日本経済新聞 関連サイト

OK
[ skill up-自己成長 ]

大学生がつながる力(下)学生が地域や大学に
できることはなんだろう?

小笠原果美 authored by 小笠原果美公立大学・学生ネットワーク代表、岩手県立大学社会福祉学部4年
大学生がつながる力(下) 学生が地域や大学にできることはなんだろう?

 自信のなかった私がLINK toposの代表を引き受けて、最初に考えたことは、これまでこの大会を引っ張ってきた先輩たちのアドバイスを聞くことでした。すでに社会人として活躍されている忙しい方がほとんどでしたが、旅費は自前で、しかも仙台に集まってほしい......という私の願いは、前年度の代表を務めていた先輩の努力で実現しました。まるで今回の大会がここから開始されるような集まりになりました。

「自分らしく、ありのままでいい」って何?

 学生が地域や大学にできることはなんだろう? 公立大学に必要なものは何か? それをサポートする先輩にできることは何か? "つながる"力はどこから来るのだろう? ......など、私の心が躍るような深い議論になり、とても楽しい時間でした。

 でも、私の心は「今年はどのようなテーマを選んで、どのようにプログラムを作ればいいのか...」という代表としての責任感でいっぱいで、そのためのアドバイスやヒントを得たかったのです。結局、この"仙台会議"で先輩方がまとめた言葉は「これまでの成果や方法に捉われず、あなたらしいことができればいい」でした。

 「自分らしく、ありのままでいい」と言われると、それは何だろう? と考え込む日々が続きました。このような大会をリードするためには、LINK toposのあるべき姿や自分の願いを明確まわりに伝えて、それを実現する方策を考えるのが普通だと思うのですが、どう考えても、それは私の得意とすることではありませんでした。

 ただ、私のまわりには今回の大会プログラムを一緒に考えてくれる何人かの運営メンバーがおり、また、学生大会をサポートする先生方のチームが公立大学協会の中に作られていました。みんな、私のモヤモヤした心を整理して、考えをまとめていく作業に根気よく付き合ってくれました。突然すばらしいアイデアが降ってくることはありませんでしたが、仲間や先輩、先生との話し合いの中で見つけていくことができました。

ポスターセッション

"つながる力を実感したい"

 私の願いは、"つながる力を実感したい"ということでした。今から考えると、当たり前のことだと思うのですが、それを実現する方策は決まっている訳でなく、どこかに転がっているということもありません。大切なことは、自分の心を決めて前に進んでいく勇気なのだと思います。私は仲間に恵まれていました。いつも、「果美ちゃんの願いは?」とか「どんな結果をイメージしている?」と聞いてくれました。私はどこかで心を決めればよかったのです。全国に広がっている仲間ですから、何度も集まって話し合うことはできません。それにはSNSが役に立ちました。スカイプやLINEを使った会議は、とても大きな助けになりました。

 また、最終学年であった私には、就職活動や卒論、国家試験などにも取り組んでいたので、大会の事だけでなく「元気? 就活はどう?」などとも言ってくれたことに、どんなに助けられたか分かりません。それが私の活動のエネルギーになったと思います。

ワークショップの様子

課題設定型ワークショップに挑戦

 2016年10月8日、いよいよ大会が始まりました。最も難しかったのは、ワークショップのテーマを「ワクワクする地域の未来を考える」という抽象的なものにしたことでした。これまでの大会では、運営メンバーが課題を設定して、それを解決することをテーマにしてきたのですが、今年はこれからの社会の担い手となる学生たちに必要なこととして、"課題設定型"のものに挑戦することにしたのです。これが達成できれば、これからの地域や大学だけでなく、参加者一人ひとりに大きな価値を生み出すはずと考えました。

 (1)地域の未来を想定する (2)その中で課題を設定する (3)課題解決の企画を出す という流れなのですが、予想通り悪戦苦闘するグループが続出しました。短時間のワークショップでそこを乗り越えられるかどうかの分かれ目は、「自分たちが何者なのかを知る」ことに気づけるかどうかでした。

 いつまでも"アイデア"に固執していると、どうしてもそこから抜け出せませんが、自分が何を考えてきて、何を勉強してきたかを見つめ、そこで何ができるのか。これを話し合うことができるようになったチームは、この山を乗り越えることができました。あるチームは全国に点在している課題のある大学や地域を「渡り鳥」のようにつないでいくという企画を提案し、結果的に独創的なものになりました。

夕食時

「自分の世界はちっぽけだったな~」

 "自分を見つめて、自己に気づくこと"は、この大会の大きな課題であり重要な成果ですから、これからも大切にしていくことになると思います。今回、初めて参加したある方は、「自分がこれまで勉強したことのない専攻や分野に取り組んでいる学生たちとの話の中で新しい発見がありました。自分は社交的なタイプではないと思っていたのですが、そんな人たちとの出会いにワクワクして、積極的に話しかけている自分がいました。これまでの自分の世界はちっぽけだったな~」と語ってくれました。全国の学生たちの輪をすこしでも広げるための助けになれたと感じました。また、多くの学長先生に「LINK topos」と呼んでいただいたことは、この取り組みが根付いてきたことを表していることを実感させてくれ、とても誇らしく思いました。

 大学生同士のつながりは大変貴重な財産である反面、不安定で脆い側面もあります。学生は4年で大学から去っていかなければなりません。つながる努力を不断に行わなくては、あっという間に薄れていってしまうでしょう。LINK toposを通じて、人とのつながりが力を発揮することを多くの人が気づき、濃く、強く、深くつながることを財産にして、この活動をさらに進めてほしい。全国に広がってほしい。心からそう願っています。