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[ career-働き方 ]

楽天の「英語」朝会
社長にそこまで突っ込むの?

楽天の「英語」朝会社長にそこまで突っ込むの?
三木谷浩史・楽天会長兼社長

 社内公用語の英語化で先駆けとなった楽天。導入までの移行期間の約2年を含めると6年が経過するが、日本の本社も5人に1人が外国人となり、会議は英語が当たり前となった。ただ、国内市場ではネット通販業界での競争激化、米欧では巨人アマゾン・ドット・コムが立ちはだかり、海外売上比率は約2割にとどまる。しかし、最近、社内ではグローバル企業化に向けた新たな変化が起こりつつある。

三木谷社長 英語で朝会

 「えぇ 社長にそこまで突っ込むのか」

 2016年11月のある火曜日午前8時半すぎに、楽天の朝会に参加した葛城崇・教育事業プロジェクト推進シニアマネージャーは思わずこうつぶやいた。葛城氏は楽天の社内公用語英語化への移行時の最初の2年間余りの担当者だった。

 同社の朝会は毎週火曜日朝に開かれる原則全社員参加の集会。三木谷浩史会長兼社長や各部門の担当者らがスピーチするが、すべて英語だ。各事業の戦略や取り組み、世界の最新技術や成功事例などを全社員へ共有。多くの場合、最後に社長自らがスピーチする。

 三木谷氏は海外に滞在する日が増えているが、テレビ会議を通しても出席する。東京・二子玉川の本社のフロアに2000人ほどが集まり、ビデオ会議システムで国内外50カ所以上の拠点へライブ中継される。実はこれまで一方的に三木谷氏を含む発表者らがスピーチするだけだったが、春以降、社長との質疑応答形式が加わった。

外国籍社員はズバズバ聞く

 さすがに三木谷氏に一社員が直接質問するのは気後れするものだが、外国籍社員は違う。「北米攻略はどうやるのか」「ライバル社に対しての戦略は」「それで大丈夫なのか」などストレートにズバズバと質問する。「そんなセンシティブな話を直接社長に聞いてもいいのか」と葛城氏がドキッとすることまで聞くが、三木谷氏も驚くほどきちんと回答するという。活発な質疑の応酬が起こり、朝会がにわかに活気づいている。

楽天の葛城崇・教育事業プロジェクト推進シニアマネージャー

 しかし、足元の収益環境は厳しい。アマゾンやヤフーとの競争が激化し、2016年1~9月期の連結決算(国際会計基準)は、営業利益が前年同期比9%減の752億円となった。国内のネット通販市場は明らかに成熟期を迎えている。10年に「グローバル企業に変わる」と三木谷氏が宣言し、次々米国など海外企業を買収したが、収益面でグローバル企業に脱皮したとは言い難い。米欧やアジアの一部の国・地域では一定の成果を上げているが、楽天市場モデルのEコマースでは中国など撤退した国もある。

 米欧中心にすでにアマゾンがネット直販体制を構築。中国は当局の壁があるなか、アリババが一気に巨大化した。ただ、楽天のグローバル化の下地は着実にできあがっている。 「I will get back to you (別途連絡します)」「Noted(了解)」。今や楽天のほとんどの会議は英語だ。

進む職場のダイバーシティー

 10年時点では単独ベースで3000人規模だった楽天の外国籍社員はわずか2%。「日本人同士、しかも国内営業の会議で英語で話すのはさすがに違和感があった」(同社幹部)。しかし、海外企業の相次ぐ買収や米欧やアジア系外国人の急増で、今や社員の20%が外国籍に。葛城氏は「会議を開けば、必ず外国籍社員がいるので、英語を話さないと成立しなくなった」と話す。社内には英語能力テスト『TOEIC』800点以上の社員は当たり前の存在となっているが、スピーチ力向上のため、ビジネス英語の会話力を判定するテスト「Versant(ヴァーサント)」を活用している。

 英語の社内公用語化が定着した楽天。外国籍社員が急増し、職場のダイバーシティー(多様化)が急速に進んでいる。「最新の技術の導入がスムーズになり、サービスも日本市場だけでなく、グローバル市場ベースで考え、このサービスならアジア発でやろうとか、発想が柔軟になった」(葛城氏)という。ただ、英語自体はコミュニケーションツールでしかない。海外売上比はまだ2割とグローバル化はまだ道半ばだ。世界企業への再挑戦が始まろうとしている。
(代慶達也)[日経電子版2016年12月15日付]

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