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[ liberal arts-大学生の常識 ]

検定試験、
受験料に値上げの波 膨らむコスト

検定試験、受験料に値上げの波 膨らむコスト

 英語や漢字などの能力を認定する身近な検定試験で受験料の引き上げが相次いでいる。実用英語技能検定(英検)では2017年度から準2級、3級の検定料がそれぞれ700円、600円引き上げられる。世界遺産検定も16年7月から受検料が級によって330~600円上がった。受験者数が増えている検定試験で、なぜ値上げが導入されるのか。人件費やシステム投資、試験会場費などコスト増に直面する運営団体の苦しい懐事業が見えてくる。

規模拡大がコスト増に

 富士山の世界遺産登録などで知名度の上がった世界遺産検定。受検者数は16年に約2万9000人となり、5年前に比べて2.3倍となった。それでも16年に値上げをしたのは、規模の拡大に併わせて試験の実施コストも膨らんでいるためだ。試験の告知にかかる宣伝費や営業のための人件費に加え、個人情報の管理などセキュリティー関連のシステム投資も欠かせない。「大幅に値上げすると受検者が減りかねないため、何とか理解を得られる水準とした」(検定を主催するNPO法人世界遺産アカデミー)。

大学入試センター試験の開始を待つ受験生(1月、東京・本郷の東京大学)

 英語資格試験の定番である英検も14年度から急ピッチな値上げが続く。例えば準2級(高校中級レベル)は03年度以降に3600円で据え置いていたが、14年度に4500円となった。17年度には5200円となる。新たに「ライティング(書く)」のテストを導入し、英作文の採点にかかるコストが増えるためだ。

 文部科学省が13年、グローバル時代に活躍できる人材を育成する「英語教育改革実施計画」を発表し、英語力の底上げを打ち出した。「リスニング(聞く)」「ライティング」「リーディング(読む)」「スピーキング(話す)」の4技能を伸ばす国の政策を受け、英検でも各級でライティング、スピーキングの試験を取り入れる。従来のマークシート式に比べ、英作文を書くライティングや面接官と会話するスピーキングでは、採点や評価にかかる手間と費用が大幅に膨らむ。

 15年度の受験者数は322万人となり、過去5年で3割近く増えている。英検を一般入試に利用する大学が増えているほか、英語教育の前倒しも寄与している。20年度に大学入試センター試験に代わって始まる新テストでも、英検など民間試験が活用される可能性もある。運営団体の現場では「試験前後は会場や採点者、面接官の手配などに忙殺される」(日本英語検定協会)とうれしい悲鳴が聞こえる。

 16年に約20年ぶりに値上げに踏み切ったドイツ語技能検定試験(独検)。2~5級が対象で、500~1000円の値上げとなった。運営団体は「印刷用紙などの値上がりに加え、試験会場の賃借料が上昇したため」と説明する。

 多くの検定試験では大学の教室が試験会場として一般的だが、最近は貸会議室や貸しホールの利用も増えているという。試験や会議などの増加で、試験会場が不足しているとの指摘もある。財務省が13年度に調査した税理士試験に必要な経費では、会場の賃借料がやり玉に挙がった。教育施設などの安価な会場を確保できず、高額な貸会議室での実施が経費を押し上げたという。

定員割れが理由となるケースも

 受験者数の減少で、やむなく受験料の引き上げを迫られる事例もある。法科大学院の志願者に1次試験として課す適性試験の受験料は16年、従来の1万6200円から2万1600円に引き上げられた。志願者数は03年に4万人近くいたが、15年には7000人を割り込んだ。司法試験の合格率低迷などを受け、多くの法科大学院で定員割れが問題となっている。試験を運営する適性試験管理委員会の担当者は「志願者数が大きく減少する一方、試験会場数を維持する必要もある」と苦しい胸の内を語る。

 検定試験は乱立状況にあり、受験者を集める競争は激しい。今後は生き残りをかけて値上げが一段と進む可能性もありそうだ。
(商品部 金子夏樹)[日経電子版2017年2月2日付]

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