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大学生がつながる力(上)震災がきっかけで生まれた「リンクトポス」とは?

小笠原果美 authored by 小笠原果美公立大学・学生ネットワーク代表、岩手県立大学社会福祉学部4年
大学生がつながる力(上) 震災がきっかけで生まれた「リンクトポス」とは?

 2016年10月8日から3日間、全国公立大学・学生大会、LINK topos2016(リンクトポス2016)が北九州市立大学で開催されました。今回で4回目になったこの大会は全国の公立大学の学生・教職員が集まり、新しい仲間と出会ってつながりを広げることを目的としたものです。地域と大学のつながりを学ぶシンポジウム、地域の未来を考えるワークショップ、それぞれの大学の地域活動や防災活動などを紹介し合うポスターセッション、さらに学長先生たちとの交流会などのプログラムで構成されました。

 "LINK topos"とは、公立大学・学生ネットワークおよび全国大会の愛称です。もともとtoposは「場」を意味するギリシャ語で、古代ギリシャで人々が盛んに議論していたことに倣い、公立大学の学生がLINK(つながり)の力を発揮する"英知を結集する場"にしようとの願いが込められて命名されました。

小笠原果美さん

きっかけは3.11

 なぜ私たちはつながりを大切にしているのでしょうか? どうしてSNSでつながることが当たり前の時代に、北は北海道から南は沖縄までの全国の公立大学生120人以上が1カ所に集まり、リアルなコミュニケーションを図るのでしょうか?

 実は、LINK toposが生まれたのは2011年3月11日に起きた東日本大震災がきっかけでした。当時、被災した東北のために全国各地から大学生が集まってボランティア活動をしていましたが、それを知った公立大学の学長先生たちが「被災地支援活動に取り組む学生の生の声を聞いて学生支援のあり方を探り、その中で大学がすべき被災地支援を考えよう」と、各所で活動している学生達を公立大学学長会議に招集したのです。2012年、今から4年前のことでした。

 そこに集まった学生や学長は、支援活動のあり方を議論して、1つの確信を得ました。それは、たとえ一人でできることに限界があっても、つながることで知識・経験・想い・価値観が共有され、学び合い、自分たちの活動の幅が広がるという事でした。"つながりには力がある"と......。

 これをきっかけにして学生たちはネットワークを立ち上げ、公立大学協会を通じて全国の公立大学のサポートを受け、LINK toposを誕生させました。その翌年から年に1度、公立大学の学長会議と同日程で全国の公立大学の学生たちが集まるLINK topos(全国公立大学・学生大会)が行われるようになり、今や学生にも大学にも、そして地域にもインパクトを与えるようになったのです。

学長先生との交流会の様子

組織的な活動ができなかった熊本地震

 2016年で4回目になったLINK topos。熱い想いをもってこのネットワークを立ち上げた先輩たちはすでに卒業し、この大会が始まった時は高校生だった私が、今回の大会の代表に指名されました。こんな大きな大会を運営することを考えると不安が大きく、悩み、迷いましたが、原点に立ち返って全国の学生がつながり、活動内容や想いを共有することに重点を置けばいいと考えて引き受けることにしました。

 この決断の裏には、2016年4月に発生した熊本地震の存在がありました。LINK toposが東日本大震災をきっかけに誕生したネットワークでありながら、熊本地震の際には、お互いの活動状況の共有などの情報交換はできたものの、組織的な支援活動はできませんでした。これは、熊本地震の際には被災した自治体のほとんどが県外のボランティアを受け入れていなかったことや、熊本を含めた九州地区のLINK toposによるネットワーク機能が不十分だったことが大きな原因でした。

 岩手で生まれ育った私は東日本大震災を経験していたので、やるせない気持ちと残念な心でいっぱいだったのです。LINK toposの原点である"つながることによる力"の重要性を考えて、次につなぐ責任があるように感じたのです。災害が起きてからでは遅く、平時からのつながりが大切なのだと...。

集合写真

英知を結集するあの「場」を、ここで絶やしてはいけない

 私がLINK toposに初めて参加したのは、2014年に行われた第2回目の大会でした。地域活動に心を砕く学生がこんなにいるのかと衝撃を受けたことを、今でも鮮明に覚えています。あの時は、ただ一人の参加者だった私が、全国の公立大学の学生大会の代表をすることになるとは夢にも思っていませんでした。身に余る大役だとは思いましたが、自信はありませんでした。ただ、自分の大学で地域活動を行う中で壁にぶつかった時、私の心の支えはLINK toposで出会った全国にいる仲間たちでしたから、英知を結集するあの「場」を、ここで絶やしてはいけないという想いが、大役を引き受ける決め手になりました。

 代表を引き受けてから1年間、多くの方のサポートを受けながら準備し、LINK topos2016を無事開催できました。大会の最終日に、全国から集まってくる学長先生との交流会で、自信に満ち溢れ、活き活きと自分の活動を話している仲間の姿を目の当たりにして、その堂々とした姿や目を見張るほど輝いた表情を見て、「あぁ、ここまでやってきてよかった」と思いました。3日間のプログラムを通じて、学生たちが想いを磨く場をつくることができたと思ったのです。

 次回は、私がこの代表を引き受けてから大会終了までのことを少し具体的に、お話しします。