日本経済新聞 関連サイト

OK
liberal arts-大学生の常識

人とIT、次の「接点」は
iPhone発表から10年

人とIT、次の「接点」はiPhone発表から10年

 米アップルのスティーブ・ジョブズ前最高経営責任者(CEO)がサンフランシスコでスマートフォン(スマホ)の初代iPhoneを発表してから10年になる。生で見たジョブズ氏のプレゼンのなかでもベスト3に入る出来栄えだったと思う。

 いつにも増して製品デモがさえていた。画面を指でなぞって地図を開いたり、音楽やビデオを再生したり。コンピューター利用の新たなスタイルに会場は沸いた。

 迎えた2017年。人とコンピューターの「接点」はどう変化するのか。やはり注目は人工知能(AI)が果たす役割だ。

 IT(情報技術)大手はすでに活発な動きをみせている。

AI使った玩具ロボット

 米アマゾン・ドット・コムは16年の年末商戦で自社開発のAI家電の売り上げが前年の9倍になったと発表した。話しかけて操作するスピーカー「エコー」がよく売れたという。

 米グーグルのスンダル・ピチャイCEOは「モバイルファーストからAIファーストへ」と宣言した。スマホや家電の魅力をAIで高める戦略を進める。

 スタートアップの動向も見逃せない。サンフランシスコにあるAI関連の2社を訪ねた。

約180ドルで売り出したCozmoを掲げるアンキのソフマンCEO(サンフランシスコ)

 まず10年創業のアンキ。いま一押しは「Cozmo」という手のひらサイズの玩具ロボットだ。会った人の顔を覚え、対戦ゲームをしながら、相手との関係を築いていく。顔つきや身ぶりで喜怒哀楽を表す。

 「ロボットと遊んでいることをつい忘れる。子供も大人も夢中になる」。実演しながらボリス・ソフマンCEOが話す。確かに、短時間遊んだだけで、小さな生き物と触れ合っているような愛着がわいてくる。

 防衛・宇宙などの産業利用や研究目的にとどまるロボットとAIの技術を一般の人に届けたい――。そんな思いから、米カーネギーメロン大学でいっしょだった仲間ふたりと起業した。ゲーム開発者やアニメーターも社員に加え、人の感情に働きかけるCozmoの完成度を高めた。

 ただ、おもちゃ会社になるつもりはない。「築いた土台を使えばほかの製品もつくれる。娯楽の枠にとどまらず、家庭用でもヘルスケア用でも多くの市場に入っていける」とソフマン氏。

 人の警戒心を解き、懐に飛び込む個性的なAIロボ。人とコンピューターの今後を考えるヒントになるのではないか。

顧客とのやり取り「人間抜き」に

マインドメルドは対話型AIで大手企業を顧客に抱える(サンフランシスコ)

 もう1社は11年創業のマインドメルドだ。対話型AIを開発して企業に提供している。同社の技術を使えば、スマホやテレビに話しかけて、音楽や動画の検索・再生、航空券の手配、ネット通販での商品の注文などができる。

 「あらゆる企業がAIを使って顧客と接する検討を始める必要がある」。マインドメルドの幹部が語る。「10年後、人びとはウェブサイトを見ず、アプリのダウンロードもしないかもしれない。AIによる自然な対話形式でコミュニケーションをとるだろう」

 米調査会社のガートナーは、20年までに顧客と企業のやりとりは85%が「人間抜き」になると予測する。対話型AIの普及が背景だ。この流れをリードするマインドメルドへの評価は高く、米インテルやグーグル、韓国サムスン電子などが出資者に名を連ねる。

 大きなうねりのなかで、10年目のiPhoneはどこへ向かうのか。デジタルアシスタントの「シリ(Siri)」の進化は。画面に並んだアプリをタッチする、初代から続く操作スタイルはついに変わるのかどうか。

 あるアップルOBが言う。「もしも変わらないなら、がっかりだ」。同感である。
(編集委員 村山恵一)[日経電子版2017年1月6日付]

「日経College Cafe」のお勧め記事はこちら>>