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[ career-働き方 ]

大学生が見たカイシャ(4)国学院大学生が
時事通信社を訪問した

authored by 国学院大学学生キャリアサポーター
大学生が見たカイシャ(4) 国学院大学生が時事通信社を訪問した

 私たちの身の回りには、国内外の多様な情報が溢れています。そうした中、正確で信頼のおける情報を収集し、発信している通信社。日本には2つの通信社がありますが、そのうちの1つが時事通信社です。

 「大学生が見たカイシャ」第4回目は、時事通信社元記者であり、現在は総務局総務兼人事部長の渡辺知毅さんにお話を伺いました。

―報道機関を取り巻く状況について教えてください。

時事通信社(東京・中央区)

 皆さんもご存じのように若い人の新聞離れが進み、新聞の発行部数が減少しています。原因としては、やはりインターネットやスマートフォンなどの影響が否定できないでしょう。通信社は新聞社にニュースを配信しているわけですから、こういった状況の変化は通信社にとっても無関係ではありません。

 ですが、各社は時代の急速な変化に対応しています。これまで培ってきたノウハウや人材、ネットワーク、経験を生かして、インターネット向けのニュース配信を強化し、電子版の発行にも取り組んでいます。また、経営基盤という面では、不動産関係など事業を多角化している会社も少なくありません。

「ニュースの総合商社」として

―報道機関のなかで時事通信社はどのような強みを持っていますか。

 時事通信社は大きく分けて3種類のニュース配信を柱としています。マスメディア、実務情報、ネットです。まず、マスメディアへの配信ですが、主な配信先の1つは新聞社で、新聞製作のための記事や画像を配信しています。そのほかに、行政機関や金融機関などに専門的な実務情報を提供し、インターネットでニュース配信をしています。ありとあらゆるニーズに応えているので、分かりやすく「ニュースの総合商社」と説明することもあります。また、海外の報道機関とも契約を結んでいるので、国内にとどまらない情報収集力と発信力があります。

 時事通信社は2015年に創設70周年を迎えました。これが「70年史」になります(下の写真を参照)。時事通信社の強みは、扱う情報の「多様性」や発信する媒体の「柔軟性」です。これからの時代も、引き続きこの強みを生かしていきます。

総務局総務兼人事部長の渡辺知毅さん(左)と国学院大学・早川美月

―これからどのようなことに力を入れていきたいですか。

 新しいニーズを見つけられるような情報収集に力を入れていきたいですね。今まで見向きもされなかった分野やテーマに有望な兆しが見えてくると、価値やニーズが自然と付随してきます。ビジネス関係のニュースでも新たな分野が広がれば広がるほど、新たなニーズが生まれますし、ネット向けの情報発信もまだ大きな可能性を秘めていると思います。

 専門的な実務情報や金融機関向けのマーケット情報は、専門家の日々の仕事に直接関わるものです。若者の新聞離れという厳しい状況にありますが、報道の重要性、役割が大きいことに変わりありません。コスト的に多少厳しい面はあっても、報道機関として社会的責任を果たさなければなりません。

―会社として特徴のある制度を教えてください。

 時事通信社は株式会社ではありますが、株の公開はしていません。社員が希望すると株を買うことができる「社員持ち株制度」を採用しています。この制度の特徴としては、株を公開していないので、外部の株主から影響を受けることがないということが挙げられます。報道機関としての自主性を守ることもこの制度を採用している理由の1つです。

 社員は会社に雇用されている労働者ですが、持ち株があれば投資者でもあります。ですので、株主総会では会社の方針について役員に質問することができます。雇用されているという受け身だけでなく、会社に対して投資をしているという2つの立場があることによって、帰属意識を高めることにもつながります。

取材相手には敬意を持って

―渡辺さんは記者を経験されたとお聞きしましたが、記者として自立を感じたのはいつ頃ですか。

渡辺さん(左)と国学院大学・星名彩由里

 私は入社してすぐに政治部に配属になり、首相番記者を務めたあと、3年目で地方支局に異動しました。あくまでも「主観的に」ですが、地方支局で県庁のクラブを1人で任されたときに自立したような感じがしました。
しかし、客観的に記者が自立したと認められるのは、最低でも10年はかかると今は思いますね。さまざまな現場へ行き、取材をして記事を書き、ときには想定外の出来事に対して1人で冷静に対応しなければなりません。

 私は経験していませんが、海外特派員を例にお話しすると、時事通信社は世界28カ所に特派員を置いています。ニューヨークのような大きな拠点には複数の特派員がいますが、1人で現地のスタッフを動かして取材をしている国もあります。語学力が求められるのは当然ですが、海外の厳しい環境の下で、取材における人的ネットワークを作り、事件や事故の対応を自らの責任で判断しなければなりません。

 特派員に限らず、記者としてだいたい10年程度の経験を積むと、大きな仕事を任されるようなスキルが身に付くと思います。

―記者として大事にしていたこと、時事通信社で働く上で大事にしていることを教えて下さい。

 取材の現場を離れてから何年も経ちますが、当時大事にしていたのは、取材をするときは「誰に対しても敬意を持って接する」ということです。地位や年齢、職業、考え方に関係なく誰にでも同じように接するように指導されましたし、自分の中でも大切だと思い仕事をしてきました。記者として取材に応じて頂けるのは当たり前のことではなく、報道という業務を理解して応じてくださっているということですので、感謝の気持ちを持って仕事をしていました。単なる噂や根拠のない風説と違い、直接当事者などに話を丁寧に聴き、確認し、記事にすることが時事通信社の報道に対する信頼につながることだと思っています。

 時事通信社で働く上で大事にしていることは、社会人としては当たり前のことですが、人の話をよく聴くことです。これは簡単なようで難しいことです。誰もが自分なりの考え方や知識・情報の範囲で物事の判断を行いますが、世の中も複雑で自分の今までの知見では判断できないことが多く、人に対する理解もそう簡単ではありません。相手の話を聴き、相手の立場を理解することに努め、自分の判断が本当に正しいのか検証し続けることが大事です。「決断は早く、結論は急がず」を心がけています。

時事通信社の「70年史」

自分が一生続けていける仕事を

―就職活動を控えた学生にメッセージをお願いします。

 就職活動にはテストのように正解がありません。長い就活期間でうまくいかないことがあっても、前を向いて進んでいくのが一番いいと思います。面接は相手との相性もあります。面接がうまくいかなかったとしても気にしないことが大切です。業界や企業は景気の波がありますが、自分の中に軸があれば世の中の移り変わりにも対応できます。ですから、目の前の結果に一喜一憂しないで、声をかけてくれる企業があったら、縁があったと思い、検討する価値は十分にあります。

 また、仕事をずっと続けていくには、わくわくする気持ち、好奇心などの素朴な感情が大事になります。「自分がずっと続けていける仕事は何か」という面からも考えてもらえれば、と思います。
この年齢になって、大学生は恵まれているなと感じるようになりました。社会人になってから勉強を再開する中高年が増えていますが、その背景には若いときに勉強をしなかったというある種の後悔があるからではないでしょうか。大学生の皆さんには、「今自分がいる環境を最大限に利用してください」と言いたいですね。(取材:早川美月、星名彩由里)

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