日本経済新聞 関連サイト

OK
[ career-働き方 ]

曽和利光の就活相談室就活生さんどうぞ
「プロ人事」が悩みを聞きます

authored by 曽和利光
曽和利光の就活相談室 就活生さんどうぞ「プロ人事」が悩みを聞きます

 就活生の皆さん、こんにちは。人材研究所(東京・港)の社長、曽和利光です。私はリクルートやライフネット生命などの人事・採用責任者として20年以上、累計で2万人を超える就活生を面接してきました。このほど日経電子版上に新たな「就活相談室」を開設しました。この連載は、相談室に応募してきてくれた就活生に実際にお会いし、模擬面接を使った指導や、就活の悩みの相談をしていくインタラクティブ企画です。どうぞよろしくお願いいたします。

「売り手市場」油断していていいのか

石塚さん 法政大学からまいりました、3年の石塚正樹と申します。就活は日本の大手企業を目指しつつ、まずはベンチャーなどで肩慣らしをしようと考えています。
 曽和さん いい感じですね。いきなり本番は大変ですから。いま就活に取り組む中で不安なことは何ですか?
 石塚さん 「売り手市場」で、どこかには絶対入れるだろうと安心している面はあるのですが、そこで自分が納得して就活を終えられるのか不安です。
 曽和さん なるほど、3月に企業の広報解禁、6月に選考開始の「短期決戦」では、自分にぴったりの企業と出合えるかどうか、不安もあるでしょうね。今年の就活も基本的には売り手市場です。新卒の学生に対する求人倍率は、2016年卒で1.73倍、17年卒では1.74倍と高水準が続いています。でも、だからといってのんびり構えているわけにもいかない落とし穴もあるんですよ。
 石塚さん え、そうなんですか。
 曽和さん 全体としてみれば、確かに「どこかには入れる」状況です。そのどこに落とし穴が隠れているのか。結果的に「不幸な就活」で終わらないためにも、まずは今年の就活の全体像を点検し、落とし穴の存在を認識するところから始めましょう。

席はあるのに入れない?

「プロ人事」の曽和利光さんが就活生に会って悩みを聞きます

 まず1つ目の落とし穴は、企業側のニーズと学生の皆さんの志向や希望がマッチしなくなってきていることです。その好例の一つが、かつては学生のあこがれだった入社後の「海外赴任」です。

 商社やプラントのエンジニアリング会社だけでなく、いまや多くの企業が国際的に活躍できるグローバル人材を求めています。例えば鉄道会社がアジアで不動産事業を手がけたり、ラーメンなどの外食産業でさえ海外出店を強化しています。それなのに、実は、若者の海外志向は減退しているのです。産業能率大学の調査によると、15年度の新入社員のうち「海外では働きたくない」比率は6割超と、10年間で2倍以上に高まっています。商社ですら、人事担当者が「海外に行きたくないという若手がいる」とこぼすほどです。

 東日本大震災後に「地元志向」が強まっていることや、フランスなど先進国であってもテロの恐怖にさらされていることが、皆さんの「海外忌避」の背景にあるのかもしれません。

 このようにニーズと志向がマッチしていないことが原因で、企業は採りたい人材を採れない、学生側からみれば「席は余っているはずなのに入れない」という状況が起こります。売り手市場なのだから、国内志向の自分を採用してくれる会社に、とのんびり構えていていいのでしょうか。

 グローバル人材を求める企業側は、「日本で望む人材を採用できないなら、外国人を採用しよう」と考えるようになっています。大手商社が稼ぎ頭の事業を担うグループ会社をシンガポールに設け、「そこではもう日本人採用のニーズはない」と言っている、なんて話を聞きました。全社員が50人ほどのIT企業で、10人いるエンジニアの全員が外国人、という事例も増えています。大手でも例えば楽天は、新規採用するエンジニアの半分以上が外国人だそうです。こうした流れは、今後どんどん強まるはずです。

 裏返せば、海外志向のある皆さんであれば、選考時に「タイでもベトナムでもどこでも行きます」と強くアピールすることで、グッと内定に近づくともいえます。

「ナビ頼み」はもう古い

 第2の落とし穴は、企業の採用手法の変化です。数年前までは、大手の就職情報サイト、いわゆるナビサイトに登録するところから就活がスタートしました。ナビサイトを通じて説明会を予約し、選考にエントリーし......といった具合に、「誰もがどの企業にでもエントリーできる」というオープンな就活だったわけです。ところが、こうした横一列の就活は、すでに崩れています。

 みなさんの2年上の先輩たちから就活の時期が後ろ倒しになり、さらに昨年からは企業の広報期間が3カ月に縮まって、短期決戦の様相が強まりました。この流れの中で、企業は効率的に採用活動を進めざるを得なくなりました。そこで、リクルーターを動員して採用実績のある大学の学生や、人材として欲しい専門分野の学生に重点的に接触する。昨年から見え隠れしていたこの動きが、今年はいよいよ本格化しています。

 「ナビサイト頼み」の就活を続けていると、知らないうちに周りの就活生と大きな差がついているかもしれないのです。無料のOB訪問支援のサービスを活用したり、インターンシップに参加したりして、早めに企業との接点を確保することをお勧めします。仮に皆さんの大学が「実績のある上位校」ではなかったとしても、企業側に「お、この学生、なかなか見所あるな」と思ってもらえれば、その瞬間から大学名などは関係なくなります。

入社後に待っている落とし穴

曽和利光(そわ・としみつ) 1971年生まれ。 京都大学教育学部卒。リクルート人事部ゼネラルマネージャー、ライフネット生命総務部長などを経て2011年、主に新卒採用を対象にしたコンサルタント事業の人材研究所を設立。著書に「就活『後ろ倒し』の衝撃」(東洋経済新報社)、「『できる人事』と『ダメ人事』の習慣」(明日香出版社)などがある。

 最後の落とし穴は、無事に内定を獲得し、目当ての企業に入社した後に待っています。売り手市場では、企業側が必死に採用人数を確保しようとするため、ちょっとばかり疑問符のつくような学生に対しても、数合わせで内定を出す傾向がみられるはずです。いわば「水増し内定」です。

 仮にそこで、人気企業ランキング上位の大企業にギリギリ滑り込めたとしても、本当に幸せな社会人生活を送れるのでしょうか。最近は、年収の面でも、「企業間格差」だけでなく「企業内格差」が目立つようになっています。もしかすると、ランキングはその大企業に劣るかもしれませんが、別の会社に幹部候補として入社したほうが、活躍の舞台も広く、年収もずっと多い、なんてことが十分あり得るのです。

 つまり、今年の就活が「売り手市場」であるからこそ、皆さんは自分に合ったマッチングを見極める努力がいっそう問われているということにもなります。企業側のニーズと、皆さんの志向がしっかりマッチした形で内定を得るために、どういう気構えで今後の就活に臨み、何をアピールしていけばよいのか。次回は石塚さんたちの模擬面接のやりとりをもう少し紹介しながら、就活生の陥りがちな落とし穴への対処法を探ります。

曽和利光さんから模擬面接による指導や、悩み相談を受けたい就活生の方は、こちらのフォームから氏名・メールアドレスなどの連絡先をお知らせください。リンク先に飛ばない場合はこちらのURLをコピーしてお使いください。https://esf.nikkei.co.jp/sowa_mensetsu//

[日経電子版2017年1月11日付]

「日経College Cafe」のお勧め記事はこちら>>