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経営者ブログ 星野リゾート代表星のやバリ、開業へ
国内手法を海外に広げる

星野佳路 authored by 星野佳路星野リゾート代表
経営者ブログ 星野リゾート代表 星のやバリ、開業へ国内手法を海外に広げる

 新しい施設「星のやバリ」が1月20日、インドネシアのバリ島にオープンしました。星野リゾートにとってはタヒチに次いで海外での運営は2カ所目。タヒチは既存施設の運営の受託でしたが、バリでは施設のオーナー企業の下で施設のデザイン、企画から手がけたうえで運営を行います。料金は1泊1室800ドルからとなっています。

 星のやバリがあるのは、バリ島の内陸部に位置するウブドという地区です。バリ・ヒンドゥー文化の中心エリアであり、施設づくりではそうした地元の集落を参考にしています。それだけに顧客はリゾートに滞在しながらバリの集落で家を借りて住むような非日常の感覚を味わうことができます。バリには西洋型の「南の島」のビーチリゾートが多いのですが、星のやバリはそれらとはまったく異なります。

 ハード面では、施設内を流れる運河にこだわりました。ウブドの東には、聖なる川から水を引き込んで農家が分け合うスバック(バリの慣習的な水利組織)があり世界遺産になっています。星のやバリの敷地にはスバックの水が流れ込み、運河となっています。プールとして泳ぐことができるうえ、クランクして各客室とつながっています。まったく新しいリゾートのプールのあり方だと自負しています。

スタッフはサービスのクリエーター

星のやバリにある「カフェ・ガゼボ」は、宙に浮かぶ鳥かごのようなつくりとなっている

 こうしてつくった「舞台」のうえで「演じる」のがスタッフ一人ひとりです。星野リゾートでは、スタッフを労働力とみるのでなく、サービスのクリエーターととらえています。

 そのために、国内ではスタッフにさまざまな情報を提供し、顧客満足度を高めるためのサービスなどを一人ひとりが考えることを重視してきました。これは海外でも同じであり、バリでもスタッフの参加度を高めていきます。

 実は海外に進出する以前は「状況が違うから、国内で培ったノウハウが100%は生かせないかもしれない」という不安やリスクがどこかありました。それでも「まずは自分たちのノウハウでやってみて、必要なところをアジャストすればいい」と思っていました。ところが、初の海外施設となったタヒチで運営してみて、その見方が変わりました。

 タヒチのスタッフは国内と同じように目の前のお客様に満足してほしいという気持ちを持っており、そのために参加度を高めることを歓迎していました。それまでのやり方から転換するために多少時間はかけましたが、思いのほか日本での手法が通じると確信しました。実際、タヒチでは例えばスタッフのアイデアで地元のワイナリーと提携したツアーができたし、特産品を使ったデザートも生まれました。新たに開業するバリでも、ヒンドゥー文化を持ったスタッフが島を表現していくことでさらにリゾートとして進化できると思います。

 国内と同じなのは、サービスに対する姿勢だけではありません。

 星野リゾートはスタッフがチームを組んで清掃からフロント業務までをマルチタスクでこなす「サービスチーム」で業務効率を高めています。タヒチでは既にサービスチームを導入しており、バリももちろんサービスチームで臨みます。

運営効率がポイントに

 なぜそうするのか。星野リゾートは国内、海外ともにフォーシーズンズ・ホテルズ・アンド・リゾーツ、アマンリゾーツ、ザ・リッツ・カールトンなどを手がけるマリオット・インターナショナルといった世界的なホテル運営会社と競合することが増えています。バリの場合、同じ地区にはフォーシーズンズ・ホテルズ・アンド・リゾーツやアマンリゾーツの施設があります。こうした企業と競い合うには、運営効率が大きなポイントの一つになってきます。私はこの点において、星野リゾートのサービスチームに自信を持っています。だからこそ、バリでも最初から導入します。

 バリの場合、集客は日本だけでなく、世界中から来てもらう必要があります。この点においてはさまざまなネットワークが広がってきたことが強みになっています。例えば、北海道で運営するトマムでは冬場にオーストラリアから集客しているし、タヒチの顧客はフランス、イタリアが中心です。運営する施設数が増えるにつれて、スケールメリットが生まれています。

星のやバリでは、リゾートに滞在しながらバリの集落に住むような非日常の感覚を味わえるようにしている

星のやバリの食事は、和食の技法を活かした創作バリ料理を提供する

 星野リゾートにとってバリは、海外で施設のデザインや企画などから手がける最初の施設となりました。この点ではさまざまなことがありました。工事は現地企業が行いましたが、業者のコーディネーションに時間がかかったり、図面通りに進まないなどしました。このため、開業は当初の予定から大きく遅れました。私は日本の建設会社のチームワークの素晴らしさを改めて知りました。
[日経電子版2017年1月12日付]

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