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liberal arts-大学生の常識

五行歌の世界(2)将来は詩人になる!
深く学びたくて他大学に編入 

吉野佳苗 authored by 吉野佳苗
五行歌の世界(2) 将来は詩人になる! 深く学びたくて他大学に編入 

 こんにちは。吉野佳苗です。今回は学生時代のことを書きます。私は五行歌の前に自由詩を書いていました。

 自由詩(以下、詩)を書き始めたのは、生きている証を残したいと思ったからです。小学校低学年のとき、「毎日なんとなく過ぎてしまうことが怖い。何か生きている証を残したい」と強く思い、言葉をノートに残すようになりました。「詩」と意識して書き始めたのは、小学五年生のときからです。この時期に、地域の文芸冊子に「虹」をテーマにして書いた私の詩が掲載されました。短い文章の中に思いを凝縮すること、自分の表現によって一瞬の景色を誰かに届けられることの楽しさに気づいた瞬間でした。

言葉は心に栄養を与えてくれる

苦しかったことや辛いことまで歌になります

 私が詩に関心を持ったのは、昔から本が大好きだったからかもしれません。食事や睡眠を忘れて読書を続ける、本大好き娘でした。小学生のときに読んでいたのは、小説や詩集、絵本などで、特に『古事記』『源氏物語』などを子供向けにした古典の本と、日本、外国の偉人の伝記が好きでした。

 初めて読んだ詩集は、工藤直子さん作の『のはらうた』(童話屋)です。工藤さんの『まるごと好きです』(ちくま文庫)という本が教科書に載っていて、大好きでした。書いた人はどんな人だろうと調べると詩人の方だったので、気になってすぐに詩集を探して読みました。「あ~私もこんな詩が書けたらな」と憧れたのを覚えています。

 詩の思い出としてはもう一つ。宮川ひろさん作の『天使のいる教室』(童心社)という本を読んだときに、詩を通して言葉の力を感じました。 実話をもとに書かれたお話で、小学一年生のクラスに通う、重い病気をかかえた女の子が出てきます。その女の子のために何ができるか考えた結果、いい絵本や詩を声に出してたくさん読んで、元気になってもらおうということになります。女の子を含めた教室中が笑顔になり、思いやる心が育っていく様子は、「『言葉』は心に栄養を与えてくれるのだ」と思えました。

このあと早速「十月桜」の歌を詠みました

五行歌! これだ!

 高校生のとき、友人がホームページで小説を発表していると聞き、「私も多くの人に詩を読んでもらいたい」と早速ホームページを作り、詩を載せました。それと同時に、雑誌や新聞で詩の投稿を始めます。そして、読売新聞の埼玉版にある「よみうり五行歌」を見つけたのです。新聞をめくっていて、ぱっと目についたため「これだ! ここならたくさんの人が見てくれるかも!」と思いました。初めて投稿した歌が入選し、選者の草壁焔太先生からコメントをいただいたことが嬉しくて仕方なかったです。高校一年生のときの初投稿歌が、下の歌です。

  渓谷の上にある雲が
夕日にとけこむ瞬間を
川と一緒に見上げる私
時に少し止まってほしくて
指でそっと時計をかくす

将来は詩人になる!

カフェで五行歌作り

 毎日、朝から晩まで詩のことばかり考えていた高校時代。だんだんと将来は詩人になりたいと思うようになりました。そこで、詩人の方の来歴を調べると、文学部を卒業し、出版社や新聞社、広告代理店に勤め、そのあとフリーになり詩を書いている方が多かったです。それならばと、大学は日本文学や詩を学べる学科を受験しました。ただ残念なことに第一志望の大学は不合格。しかし、入学した大学で友人に恵まれました。今でも付き合いのあるとても大切な人達です。そして詩のゼミに入り、室生犀星などの詩を学びました。

気になったこと、五行歌や詩のメモ

 勉強するにつれて、もっと古代歌謡や和歌といった古典の部分を、深く学んだほうがいいのではないかと考えるようになりました。本が大好きなこともあり、夢中になって色々な文献を読んだ結果、『古事記伝』や『源氏物語玉の小櫛』を書き、自らも和歌を詠んだ本居宣長の研究をしたら広く学べるのではないかと思いました。一度思いつくとすぐに行動したくなってしまう私は、専任の教授がいる大学の編入試験を受けることにしました。なんとか筆記試験と面接をパスし、大学二年次から別の大学に移りました。

 編入後、本居宣長について研究されている教授の講義やゼミで学び、勉強に熱中しました。自分が興味を持ったことを勉強するのは楽しかったです。また、さまざまな経験が詩の材料になると思い、興味があるものは何でもやってみました。その一つで空手道場に通ったのですが、そのときの経験をもとに書いた歌があります。

  道場を飛び出し
大木の正面に立ち
「気」をもらう
手がじんわりと温かい
大地と呼応した

 また、その間雑誌や新聞の投稿も続け、読売新聞の「よみうり五行歌」で、初めて特選をいただいたのは、大学四年生のときでした。

  草刈りの後の
みどりの匂い
血が通っていたと
まがう程
生命の濃い匂い

 もしかしたら文学を勉強していく中で、詩歌の呼吸が少し身についたのかもしれません。しかし、大学で行われていた作詞賞に応募するも、二年連続で落選。そのときに「自分に才能はないのかもしれない。けれど、社会人になっても詩歌を真剣に続けていきたい」と思いました。

 次回は、社会人になってからの活動をお話いたします! お付き合いいただければ嬉しいです。

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