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搭乗券や出前…
LINE、企業が使いはじめた

搭乗券や出前…<br />LINE、企業が使いはじめた

 LINEが2016年7月15日に株式を上場してから半年たった。この間、LINEは対話アプリをビジネスの世界にも普及させている。航空機の搭乗券や宅配便の配達日時の変更、飲食物の出前の受け付けなど、アプリの使われ方は様々だ。

搭乗券+旅情報

 羽田空港や新千歳空港に行くと、スマートフォン(スマホ)の画面をかざして搭乗口に向かう人の姿を目にする。スマホにはLINEの対話アプリが入っており、行き先と座席番号、QRコード(2次元バーコード)が表示されている。AIRDO(エア・ドゥ)が16年10月に始めたチケットレスサービスだ。

 「(競合より)1歩も2歩も進んだサービスを提供しないと選んでもらえなくなる」。エア・ドゥの営業企画グループの三松貴文シニアスタッフはLINEと提携した理由を説明する。

 エア・ドゥがLINEと組んだのは、紙のチケットを持つ煩わしさをなくすだけではない。

 16年12月20日から始めた「旅ナビ」。機内に置いている情報誌などで提供していた北海道の飲食や宿泊といった情報をLINEのアプリで得られるようにした。利用者は「見る」「食べる」「体験する」「お土産」といったジャンルを選ぶ。その上で都市を選ぶといくつかのお薦めリストを提示する。興味があるものを選ぶとその場所の情報が出てくる仕組みだ。

 旅行をしたいと思う人たちに旅先として北海道を選んでもらい、エア・ドゥに乗ってもらうようにする。それには役立つ情報をより多くの人に1対1で提供する必要がある。エア・ドゥはLINEの対話アプリを通じてその実現を目指している。エア・ドゥとLINEでつながっている「友だち」の人数は開始3カ月で約40万人に達した。LINEのアプリで搭乗した人は1カ月間でのべ約5000人になる。

 スマホの普及と共に、多くの企業が自社のアプリを登場させた。だが、その大半は膨大な数のアプリの中に埋没してしまっている。ダウンロードされないか、されたとしてもほとんど利用されていない状況に置かれているアプリは多い。

 そうした中でLINEのアプリは際だった強さを見せている。国内の月間利用者は約6400万人。しかも1日に1回以上、利用する人が約5000万人いる。利用者の伸びは頭打ちになっているとはいえ、国内でこれだけ膨大な数の消費者と日常的に接点を持っている企業はLINE以外には見当たらない。

 LINEは16年3月にアプリの技術仕様を公開し、企業がLINEのアプリを通じて自社のサービスや情報を提供しやすくした。アプリの利用者はLINEに登録した情報を用いて企業のサービスを予約・購入できる。現在、LINEのアプリと連携している企業は100社を超えている。

 LINEは企業から月単位で一定の料金を徴収する。さらに、個別に送信したメッセージの数に応じて課金をしている。企業と消費者との関係が密になり、配信メッセージ数が増えるほどLINEの収益に貢献する。

再配達コスト減

 ヤマト運輸は利用者がLINEのトーク画面を使い、荷物の配達日時の変更や再配達の連絡を会話をするような感覚でできるようにしている。宅配便会社にとって負担が大きい、再配達コストの低減につなげている。

 飲食物宅配サービスサイト「出前館」を運営する夢の街創造委員会は、16年7月からLINEの対話アプリで注文から決済までできるようにした。出前館には約1万4000の飲食店が登録されており、LINEのアプリを通じた注文金額は半年間で2億円を超えた。

 消費者調査でもLINEは存在感を高めている。LINEにはアンケートに協力する可能性が高い利用者が約820万人いる。博報堂と共同で若年層を対象にした調査研究プロジェクトも立ち上げたほか、16年11月には消費者調査の仕組みを外部提供し始めた。

 LINEのアプリを使っていた若者が就職し、LINEを仕事の連絡手段にしている人は珍しくない。一方で、情報漏洩を心配する声もある。

 そこでLINEは兄弟会社のワークスモバイルジャパン(東京・渋谷)と共同でセキュリティーなどを強化した「ビジネス版LINE」ともいえるサービスを近く始める計画だ。「ネーティブアプリ(企業独自のアプリ)、電話、FAX、電子メールをLINEが置き換えていくことになる」(LINEの田端信太郎上級執行役員)

 LINEの稼ぎ頭はゲームや漫画といったコンテンツだった。だが、16年4~6月期以降、企業向けビジネスを含む広告の売上高がコンテンツを上回っている。

 いちよし経済研究所の納博司首席研究員は「(企業向けビジネスに代表される)外部サービスとの連携が中長期の成長にとって重要になる」と話している。ビジネスのインフラとしての地位を築けるかが評価の分かれ目となりそうだ。

消費者との対話にも活用


 LINEでの対話に人工知能(AI)を組み込み、コールセンター業務を担う取り組みが始まっている。
 アスクルは16年11月から個人向け通販サービス「ロハコ」の顧客対応にLINEを取り入れた。これまではウェブブラウザー上でAIを使った自動応答の仕組みを取り入れていたが、「会話の履歴が残る仕組みにできないか」(カスタマーサービス&エンゲージメントの蛯原一朗部長)とLINE上での対応を追加した。
 「LOHACOマナミさん」という架空のキャラクターとLINEで「友だち」になると、トーク画面で注文方法や領収書、配送料などを問い合わせできる。最初はAIが対応するが、解決しなかった場合はトークの相手先をコールセンターの担当者に切り替える。
 問い合わせの約4割はマナミさん(AI)で完結している。人での対応に切り替わったときも、それまでの会話内容を画面上ですぐに確認できるため、話が円滑に進みやすい。会話上でスタンプを使うこともあり、「顧客との距離感が近づいた」(蛯原部長)。
 LINEのAIはBEDORE(東京・文京)の汎用型対話エンジンを活用している。質問内容を理解する機能と深層学習(ディープラーニング)機能も搭載しており、質問と回答の内容を検証して精度を高めている。
 コールセンターでは、電話での問い合わせが営業時間外だったり、混雑しているときは、利用者に電話をかけ直してもらうのが一般的だった。ただ、いつ電話すればオペレーターとスムーズに話ができるのかは指示できず、利用者の不満の原因の1つになっていた。
 LINEは相手とやり取りするなかで、相手がLINEのIDを持っていれば、それとひも付けてメッセージを送れる。LINEでの対応に誘導したり、混雑が緩和したことを知らせる。
(企業報道部 堤正治)[日経産業新聞1月16日付、日経電子版から転載]

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