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[ liberal arts-大学生の常識 ]

広がる新型宴会
ファミレス活用、酒なしも

広がる新型宴会ファミレス活用、酒なしも

 宴会のあり方が様変わりし始めた。2016~17年の忘年会・新年会で目立っていたのが、ファミリーレストランなどでの「ちょい飲み」や、居酒屋の「ノンアルコール」といった変わり種の「新型宴会」だ。働き方の多様化、若者のアルコール離れをはじめ、消費者のライフスタイルが変化。大人数で宴会を開くシーンが減ってくる中で、外食各社の工夫を凝らしたプランがヒットしている。

「1人1500~2000円で満足できる」

 「今年もおつかれさまでした」――。16年12月下旬、ファミレス最大手すかいらーくの中華料理レストラン「バーミヤン 中野坂上店」(東京都中野区)で、一般客に混じって近隣に事務所を置く金融機関の忘年会がスタートした。10人ほどが囲むテーブルには手羽先やチンジャオロース、スープなどが並ぶ。幹事役の男性(50)は店に週2~3回は訪れる常連。「つまみメニューの充実ぶりは知っている。居酒屋と比べてコストパフォーマンスが高いので、この店にした」と満足そうに話す。

 バーミヤンで2人前から注文できる宴会コースは、1人あたり税抜き1499~2499円。アルコール飲み放題(同1299円)にはドリンクバイキング(ドリンクバー)が付く。好みの濃さの水割りを作ったり、ソフトドリンクと組み合わせて好みのカクテルにしてみたり。お酒が飲めない人でも飲み物には困らない。

 「ファミレス宴会」はすかいらーくだけではない。サイゼリヤが手掛けるイタリア料理レストラン「サイゼリヤ」でも、「東京都心部の店舗などで10~20人の忘年会利用が見られる」。同社では立地や店舗によって、宴会利用を想定したコース料理を用意したり、取り扱うワインの種類を増やすなどしている。値ごろ感のあるワインも用意しており、「1人1500~2000円程度で満足できるのが支持されているのではないか」と分析する。

すかいらーくは明るい店内や分煙環境などが売り(東京・中野)

 新年会・忘年会に続き、卒業シーズンも利用が増える時期だ。卒園・卒業時の謝恩会をファミレスで開くことが定着してきた。セブン&アイ・フードシステムズが展開する「デニーズ」では、「教育施設が近くにある店などでは安定した需要がある。3月に利用し、すぐに翌年の予約を入れるケースも出ている」と話す。

 宴会の席が減り、ちょい飲みはファミレスへ。逆境の居酒屋も手をこまねいているわけではない。「この宴会ではアルコールは提供しません」――。外食大手で「甘太郎」などを展開するコロワイドが11年に導入し、徐々に広げているのが大学生などの需要を想定した酒なし宴会の「ノンアルコール宴会」。学生など若年層のアルコール離れに対応し、居酒屋「甘太郎」や「NIJYU-MARU」で、ソフトドリンクを飲み放題として料理主体のメニューをそろえる。飲酒ではなくフード中心の居酒屋の新しい利用を提案していく戦略だ。

コロワイドは会席仕立てのコースを用意(東京・港)

 16年秋にはシニアや少人数客などを想定し、料理やサービスの質を高めた「会席宴会」も始めた。居酒屋「北海道」では、1人ごとに小分けにしたコースメニューをそろえた「北海道の会席料理」(1人前6000円)を投入。大皿料理や大人数向けの鍋メニューではなく、旅館の食事のような会席方式のメニューにすることで、コースの高質感を演出している。

 16年12月下旬に「北海道 品川インターシティ店」(東京都港区)で職場の忘年会を開いたIT(情報技術)企業社長(64)は、固形燃料で温めた鉄皿の上のステーキを前に「小分けのメニューは高級感があり、料理の分量もちょうどいい」。大皿料理であれば、通常は若手が上席者の料理を取り分けるのがマナーだが、会席料理ならそんな配慮もいらない。「そんなことに気をもむのはもう古い。若手も余計な気を利かせなくても済むだろう」と笑顔を見せる。

会社単位での飲み会が減少

 「新型宴会」が注目を集める背景には、宴会を巡る消費者の変化がある。学生や若手社員の間で飲酒を強要する「アルコール・ハラスメント(アルハラ)」への問題意識が高まっているほか、働き方の多様化で時短勤務が普及するなどして、全員がそろう宴会を開くことが難しくなった。「100人、200人といった会社単位での飲み会が減った。大人数が利用できる座敷席が空きスペースになっているケースも少なくない」(大手居酒屋幹部)。「大箱」と呼ぶ100~200席規模の宴会スペースや、多様な顧客層に対応し、刺し身、焼き鳥、揚げ物と多様なメニューをそろえる強みが生かしづらくなってきたという。

 対照的に、ファストフードなどでの「ちょい飲み」が普及する中、ファミレスはゆったりと会話でき、長居できる点が支持されている。「1店丸ごとの貸し切りは難しいが、8~10人であれば予約しなくても少し待てば入店できる店も多い」(サイゼリヤ)。居酒屋に比べて明るい雰囲気の店内や分煙環境なども魅力。宴会前の時間に腹ごしらえする「ゼロ次会」や、「謝恩会やママ会、地域の趣味の集まりなどの利用はまだ拡大できる」(すかいらーくの谷真社長)。10人程度で利用できるパーティールームの拡充やメニュー面での対応強化でさらなる集客を目指す。

 もちろん、居酒屋が巻き返すチャンスも小さくない。全国展開するファミレスなどではサービスやメニューが画一的になりがちなのに対し、居酒屋では漁港直送の旬の鮮魚を使った刺し身メニューや店長の接客など、現場にある程度の裁量が認められている店が多い。「年末の2次会利用が想定外の好調ぶりだった」(ワタミの清水邦晃社長)と、意外な需要も表面化し始めた。

 新たな宴会ニーズを誰がつかまえるのか。これから本格的な競争が幕を開ける。
(企業報道部 牛山知也)[日経電子版2017年1月21日付]

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