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[ career-働き方 ]

さあ準備 会社デビュー
体や心 備えは万全?

さあ準備 会社デビュー 体や心 備えは万全?

 社会人になると生活環境が激変します。人生で最も大きな変化といっても過言ではないでしょう。「変化に体や心が負けてしまったら」と考えると不安になりますが、皆さんの先輩も歩んできた道だけに、備え方もあるはずです。医学とフィジカルの両面で専門家に聞きました。

 病気になったビジネスパーソンを数多く診てきた医師の伊藤隆・東京女子医科大学東洋医学研究所クリニック所長(教授)は、心身ともに健康で働き続けられるためには、いくつかのポイントがあると話します。

学生から社会人へと環境激変への対策は

 入社後しばらくは神経が興奮状態にあり、疲労感を覚えにくく、がんばりすぎてしまいがちです。また、毎日定時に起きて出社する規則正しい生活に慣れるだけでも半年はかかります。入社直後から半年くらいは、睡眠をよく取るように心がけることが大事です。

いまのうちにできることは

千葉大学医学部卒業。富山医科薬科大学附属病院、鹿島労災病院副院長などを経て、2015年4月から東京女子医科大学東洋医学研究所クリニック所長。日本東洋医学会理事。漢方専門医・指導医、産業医など。

 社会人が学生と大きく違うのは「規則正しい生活に堪えられる」という点です。睡眠時間が不規則な人は、入社までに夜12時前には床に入り朝は同じ時間に起きて生活のリズムを整えておくと、入社後の心身の負担がかなり減るでしょう。

 食事も気をつけてほしい。お菓子やジュースなど甘い物が好きな若者が多いが、砂糖を摂(と)り過ぎると胃腸を痛め、持続力や気力が落ちてきます。

糖分過多以外に気をつける点は

 鉄分不足です。胃腸の働きが弱いと消化が悪い鉄分の多い食事を避けがちになります。特に女性は毎月の生理でただでさえ鉄分が不足しがち。貧血で朝起きづらい、だるいといった症状が出ます。糖質を控え、胃腸を丈夫にして鉄分を意識した食生活へ変えましょう。鉄分はレバーや赤身の肉のほか、貝類、魚、大豆、野菜、海藻にも多く含まれています。

入社後の「五月病」も心配です

 会社の業務がわかってくると興奮がおさまってきますが、今度はメンタルヘルスの不調が出やすくなります。その一つがゴールデンウイーク明け頃に無気力状態になってしまう「五月病」です。

 メンタル面での不調には大きく2つのタイプがあって、1つは真面目で優等生だった学生が社会人になり、周囲に順応しすぎて、自分を見失い、うつ病を発症してしまうタイプ。

 もう1つは自分のやり方に固執して、会社のルールにあわせることができずに不調になるタイプ。うまくいかないと「上司が悪い」などと他者を批判しがちで、適応障害や新型うつ病になりやすいです。

対処方法は

 優等生タイプを自覚している人は周りに対していい顔をしすぎないように心がけてください。つき合いはそれなりでよいのです。自己流が強いタイプは、他人のやり方を学ぶ姿勢を意識してみるといいですよ。

 つらくなったら「何のためにこの会社に入ったのか」と入社動機を思い出してほしい。仕事が自分のためになることを確認できることが健康でいられる秘訣です。これが、多くの病んだ社会人を診察してきた私なりの結論です。会社の上司も、若者は自分を変えることができ、成長するのだという認識で若手社員と接してほしいですね。

 西沢実佳さんは、スポーツクラブなどで老若男女の健康をサポートするなか「自分の不調に気付かず不調を悪化させているビジネスパーソンが多い」と指摘します。

不調に気付けるようになるためには

ピラティスやダンスなど5歳から90歳を対象に、10年間で約1万人の個人を指導。米ピーク・ピラティスフル認定トレーナー、日本ホリスティックコンディショニング協会フィジカルコンディショナーなど。

 いまのうちに、悪い状態といい状態の違いを実感できるようにしておいてほしいですね。

 わかりやすいのは「呼吸」。疲れたりストレスを受けると呼吸が浅くなり、酸素不足で集中力に欠け、いい眠りができません。不安な気持ちになるなどメンタル面にも影響しますが、それが呼吸からきていると自覚している人はなかなかいません。呼吸機能を改善するエクササイズで深呼吸ができるようになると、いかに自分の呼吸が浅かったかがわかります。

呼吸機能を改善する「横隔膜アクティブ呼吸」

 両手にタオルを持ち、丸めた布団やバランスボールに腕を伸ばしながら背中をそわせます。5秒で息を吸い、10秒で息をはく(写真(1))。次に小さなボールをかかえて背中を丸めながら5秒で息をはき、10秒で息を吸う。それぞれ3回行ってみましょう。
軽く長い呼吸ができるようになり、体の様々な機能を無意識に調節している自律神経も整います。内臓の働きがよくなり、うつうつとした気分をコントロールしたいときにも役立ちます。

姿勢改善の「プランク」

 スマートフォン(スマホ)の操作で猫背な若者を多く見かけます。入社してパソコンで仕事するようになると、前かがみに拍車がかかり、血液の流れが悪く、疲れやすくなるので、今から体幹を鍛え姿勢を整え、疲れにくい体を作りましょう。

 うつ伏せになり肘とつま先を支点にして体を浮かせます。頭からかかとまでが一直線になるように。へそに力を入れておなかをへこませることがポイントです(写真(2))。

下半身強化の「シングルレッグスクワット」

 便利な世の中で体を動かす機会が減った若者の体力が落ちているのが気になります。特に下半身の筋力の弱さ。下半身がぐらついていると肩をすくめてバランスを保とうとするなど体全体の乱れにつながります。

 両手を胸にあて椅子に座った状態から片足で立ち4つ数えて中腰に(写真(3))。さらに4つ数えて直立した後、同じテンポで中腰から椅子に戻ります。背中が真っすぐな状態のまま息を止めず、ぐらつかないように足裏で踏ん張ることが大事です。左右で3回ずつ。むくみ予防にもなります。

ストレスがたまらない体作りには

 前出の下半身強化など、バランスを取るエクササイズが有効です。ストレスを受けると意識が他人や周囲にいきがちで、自分の不調に気付かず、いっそうストレスを受けやすくなります。バランスをとろうと集中することで自分自身に意識が向き、ストレスのたまり方が違ってきます。

 社会人になっても、一日のうち1回でいいので、自分の体に向き合う時間を持てるといいですね。通勤や休憩時間を利用して。

 仕事では頭や心が疲れることが多いものです。あえて体を動かして頭と体の疲れ方のバランスを取ってみましょう。寝だめをするよりも軽い運動で血液循環を良くし効果的に疲労を回復させる「アクティブレスト」がお勧めです。
(編集委員 木村恭子)[日本経済新聞朝刊2017年2月22日付、「18歳プラス」面から転載]

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