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からくり書き時計、誕生(6)これからも全力でバカをやって
人を感動させたい

鈴木完吾 authored by 鈴木完吾東北芸術工科大学プロダクトデザイン学科2016年卒
からくり書き時計、誕生(6) これからも全力でバカをやって<br />人を感動させたい

 こんにちは! 鈴木完吾です。前回は「書き時計」がバズった時の話をさせていただきました。今回は最終回として、展示での出来事とその後についてお話ししていこうと思います。よろしくお願いします。

「書き時計」の一般公開

     僕がツイッターにて「書き時計」をアップしたのは卒業制作展が始まる前日のことでした。なので、初日から例年以上のお客さんやメディアに来場していただくことになりました(来場者は例年の3倍でした)。最初は展示会場の通路に設置していたのですが、あまりにも動線を妨げることになったので会場の一番奥にぽつんと設置されることになりました(それでもたくさんのお客さんで溢れていました)。

     展示をして率直に感じたのは、興味津々だったのはご年配の方が多いという印象でした。「書き時計」は電気を使わないからくり時計のため、一見してわからないような構造体であっても、その動きの過程が目に見えて「わかってしまう」ことがポイントだったのでしょうか。いずれにしても、幅広い年齢の方に見ていただけたことを嬉しく思います。

     また、展示中は「木材の種類は?」「錘の重さは?」「使った工具は?」等の質問が飛び交い、「書き時計」の隅々まで興味を持ってもらっていたけていることがわかりました。僕もプレゼンテーションを複数行い、来場者に満足していただけるよう努めました。

    会場の一番奥に設置された時計

    東京では30回もプレゼンテーション

     山形での卒業制作展中に東京での展示も決まりました。東京展は本来、美術科のみの展示でしたが、東京でも展示してほしいとの声が多くあり、急遽展示が決定したのです。東京での展示の最初のプレゼンテーションは、始まるまでとても怖かったのを覚えています。人前で話すのが得意でないことと、都会の人が怖いと感じていたからです。

     しかし、始まってみればそういうことはありませんでした。山形でプレゼンテーションの回数をこなしたことと、「ハイテク」が溢れた都会の人も、この「ローテク」の良さに興味を持って来場していたことがわかったからです。東京では計30回ほどプレゼンテーションをしましたが、どの時間も多くの人に見ていただき、とても貴重な経験をすることができました。

     地元のニュースでは僕の「書き時計」を大きく取り上げていただいて、地方の大学というハンデを払拭する手助けができたと思います。むしろ、自然を身近に感じ、のびのび過ごせた大学の4年間がうまく自分に作用してくれたのだと思っています。また、展示を通して、家族や地元の方々、中学や高校の恩師、先輩や後輩、行きつけのラーメン屋の店長にも、自分の4年間の集大成を見せることができました。基本的には自分が卒業するために作った「書き時計」でしたが、ここまで多くの人に評価していただくと、本当に作ってよかったと実感します。

     ですが、やはり「書き時計」で一番影響を与えられたのは自分自身です。僕自身、今までも課題制作や自主制作はしてきましたが、あまり自信を持てるものが作れませんでした。「からくり」に出合って、独学し、卒業制作で「書き時計」を作ることができてから、やっと自信が持てるような世界を見つけられたような気がします。あまり競争相手がいない世界ですが、これからもこの世界を走っていきたいと思います。

    多くの人が「ローテク」の良さに興味を持ってくれました

    書き時計と私の今後

     その後もいくつかの展示を終え、現在は母校(東北芸術工科大学)に常設展示されています。「もう少しで完成しそう」と言っていましたが、社会人となり山形を離れたこともあり、現在もそのままの状態です。あの「書き時計」は、いわゆるプロトタイプですので、手を加えるよりも残したまま、新しく「書き時計」を作ったほうが良いと考えています。

     また、今後はその「書き時計」を超えられるようなものづくりをしていきたいと思っています。つい先日、「書き時計」の後継機となる「文字書き計時器」を制作しました。時計をタイマーに変えた、「書き時計」を小型化したものです。見ていただくと、僕が「書き時計」を通過点として捉えているのがわかるはずです。

    真面目なことは得意ではない

     制作する度に「今後はどういうものを作るの?」という質問をよく受けます。それは、僕にだってわからないことです。ただ、真面目に考えて行き着くようなものは僕は作らないんじゃないかなと思います。真面目なことがあまり得意ではないので、そういった類は僕以外の人間か、未来のAIがこなしてくれればいいとさえ思っています。なので、僕は僕なりに、人が感動してくれるような、全力でバカをやって、制作を続けていきたいと考えています。その過程で遠回りにでも人の役に立てればいいなと思います。

    「書き時計」に魅了された後輩たちには是非とも「書き時計」を越えて行ってほしいと思います。よく寝てよく考えれば、きっといいものができるはずです。がんばれ!

    以上で「書き時計」のお話を終わりにします! ありがとうございました。

    後継機「文字書き計時器」