被災地出身の僕が選んだ学生団体とは
ボランティアの架け橋(1)
みなさんはじめまして。青山学院大学3年の今野友彰です。現在、青山学院大学ボランティアセンター(旧ボランティア・ステーション)で活動をしています。本連載では同センターで活動する仲間たちの活動や思いを紹介させていただきます。今回は第1回ということで、僕がこれまでどんなことをしてきたのかを中心に書いていこうかと思います。
学生団体との出会い
僕は0歳の頃から水泳を始めて(もちろん当時は自分の意志ではないですが、笑)、高校まで曲がりなりにも続けてきました。小学生の頃は県大会で優勝したり、毎年全国大会に出場したりと、楽しく泳いでいました。中学生でもそれなりには結果を出せていたので、このまま高校、大学でも競技を続けていくんだろうなぁと思っている自分がいました。
ただその後、高校でストレスから病気になってしまい、最後の1年間は初めてマネージャーという立場で過ごすことになりました。もちろん辛い気持ちはありましたが、今振り返ると個人スポーツで自分の結果が全てだった気持ちから、チーム全体を見る視点を養うことができたので、とてもいい経験ができたと思っています。
そんなこんなで大学は宮城から東京の青山学院大学へ進学し、新しい生活が始まりました。上記の経緯もあり、大学では新しいことをしてみたいと思い、新歓期にとにかく色んな団体やサークルのビラをかき集めていました(笑)。
そこで僕は運命的な出会いをします。たくさんもらった中の1枚に、見覚えのある団体がありました。「青山学院大学ボランティア・ステーション」です。僕はこの団体のことを高校2年生の時に、地元の新聞で見たことがあったのです。僕自身、東日本大震災で中学生の頃に被災しており、自宅も半壊認定された中、遠く東京から青学がボランティアに来ているという事実を知りました。ただ、当時は「ほ~」というくらいしか思っていなかったのですが、これも何かの縁なのかなと思い、団体加入を志望しました。
身を置く環境の大切さ
まず、この団体がどんなことをしているかということを説明します。東北や大学周辺地域、そして発展途上国でのボランティアの企画を学生自身で立て、青学内で募った一般参加者のマネジメントも含めたボランティア活動の企画・運営をしています。つまり「ボランティアをする団体ではなく、ボランティアの企画・運営をする」団体であり、これを一つのプロジェクトとして、ビジネスで言うPDCAを回していきます。
ここには現地での視察や関係者との打ち合わせ、大学への企画書や報告書の提出に参加者を集めるためのプロモーション、魅力を伝えるための説明会でのプレゼンテーション、そして活動中のリスク管理など、目が回るような行程をこなしていく必要があります。団体に入ってミーティングに出席し始めた途端に、これを学生が行っているレベルの高さについていくのが必死でした。
それでも1年生後半からはリーダーとなり、プロジェクトをプレーヤーではなくマネージャーという立場で行う醍醐味や、社会問題への意見提起やアプローチ、先輩やメンバーのレベルの高さに刺激され、自分も成長することができたと思っています。
学生団体リーダーの経験から広がった視点
僕が担当していたプロジェクトは、毎年夏休みに宮城県塩竈市にて活動を行うもので、1年生の夏が終わってリーダーを引き継いだあとは2年生次のプロジェクトで全3週間半、約120名、3年生次では全2週間半、約60名の学生を巻き込んで行いました。
活動内容は教育支援と経済復興支援に大別され、教育支援では保育や学童保育現場での先生方の補助や中学生に勉強を教えるプログラム、学校に通えなくなってしまった子どもたちのサポートなどを行い、経済復興支援では漁業農業といった第一次産業の作業補助、離島地域の生活環境改善や景観保護のための草刈り作業、観光客増加のためにPR動画の取材作製といった多岐に渡る活動を行っていました。ハード面だけではなく、人手不足や心のケア、風評被害といったソフト面に焦点を充てた活動に注力することで、学生が活動を行う意義を見出していきました。
こういったことを企画運営したり、普通の学生では関わることがないような大学学長や職員、現地の行政や教育委員会、議員さん、そして視座の高い学生などと話していく中で、自分自身の考え方や視野も広がりました。2年生の2月からはもっと広い経験をしてみたいと思い、長期インターンに参加したり、これは東京にいる利点だと思うのですが動けば色んな人に会えるので、イベントやセミナーには積極的に足を運んでみたりしました。
特に自分がやっていた学生団体の活動は非営利ですが企業は営利なので、この点の違いは大きいと思い、企業とも接点を持ちたいと思いました。今では就職活動を行いながら某大手企業さんと就活セミナーの企画運営を行ったり、サービスを広めるお手伝いをしたりもしています。
"ボランティア"という曖昧すぎる概念
このようなかたちで学生時代を過ごしてきた僕ですが、感じたことが「ボランティアってすごく抽象的な概念だな」ということでした。言葉だけを見れば「自発的」や「志願者」という意味で語られることが多いのですが、その範囲は明確には意識できません。だからこそ僕はこの言葉から来る先入観や一般的なイメージに捉われないように心がけていました。
その中で毎年現地の状況も変わる中、ニーズに応えるのはもちろん、私たちからも様々な企画を提案していき、新たなものを作り上げながら目的ではなく手段としてのボランティアを実践できたと思っています。そして、青山学院大学ボランティアセンターの目標の1つでもあるボランティア先の「意思(思い)」と参加学生の「意志」をつなぐという架け橋のような存在であり続けるよう努力しています。このあたりの面白さや具体的な話はまた次回以降でお話しできればと思います!
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