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ニュースの見方(33)インターンシップと就活はこう変わる!

戸崎肇 authored by 戸崎肇大妻女子大学教授・経済学者
ニュースの見方(33) インターンシップと就活はこう変わる!

 学生が働く経験を積む「インターンシップ」という言葉は、日本でも一般的に使われるようになりました。インターンシップ制度の充実ぶりを受験生にアピールする大学も増えています。

6割の企業が実施

 今年1月11日付の日本経済新聞によると、リクルートキャリア調査では、約6割の企業がインターンシップを実施しています。参加する学生も増えています。ただ、大学が単位認定しているインターンシップだけをみると、参加学生は全体の3%弱にとどまり、6割程度とされる欧米とは差があります(上記の日経記事は日経カレッジカフェにも転載していますので、興味があるかたはコチラから>>)。

 さらに、国内ではインターンシップ実際の際、学生の人気が集中する企業と、学生が全く関心を示さない企業に分かれます。大学としては、どのように学生を各企業に配分するかという問題を抱えています。

「働く」を知る好機

インターンシップを実施する企業は増えている(京都市の京セラ)

 将来どのような業種に就職するのであれ、インターンシップの制度を利用して社会人としての経験をすることは大きな意義があります。社会で働くということを、短期間とはいえ身をもって実感できれば、卒業するまでの間にどのような準備をすればいいかがわかるでしょう。

 欧米では1カ月を超えてインターンシップを行い、その間の給与も支払うところもあります。日本では学業の支障になることを懸念し、短期間に限定され、給与も支払われないことが多いようです。バイトがわりに雑用として使われるだけに終わってしまう恐れもあります。本来は労働に対して適切に報酬をしはらうべきです。確かに、報酬を支払わなければならないとなると、受け入れる企業の数は減少するかもしれません。その半面、企業の側も安易にインターンシップを受け入れるのではなく、そのあるべき姿をより真剣に考えるようになるでしょう。

大きく変わるインターン

 現在、企業がインターンシップを戦略的に利用できるような制度変更が、政府によって検討されています。文部科学省、厚生労働省、経済産業省の3省は、企業がインターンシップ時に得た学生の評価を新卒の就職活動の解禁後に採用の判断材料として使うことができるようにする方針を打ち出しています。国は従来、企業に対してインターンシップ時の学生の評価を採用時に用いることをしないよう求めてきました。この方針を転換しようというのです。

 このルール変更が行われるのは早くても2019年春の入社を目指す学生の就活時から。今の2年生の皆さんから、就活の在り方が変わる可能性が出てきました。

すでにインターンシップが実質的に採用と結びついているとの指摘もあるでしょう。しかし、密接にかかわることを明記するとなれば、インターンシップがきちんと本来の形で行われているかどうかをチェックする必要があります。

ワンデーは区別

ワークスアプリケーションズが開いたインターンシップ説明選考会の様子

 従来、インターンシップといいながら、実際には就業経験を伴わず、1日だけの企業説明会になっているケースもあります。新しいルールのもとでは、こうした就業経験を伴わないものは「セミナー」や「企業説明会」として明確に区別し、不適切な「青田買い」が起こらないようにします。

 学生がインターンシップ先で高評価を得て、学生の側もその企業が気に入って入社すれば、離職率はかなり抑えられるでしょう。大学のOB・OGの話を聞いたり、紹介本を読んだりしただけではわからない、企業ごとの「雰囲気」を一歩踏み込んで実感できるからです。もちろん、短期のうえ、配属される職場も限定されていますから、過度な期待を持ってもいけませんが、双方の期待のミスマッチを防ぐ上である程度の効果を期待できます。

大学の負担は増えそう

 就活が早期化し、学業に悪影響が及ぶことを懸念する大学関係者もいます。しかし、企業で働くことを通して「なぜこうしたことを学ぶ必要があるのか」が身をもって理解できれば、学習意欲も高まるでしょう。メリットの方を筆者は期待したいと思います。企業としても、学生の資質を正確に見抜けるよう、インターンシップの内容をより真剣に考えるようになるはずであり、これまでよりも良質な内容となると思われます。

 大学の側では、インターンシップを希望する学生が急増することによって、インターンシップ先の選定、送り出すための事前教育などの実施、インターンシップ実施後に学生が作成する報告書の評価など、負担が増えます。負担増に対応できる大学とそうでない大学の間で、就職実績における格差は広がっていくことでしょう。現在、受験生の間での大学の評価において、就職実績も大きな比重を占めています。大学にとっても生き残りのための大きな転機となります。

中小だけでいい?

 インターンシップ時の評価を採用に活用する仕組みについて、中小企業にのみ適用すべきだという案も出ています。自然に多くの応募者が集まる大手企業よりも、人手不足が深刻な中小企業を優先すべきだということです。ただし、中小企業といっても業種によって学生の関心の度合いには違いがあり、どこまでを中小企業として位置づけるのか、単に事業規模だけで分けてしまっていいのかという問題が残ります。

 学生の皆さんにとっては、就活がまた新たなステージを迎えることだけは確かでしょう。ルール変更に備え、情報収集に努めましょう。

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