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[ liberal arts-大学生の常識 ]

ニュースの見方(38)会社の選び方
~航空業界に入りたいと思ったら 

戸崎肇 authored by 戸崎肇大妻女子大学教授・経済学者
ニュースの見方(38) 会社の選び方~航空業界に入りたいと思ったら 

 就職活動シーズンを迎え、具体的にいくつかの業種について、会社選びの際の視点を提示してみたいと思います。まずは、筆者が今でも一番深い関わりをもっている航空業界について。この業界は動きが激しく、ニュースが新聞紙面に取り上げられる機会も増えています。

航空業界で働くには

 航空業界は、日本航空(JAL)が経営破綻した前後の期間を除けば、昔から根強い人気があります。昨今ではLCCと呼ばれる新しいタイプの航空会社が日本でも誕生し、就職の間口も広がってきました。さらに、空港を運営する会社(ターミナル会社)に就職するという道もあります。

海外網を拡大するANA

ANAは路線を積極的に拡大している

 日本を代表する航空会社としては、ANAホールディングス(中核事業子会社が全日本空輸)とJALがあります。以前は、国際線といえばJALでしたが、今やANAの方が国際線の輸送実績でも上回っています。海外路線の展開は続いています。2017年2月15日には成田―メキシコ・シティ線を開設しました。この路線は、ちょうど米トランプ政権が日本企業に対してメキシコでの生産を止め、米国に工場を移すよう迫るタイミングしたので、別の意味でも注目されることになりました。

 ANAはどんどん海外ネットワークを広げています。航空会社の社員として海外で活躍したいというのであれば、ANAでそのチャンスが大きくなっていると言えます。2月16日には「重要な経営課題」というタイトルで緊急記者会見を開き、何事かと一時株価の下落も招きましたが、結果的には、事業子会社の全日本空輸の社長が篠辺修氏から平子裕志氏に交代する内容でした。ホールディングスの体制に大きな変化がない以上、これまでの経営路線もさほど変わらないでしょう。

復活したJAL

復活したJAL

 JALは2010年の経営破綻から、完全に復活を遂げ、収益性は見違えるほど高くなりました。破綻時に政府からの財政援助を受けたため、ANAとの競争上の公正さを図るために新規投資の抑制や羽田空港の発着枠のANAへの優先配分などいくつかの経営上の制約が課されてきましたが、これも2017年3月末で終わります。

 今、2017年度から始まる中期経営計画を策定しているところであり、どのような方針を打ち出してくるかが注目されます。植木義春社長は留任することから、新たなフェーズに入るとはいっても、それほど急激な変化があるとは思われません。

「数字」に強いことが必須

 ANA、JALの大手2社に事務職として入社を希望するのであれば、いずれも業績が好調なこともあり、志望する学生の数もますます増えることが予想され、相当に難関な選考を突破する必要があります。ただ飛行機が好きだからといった安易な気持ちで臨むのであれば、うまくはいかないでしょう。エントリーシートや面接などで、どのような説得力のある志望動機を書けるか、あるいはプレゼンできるか、先輩などに相談してしっかりと対策を立てましょう。

 ちなみに筆者はJAL入社時の面接で「世界中に路線ネットワークを展開する仕事がしたいから」と答えました。実際、入社してからもその部署を目指して努力をしました。今、学生としてこのように答えたら、会社側からどのように評価されるか、知りたいと思っています。

 航空会社では近年、特に、入社後、経営上の「数字」に強いことが求められるようになっています。経営分析、会計の知識などは、入社後も見据えて積極的に身に着けておくべきです。

スカイマークはトップダウンから路線変更?

破綻から再生したスカイマーク

 JAL、ANA以外の国内の航空会社は、規模は小さいものの、それだけ早くから責任ある地位について働くチャンスがあります。組織が若いだけに、色々と改革の余地も多く、やりがいを見出しやすいのではないかと思います。一方で個人の負担もそれだけ大きくなってくるので、大きな仕事上のプレッシャーにも早くからさらされることになるでしょう。

 その中で、スカイマークはJAL同様経営破綻に陥ったものの、再生過程を終え、これから再スタートを切ることになり、面白味が増してくるでしょう。破綻時に撤退した路線も復活させてきました。また、機材選定のための職種横断的な組織を立ち上げたりして、従来のトップダウン型の経営からの脱却が図られていくのではないかと見ています。経営再建時のスポンサーとなり、大きな影響力をもつことになったANAホールディングスとの関係が今後どのように展開していくのか、が懸念材料でもあります。

ANAHDがピーチを子会社に

ピーチは2017年3月1日、就航5周年を迎えた(関西国際空港)

 国内のLCCで好調な経営を続けてきたのがピーチ・アビエーションです。同社はここに来て大きな転換期を迎えました。ANAホールディングスが2017年2月24日、ピーチを4月めどに子会社化すると発表したのです。もともとピーチはANAのLCC事業として始まったものの、その独立性は高く、独自の展開を進めることで評価を得てきました。それがANAとの関係を強固にすることで、ANAの持つ規模の経済性などの強みをピーチが活かし、その成長を加速させることが期待されています。半面、独立性がどこまで保てるか、社内の士気にどのような影響を与えるか、危惧される面もあります。こうした大きな転換期にあることを十分に認識した上で、ピーチへの就職活動に臨みましょう。

 JAL系のLCCであるジェットスター・ジャパン、ANA系のLCCであるバニラ・エアについても、どのような位置づけのLCCとして戦っていくかをしっかりと考えてみましょう。他の航空会社を受験する上でも、大いに役立ってくるはずです。他の航空会社にどのように対抗していくかという答えにもつながります。

 次回は、客室乗務員としての採用についても織り込みながら、外資系の航空会社、ならびに空港会社の魅力と対策について取り上げます。

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