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オバマ、イバンカ、ベゾス…
ワシントン豪邸街を歩く

オバマ、イバンカ、ベゾス…ワシントン豪邸街を歩く

 米首都ワシントン市内の高級住宅地カロラマがにわかに脚光を浴びている。20日に退任したオバマ前大統領のほか、トランプ新大統領の長女イバンカさん、アマゾン創業者のジェフ・ベゾス氏らがそれぞれ徒歩圏に新居を構えた。各国の大使館が多く、以前から落ち着いた街並みとして知られていたが、なぜこれほど人気を集めているのか。街を歩いてみた。

 オバマ氏の新居は、日本大使館から歩いて5分ほどの閑静な住宅街にある。訪れてみると、ちょうどリフォームの真っ最中だった。多くの作業員が一階のガレージから荷物を運び入れていた。

 近づいてみると、体の大きな男性が声をかけてきた。「ここは私邸だ」。写真を撮っていいかどうか尋ねると、道の反対側から撮影するのは禁じられていないという。ただ「作業員は顔を撮られるのを望んでいない」と付け加えた。

リフォーム中のオバマ前大統領の新居

 「米大統領警護隊(シークレットサービス)ですか?」と男性に聞くと「職務は公表しない」として「近くに来た人にお話をしているだけだ」とだけ答えた。指示に従って道の反対側に行くと、同じように2組の報道陣が写真や映像を撮っていた。いずれもロシアの報道機関の名前が入ったカメラやマイクを持っていた。

 米不動産サイトや報道によると、新居は1928年築で、床面積は760平方メートル。9つの部屋があり、2011年に改築したばかりだ。気になる値段だが、14年に529万5千ドル(約6億円)で購入されたとの記録がある。家主はクリントン元大統領の報道官と、雑誌編集者の夫妻。家賃は推定で月2万2千ドルという。

米首都ワシントンの「カロラマ」には著名人の邸宅が集まる

 不動産サイトに掲載された以前の内装写真はクラシカルで落ち着いた雰囲気だ。各部屋には暖炉があり、絵画や装飾品が並ぶ。台所は大理石張りの大きなオープンキッチンで、地下にももう1つの台所がある。裏庭には広い芝生と、屋外用のソファなどが設置されている。ガレージは車2台分で、外側には10台ほどの車がとめられるスペースがあり、護衛の車が待機するのに十分な広さだ。

オバマ氏、次女の高校卒業までワシントンに滞在

 退任した大統領は地元に戻るのが通例で、ワシントンにとどまるのは1921年のウィルソン元大統領以来。ウィルソン大統領記念館もカロラマにある。オバマ氏は次女のサーシャさん(15)が近くの女子高を卒業するまでワシントンに滞在する意向で、長女マリアさん(18)は今夏からボストンのハーバード大学に進学するため、ワシントンには親子3人と飼い犬で住むことになりそうだ。

 オバマ氏は大統領退任後、年金生活に入る。米CNNテレビによると、今年の年金額は20万7800ドル。シークレットサービスの警護は生涯続き、旅費や医療保険、事務所経費などの手当もある。オバマ氏は新居とホワイトハウスの中間にあるウエストエンド地区にオフィスを構える計画だという。オバマ氏はシカゴに自宅を持つほか、出身地のハワイなどに別荘があると伝えられている。

 米不動産情報サイト「ジロー」によると、カロラマの不動産市況はリーマン・ショック後は堅調に上昇しており、16年の平均価格は前年比2.4%増となった。17年は3.3%増とさらに伸びると予測している。オバマ氏の転居で、相場はさらに上がる可能性もある。

イバンカさんは新居に引っ越し中

 オバマ氏新居の周辺も歩いてみた。都心部に近いこともあり、巨大な敷地の家はあまりない。郊外では門から入り口が見えないような住宅もあるが、カロラマはこぢんまりした家も多い。ただ過去の取引履歴を見ても、4、5部屋程度の家で最低300万ドルは必要で、購入できる人は限られそうだ。

 目立つのは外国の旗が立つ家だ。大使館や大使公邸などが多く、外交官ナンバーの高級車が駐車している。車を磨いていた運転手らしき男性に聞くと「他にも有名人の家がある」と教えてくれた。

 彼が指さしたのは、オバマ氏の新居から3分ほどにある白壁の家。ここにはトランプ米大統領の長女イバンカさんと、夫ジャレッド・クシュナー氏が550万ドルで購入したと報じられている。面積640平方メートル、6部屋とオバマ邸より若干小ぶりだが、それでも広い。ちょうどこの日はイバンカ邸も引っ越し中で、業者が荷物を中に運び込んでいた。

 内装写真によると、オバマ邸よりモダンなインテリアが目を引く。家具はグレーやアイボリーなど淡い色調が多いようだ。庭はオバマ邸より狭いが、部屋は南に面し、日光が差し込む昼間は気持ちよさそうだ。

アマゾン創業者ベゾス氏の家はワシントンで最大

 イバンカ邸からさらに5分ほど歩くと、ひときわ大きな建物が目に入る。アマゾン創業者のベゾス氏が昨年10月に2300万ドルで購入したと報じられた家だ。面積2500平方メートルとワシントンで最も大きい住宅とされ、以前は織物博物館として使われていた。以前の写真によると、宮殿のように大きな吹き抜けがある。

 建物は改装工事の準備中のようで、工事業者の車が止まっていた。入り口に張り出されていた書類を見ると、歴史的建造物が工事許可を得るために必要な住民説明会の案内だった。

 犬を散歩させていた住民にも話を聞いてみた。キャスリン・ケンダルさんはカロラマで生まれ、40年以上にわたって「街が変わっていく様子を見てきた」という。オバマ氏らがご近所さんとなることは「歓迎です」と誇らしげだ。「昔はこれほど政府の人は住んでいなかった」というが「非常に静かで、住むのに適した場所であることは以前から変わらない」と話す。

 ベゾス氏は西海岸シアトル在住だが、首都に本社を置く米紙ワシントン・ポストのオーナーでもある。トランプ氏に対しては当初は批判的で、選挙期間中に「火星にロケットで打ち上げた方がいい」と嘲笑し、トランプ氏から「ベゾス氏はメディアの権力を利用し反トラスト法違反をしている」と非難を浴びていた。

 しかし当選後にベゾス氏は態度を一転、昨年12月にはトランプタワーで米大手企業首脳とともにトランプ氏と会談し「革新的政権になりうる可能性に興奮している」と絶賛した。ワシントンに新居を購入したのは、トランプ政権との接点を増やそうという期待があるのかもしれない。新居の大広間は200人を招待してパーティーを開ける規模だという。
(ワシントン支局 川合智之)[日経電子版2017年1月27日付]

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