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[ career-働き方 ]

17年の企業課題、
どこを見回してもIT

17年の企業課題、<br />どこを見回してもIT

 2017年はどんな年になるのか。政治の世界は激変も予想されるが、企業経営の世界では去年も一昨年も、あるいは10年以上前から指摘されてきた課題が引き続き最重要テーマになるはずだ。「IT(情報技術)とどう向きあうか」という古くて新しい問いかけである。

 その観点から昨年取材した中で印象に残った日米欧3社の例を紹介したい。一つは米ゼネラル・エレクトリック(GE)だ。GEがジェフ・イメルト会長の指揮の下、デジタル化を急ピッチで進めていることは有名だが、昨年暮れに来日した同社のマルコ・アヌンツィアータ首席エコノミストから米国で話題のテレビCMの話を聞いた。

巨人GEのユニークなCM

 米国でGEといえば日本の三菱重工業のようなもので、「伝統あるメーカーだが、ITとは縁遠い存在」と思われがち。こうした通念を塗り替えようと、一昨年秋から始めたCMが思わぬヒット作になり、第2弾、第3弾とシリーズ化された。主人公はオーウェンとサラという若手社員で、彼らがGEをめぐる世間の"偏見"と戦う様をユーモラスに描いたものだ。

 コンピューター科学専攻のオーウェン君はIoTに取り組むためにGEに入社するが、周りはぴんとこない。両親に「GEに就職する」と報告すると、「そうか、工場で働くのか。これはおまえのおじいさんが使っていたものだ。大事にしろよ」と祖父の遺品の巨大なハンマーを渡される。両親にとってGEといえば昔ながらの工場のイメージしかないのだ。

 一方工学系エンジニアのサラさんは航空機エンジン工場で働いているが、その周りにいるのはオーウェン君とは逆に「GEがITを使って途方もないことを計画している」と考える、誇大妄想的な人ばかり。工場見学に来た若者は、サラさんの近くで働く作業員について「あれは精巧にプログラミングされたロボットなのか」とサラさんを問い詰めて、うんざりさせる。事実はただの太った中年男性社員にすぎない。

 これらのCMに込めたのは「GEはデジタル技術と従来型の製造業の両方に足場を持つユニークな存在」というメッセージ。グーグルなどの純粋デジタル企業とはひと味違う活躍の舞台が広がり、「エネルギーや医療や交通制御を通じて本当に世界を変えるような仕事をしたいならGEの門をたたいてほしい」(アヌンツィアータ氏)という若い世代への呼びかけである。

独ZF、機械と電子技術の融合狙う

 欧州企業で印象に残ったのは世界3位クラスの自動車部品メーカー、独ZFのシュテファン・ゾンマー最高経営責任者(CEO)の話だ。もともとZFという社名からして歯車工場を意味するドイツ語に由来し、典型的なオールドエコノミー企業だったが、2015年に電子技術などに強い米部品大手のTRWオートモーティブを135億ドルで買収した。

ZFのゾンマー社長はTRWオートモーティブを買収した理由として「自前主義では対応できない」と説明した

 日本でいえば機械系のアイシン精機と電子技術に強いデンソーが合併するような大胆な再編だが、決断の背景は何か。ゾンマーCEOは「車の世界もデジタル化が進み、今後はセンサーやAIの技術が不可欠になる。車の機能をすべて統合し、制御するためのソフトウエアも必要。自前主義では対応できない」と説明した。ここでもGEと同じくキーワードはソフト技術とハード技術の融合だ。

 ちなみにこの話を聞いて以降、狭い技術領域ごとにすみ分ける日本の自動車部品会社が競争力を持ち続けられるのか少々不安になったことも付け加えておこう。

 最後に日本企業で興味深かったのは、部品商社のミスミグループ本社だ。計測器からボルト、ナットのたぐいまで工場で使われる油くさい品目を主にネット経由で販売するが、取扱商品の幅広さと素早く届ける物流体制の拡充から「工場のアマゾン」の異名をとる。営業利益率はほぼ一貫して10%を超え、海外市場でも急成長中だ。これもネットというデジタルツールと工場部品をうまくかけあわせた事例といえる。古い企業や古い技術がデジタルと出合ってどんな変身を遂げるか、そこに大きなチャンスが広がっている。
(編集委員 西條都夫)[日経電子版2017年1月10日付]

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