3年後の19年には2兆3000億円になる見通しよ。

 からすけ すごい勢いだね。

 イチ子 これまで中国の消費者の買い物といえば、日本に旅行に来て商品を大量に買う「爆買い」が有名だったよね。その購買力が今は越境ECに移っているの。日本国内では商品がなかなか売れないので、急成長する中国向けネット通販に参入し販売を増やそうと考える日本の中小メーカーが増えているの。日本の物流会社やネット通販会社も有望な市場だと見ているわ。

日本の化粧品や薬・食品、人気

 からすけ どんな商品が売れているの。

 イチ子 化粧(しょう)品や医薬品、健康食品などが人気のようよ。中国の消費者は外国製品の品質への信頼(らい)が高いの。逆に言うと、中国の国産製品を信用していない人が多いということね。中には「国産の商品は使いたくない」という消費者もいるそうよ。中国で輸入品を販売する店はあるけど、中には価格が2倍以上の商品もあるの。それに比べて越境ECは、日本国内での販売価格とあまり変わらないという点で魅(み)力的なようね。

 からすけ 中国でインターネットをする人は増えているのかな。

 イチ子 中国のネット人口は約7億人で、米国の人口の倍以上いるという統計があるわ。「1」が4つ並ぶ11月11日は「独身の日」と呼ばれ、ネット通販業者が大バーゲンをするのが恒(こう)例になっているの。最大手のアリババはこの日だけで約1兆8900億円の売り上げがあったと発表しているわ。ネット通販の市場が広がっているのね。

 からすけ 「越境EC」はこれからも順調に伸(の)びるのかな。

 イチ子 17年5月から中国政府は輸入品の通関制度を厳しくする予定なの。その内容次第では、通関手続きが煩(はん)雑になって伸び悩(なや)む可能性があるわ。それと、中国の国産製品の品質も向上してきているので、外国製品に対する消費者の絶大な信頼がいつまで続くかがカギになるわね。


物品の移動、文化交流も促す


豊島岡女子学園中学高等学校の神谷正昌先生の話 894年に菅原道真(みちざね)の建議で遣唐(けんとう)使が廃(はい)止、平安時代は中国との交流が途(と)絶えたと、かつては言われました。しかし実際はその後に興った宋(そう)の商人が定期的に来航し様々な物産をもたらしています。唐(から)物といって珍重(ちんちょう)され、朝廷(てい)や貴族は九州の大宰府(だざいふ)に買付人を派遣して競って買い求めました。平清盛の日宋貿易や室町時代の日明(にちみん)貿易でも、美術品や茶道具などの唐物を求める傾(けい)向は続きました。
 外国の物品へのあこがれは、時代や地域を問わず見られます。しかし歴史的に見ると、物品の移動のみが繁(はん)栄の要因となっていたわけではありません。国際交流によって、知識や技術、制度など様々な文化が伝わり、発展を促(うなが)したのです。最近は文化的体験を求める外国人観光客も増えてきているといいます。これからはそのような文化や精神性などの需(じゅ)要が高まっていくかもしれません。

[日経プラスワン2016年12月3日付、日経電子版から転載]

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