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[ liberal arts-大学生の常識 ]

「シェア経済」どんな仕組み?

「シェア経済」どんな仕組み?

 余っているモノを貸し借りする 「シェア経済」。でも「カーシェアリング」と「レンタカー」、どう違うかあなたは答えられますか? イチ子お姉さんとからすけが話しています。

 イチ子お姉さん 自宅の部屋を宿として貸す民泊(ぱく)ブームのように個人間の貸し借りが増えているわ。シェア経済(シェアリングエコノミー)って言うのよ。

 からすけ シェア? 聞いたことのない言葉だけど、余ってるモノを貸し借りできれば、無駄(だ)がなくなるよね。お金の節約にもなりそうだね。

使わないモノ 貸して稼ぐ

 からすけ 民泊は知ってるけど、それ以外ではどんなのがあるの?

 イチ子 例えば個人が自家用車を使ってタクシーのように行きたい場所へ人を運ぶサービスがそうね。スマートフォン(スマホ)を使って車を呼ぶと、指定した場所まで迎(むか)えに来てくれるわ。ウーバーという会社が手掛(が)けているの。民泊もウーバーも米国生まれのサービスで、日本では2014年ごろから始まったの。それに併(あわ)せてシェア(共有)経済という言葉が広がってきたわ。

 からすけ 面白そうな仕組みだね。

 イチ子 「車で旅行に行くので次の週末は自分の駐(ちゅう)車場が空いている」とか「明日の夕方、誰(だれ)かに子守をしてほしい」といった人がいるとするでしょ。その時間だけ駐車場を借りたいという人を紹介したり、空き時間のある保育のプロを仲介したりといった会社があるわ。休みの日の店舗(ぽ)の軒(のき)先で他の人が弁当を売っていいよと貸し出したり、日本に住む外国人が自国の料理を教えたり。楽しそうよね。20年度には国内の市場規模が600億円に達するという試算もあるわ。

 からすけ でも、いろんな人が共同で使うなら、レンタルと同じ。何が違(ちが)うの?

 イチ子 レンタカーだと専門の会社が車を持っていて、そこから使いたい人が借りるでしょ。今、新たに出てきているシェア経済という仕組みは、個人と個人の間の貸し借りが基本なのよ。会社は貸し手と借り手を仲介する場を提供しているのが特徴(ちょう)だわ。実際には車を持っている個人と車を使いたい個人が契(けい)約し、会社に仲介(かい)の手数料を払(はら)う仕組みよ。

 からすけ どうしてこんなサービスが増えてきたの?

 イチ子 世の中が低成長になって、収入が伸(の)びない時代になってきたよね。そうなると各家庭では出費を絞(しぼ)らなきゃいけないでしょ。昔のような大量生産大量消費の時代は「消費は美徳」だったけど、この先は人口が減り、モノ余りやモノ離(ばな)れの時代になるの。

 からすけ うん、それで。

 イチ子 そうはいっても必要なモノやサービスはあるわね。だったら、みんなが今持っているモノや能力を、お互いに必要なときにだけ使えるようにしたら、効率的だし出費を抑(おさ)えられるという発想が生まれたの。みんなで共有しようというわけ。「自分のモノは自分で所有」という発想から、「自分のモノは他人と分かち合う」という発想への転換(かん)ね。

部屋や車も ネットが個人を仲介

 からすけ そういえば我が家では無駄な物を買わなくなったよ。でも、僕(ぼく)は最近スマホを買ってもらったけど。

 イチ子 それも関係あるの。スマホがどんどん普(ふ)及して、どこにいてもインターネットを使えるようになったことが影響(えいきょう)しているわ。「モノが余っている」という人と、「モノを借りたい」という人同士がインターネット上で簡単に出会えるようになったの。スマホには全地球測位システム(GPS、キーワード)の機能があるから、お互いの位置情報を交換(かん)して探しあえることが以前より楽になったしね。

 からすけ でもネットで出会うだけだと、問題が起きたりしないの?

<キーワード>
 GPS 宇宙にある衛星の電波などを基に、位置を測定するシステム。ほとんどのスマホに装備されている。
 シェアリングエコノミー協会 2016年1月発足、東京・品川にある業界団体で、関連企業を含め約130社が参加する。

 イチ子 シェア経済がこれからどんどん広がるかというと、まだいろんな問題があるのよ。例えば、ホテルや旅館などの宿泊業の場合は法律に基づいて営業しているけど、民泊はそうではないの。部屋を貸したけど家具を壊(こわ)されたとか、宿泊者が夜中に騒(さわ)いだりとか一部でトラブルが起きてるよね。そんなときにどうするか、法律や、なんらかの基準がないと解決が難しくなりがちだわ。

 からすけ トラブルに巻き込まれるのは嫌(いや)だね。

 イチ子 一番大切なのは安全に、安心して利用できるかという点ね。知らない人同士だから、相手をどうやって信頼(らい)すればいいのか難しいよね。貸す人と借りる人がお互いを評価し、満足いく貸し借りだったか、過去の内容を他の利用者が分かるような仕組みを取り入れているサービスもあるわ。シェア経済の業界団体、シェアリングエコノミー協会(キーワード)は17年度から、優良業者の認定制度を始める準備を進めているそうよ。

世代越えたコミュニティー広がる

渋谷教育学園渋谷中学高等学校の真仁田智先生の話 コンピューターが発達し、インターネット環(かん)境が整った時代に生まれ育った人たちを、「デジタル=ネイティブ世代」と呼びます。この世代はデータ化された情報の「共有」や、SNSを通じて人と人がつながる活用方法と便利さも知っています。
 デジタル技術普及(ふきゅう)前の「昭和世代」は、高度経済成長期の大量生産と大量消費の時代を経験しています。昭和世代にとって家や車などのモノの「所有」は、豊かさの指標でした。
 デジタル技術によって個人間での所有物の共有が可能になる「シェア経済」は、今までの商品市場とは異なる「経済的コミュニティー」を広げていきます。その実現には信用や規制緩(かん)和も大切ですが、世代の違(ちが)いを越(こ)えて互(たが)いの知恵や知識を共有できるかが鍵(かぎ)になるはずです。私は新たな社会の結びつきを生む「学びの場」が必要になると考えています。

[NIKKEIプラス1 2017年1月21日付、日経電子版から転載]

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