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[ skill up-自己成長 ]

「僕はコンプレックスの塊だった」
他人と違う道選んで勝つ
タレント、パトリック・ハーランさん

「僕はコンプレックスの塊だった」 他人と違う道選んで勝つタレント、パトリック・ハーランさん
東京工業大学提供

 「パックン」の愛称で知られるタレント、パトリック・ハーラン氏(46)。米ハーバード大学を卒業し、知性と明るい性格が持ち味だが、子どものころは経済的に困窮しコンプレックスを抱えていた。人生を切り開く原動力となってきたのは人とは違う道を探る前向きな姿勢だ。

 とにかく落ち着きのない子どもだったな。好奇心いっぱいで体を動かすのも人と話すのも大好き。大人ともすぐ仲良くなれるので、様々な仕事を手伝った。サーカスの屋台係をしたり、獣医の助手をしたり。将来の夢は弁護士、建築家、天文学者、政治家、役者......。2週間おきに変わっていた。飽きやすいんだ。

 勉強も好きだった。宿題はゲーム感覚で、どうやって付加価値をつけようかといつも考えていた。負けん気は人一倍強かったけれど、負けるとすぐ泣いていた。ハーバードは入れてくれたから入っただけ。冗談じゃなくて、他の大学は落ちたんだよ。米国の大学は選考基準が多様なんだ。

卒業が近づいても大学院への進学も就職も面倒くさかった

 4年生が終わる頃には燃え尽きていた。小学校から数えたら勉強してきた期間は長い。もうこれからはどこかに行って別の何かをしたいという気持ちがあった。一度しかない青春を大学院入試や就職活動に費やしたくないとも思っていた。

 それに当時、僕はコンプレックスの塊だった。ずーっと「ど貧乏」だったから。10歳から18歳までは新聞配達をしていた。朝3時半に起きて6時半までに400軒以上配る。7時すぎからは授業。ほぼ年中無休だった。

 学校には裕福な子がたくさんいて見せつけるようにいい車に乗ってくる。僕が質素なお昼を食べている横で、豪華な弁当を半分残して捨てる人がいる。僕に「食べる?」とも聞かないで。これは経済的ないじめだと思ったことは何度もある。

 学費ローンを完済するまでは必死で、いつ破綻するかわからなかった。もし就職面接で経営者に趣味のヨットの話をされても僕は受け答えできない。そんな引け目があった。のどから手が出るほどお金がほしいくせに「お金に走るなんて薄っぺらい」とも思っていた。

人と同じフィールドで闘うと負ける。だから...

 例えばアメフトは父親が試合に連れて行ってくれたり、高い防具を買ったりしないとできない。僕は両親が離婚して父とは離れて暮らしていたし、お金もなかった。そこで選んだのがバレーボール。競技人口も多くないからすぐ活躍できた。

 モテたくても高い洋服は買えないから個性で勝負した。高校3年生の一年は半パンで過ごした。一年間靴を履かなかったこともある。コロラドの冬はものすごく寒いけど、面白いヤツって思われようとしていたんだ。

 結局、大学卒業後は日本にいる友人に誘われて福井県に来た。自分が入っていた合唱団のツアーで飛行機代が出たし、友人の所に居候もできる。お金をかけず違う国で暮らすことに挑戦できる道をみつけたんだ。日本語は来日してから独学した。その後、上京してお笑いコンビを組んだことで今の僕がある。

 来るものは拒まずの精神でやってきたら、仕事は大学講師まで広がった。忙しい時もあるけど、10代の頃の自分と比べたら全然楽。いい経験だったと思う。「パックン」という仕事は一大プロジェクトみたいなもの。仕事の技を磨き続けて、20年後には「いぶし銀」と言われるくらいになりたいね。

格差への「開き直り」を ここからは自分次第だ

 今の米国の状況を「僕の時代より経済的な流動性がなくなっている。アメリカンドリームをつかめるのはほんの一握りという仕組みになってしまっている」と憂う。トランプ大統領の政策を見ても「彼を支持した人たちが期待する格差是正につながるとは思えない」。

 日本でも格差が問題になりつつある。「お金がないと毎日不安で楽しいことも楽しくなくなるときがある」。パックンはそう語りつつ、経済的に困窮する若者には「開き直りが必要」と助言する。それは「どうせこれが私の人生」と開き直れという意味ではない。「今は苦しい状況にいても、これから先は自分次第」と思うことだという。

 「自分はかわいそう」と思い続けるより、前を向いてほしい。そのためには自分が持っているものを5つ挙げてみることを提案する。「若さ、健康、友達、お母さんに愛されてる、安くておいしいパン屋を知っているとか、どんな小さなことでもいい。そこでまず幸せを感じよう。そして前を向こう」と呼びかけた。
(福山絵里子)[日本経済新聞朝刊2017年2月6日付、「18歳プラス」面から転載]

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