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曽和利光の就活相談室就活最初の関門
エントリーシートの攻略法

authored by 曽和利光
曽和利光の就活相談室 就活最初の関門エントリーシートの攻略法

 就活生の皆さん、こんにちは。人材研究所(東京・港)の曽和利光です。「就活相談室」では、就活生に実際に集まってもらうインタラクティブ企画の強みを生かし、さまざまな疑問にタイムリーに答えます。今回は就活最初の関門、エントリーシート(ES)の書き方や面接初期の注意点についての疑問が出てきました。

前回から引き続いての参加者
▽神尾慶子さん(学習院大学経済学部3年)
▽川口隼人さん(東海大学観光学部3年)
▽木下いづみさん(立教大学経済学部3年)

木下さん ESを添削してくれた先輩から、全体的に作文っぽいと指摘されました。小学校の読書感想文みたいな感じというか。どこがいけないんでしょうか。

なるべく数字で具体的に

「ESが作文っぽくなってもかまわない」と曽和さん

曽和 ちょっとそのESを見せてください......なるほど。大学2年生の夏に英国の北アイルランドに留学し、現地でプレゼンテーション作りのリーダーとなり、4チーム中トップの成績を収めた、と。木下さんがどんな経験をしたのか、しっかり事実を盛り込んでありますね。こうやって、事実のディテールを書くことが重要です。作文っぽいかどうかは、さほど気にすることはないと思います。

 ただ、そこで注意してほしいのは、その経験がどれほど難易度が高いか、わかりやすく表現することです。でないと面接官の心は動かせません。まず定量的に数字で表すこと。例えば「英語を徹底的に学んで身につけた」よりも、「TOEICの点数が600点から900点に上がった」の方が具体的です。数字で示せない場合でも、「過去10年間、ゼミで予選落ちを繰り返していたコンテストに入賞を果たした」などと具体的に説明すれば、どんな難関を乗り越えたのかイメージしてもらいやすいはずです。

 もう一つ、こちらのほうが重要かもしれませんが、説明しているエピソードが適切なものかどうかも気をつける必要があります。面接と同様、ESの質問も、つまるところ「あなたはどんな人ですか?」を問うているのです。木下さんは留学の経験を書いて、面接官にどんな人物であると伝えたいんですか?

木下さん えーと、チームを引っ張る統率力があるというところでしょうか。

曽和 ここに書いてある内容からは、周到な段取り力は読み取れても、統率力はあまり感じませんでした。木下さんが統率力をアピールしたければ、別のエピソードを書いたほうがよいのかもしれませんよ。プレゼンの準備作業はたかだか1週間程度の話でしょう。そうした短期間のイベントっぽい出来事は、面接官としてはピンときません。前回も説明しましたが、やはり長期にわたって取り組んだことによってこそ、その人物の能力を測れるからです。

 「字数の制限がきつい」という嘆きもよく聞きますが、工夫の余地はあります。木下さんの例だって、北アイルランドといえば英国ですから、「英国の」は要りませんね。他にも不要な代名詞を省いたり、体言止めにしたり。事実以外の部分を圧縮すれば、かなり短くできるはずですよ。

 「ESを目に留めてもらうために視覚に訴えるべきだ」という議論も耳にします。「このスペースにあなたの人物像を自由に表現してください」といった設問では、イラストや模式図を駆使したほうがよいケースもあります。しかし、それ以外なら、色を付けたり下線を引いたりして目立たせる努力は、あまり意味がありません。重要なのはあくまで「人物像を伝えるための事実のディテール」であることを忘れないでください。

言葉を選んで本音をぶつけよう

本音にも「伝え方」はある

神尾さん 大学で講演してくださった企業の人事の方が「本音でぶつかってきてほしい」と言っていたんですが、どこまで本音を出していいのか悩みます。真っ正直に話してバツを付けられたらイヤですし......。

曽和 なるほど、気持ちはわかります。ですが、本当の自分を伝えた上で落とされるのは、その会社に神尾さんがマッチしていなかったということなので、悪くありませんよ。「バツが付くか」を気にして何とか取り繕ってその会社に潜り込んでも、あとで自分に合わずに退職してしまうミスマッチにつながります。そんな悲劇を防ぐためにも、「自分が本当にその会社の仕事を好きで頑張れるか」は、常に自問自答していてほしいと思います。

 本音の伝え方にもポイントはあります。本音を言うとは、言葉を選ばずストレートに言いたいことを伝えることとは違うのです。例えば第1志望ではない会社にも、第1志望「群」だと伝えておけば、角も立たないというものです。もちろん、面接官は「ズバリ第1志望ではないな」と察知はします。正直3位ぐらいの志望度だなと思っても、「3本の指に入っています」と言うのです。面接官は、「ああ、3位か」と思っても気分を害することはなく、むしろ「うまいこと言うねえ」と感心するかもしれません。そんなふうに、洗練された伝え方に気をつけながら、本音をぶつけていくのが正解でしょうね。

神尾さん 面接って、「落とす」ために就活生をチェックしている部分もあると思います。地雷のように「ここを踏んだらアウト」というポイントを教えてください。

曽和 面接官が神尾さんの人物像を判断するときに、本質より「印象」に左右されることは、残念ながら少なくありません。特に選考の初期段階では、各社の現場から駆り出された素人の面接官が多いのです。

 印象の悪くなるポイントはどこか。面接官に向けて声を張り上げる人がたまにいます。元気のいいところを見せたいのかもしれませんが、いきすぎれば「状況に適切に対応できない人だな」という印象になります。立て板に水のように話すのも、度が過ぎると「丸暗記したことしか話せないんだな」と思われます。ネクタイをいじりっぱなしなど、落ち着きのない振る舞いもマイナスですね。

 グループ面接で、隣の人のやりとりにいちいち相づちを打ったりするのも、面接官から見ると煩わしいのです。熱心さをアピールしたいのかもしれませんが、グループ面接とは1対1の面接をまとめてやっているものなのだと意識していないのでしょうか。その他に、笑顔が大切だとの思いが強すぎて、話がネガティブになったときも笑っている人がいます。いずれもその場に応じて振る舞う柔軟性を欠いていると思います。

川口さん ゼミの先生からは、笑顔で印象づけるべきだと助言を受けたのですが......。

曽和 もちろん笑顔が悪いというわけではありませんが、絶対に必要でもありませんよ。川口さんの顔をみていると、無理して笑っているような印象を受けます。そこで背伸びをしたがために、よけいに緊張してしまうようなら、笑顔になんてこだわらなくてよいのです。

 もしかして、積極的に自分をアピールする自信がないので、笑顔でごまかそうとしていませんか? そもそも、声が大きかったりすらすらと話せたりするような押し出しの強さも、必ずしもプラス評価になるとは限りません。その場その場に合わせた自然な表情をしていれば、それでよいのです。

「ポジショントーク」に注意

川口さん もう一ついいですか。就活関連の情報って、無料でいろいろ手に入りますよね。逆に情報がいっぱいありすぎて、何を信じたらよいのかよくわからないんです。

曽和 その情報源が就活にどんな立場で関わっているか。それ次第で発言に偏りが生じる「ポジショントーク」が多いことには、注意しておくべきでしょう。例えば人材ビジネスに携わる人は、人材あっせん先の顧客企業に対する評価が甘くなるかもしれません。就職情報サイト、いわゆるナビサイトだってビジネスですから、お金を多く払った企業の情報を目立たせることもあります。大学のキャリアセンターは、大学の格を上げるために有名企業に入ってほしいと考えるでしょう。親御さんも皆さんに安定した職に就いてほしいはずですから、大企業優先になりますよね。

 そんな中で、例えば中途採用での人気企業ランキングといった社会人向けのコンテンツは、比較的信頼できる情報源といえます。就活とは直接の利害得失がありませんし、仮にゆがんだ内容であれば一般の読者から批判されるはずだからです。逆に、先輩から「面接でこう言ったら受かった」「こう言ったから落ちた」などと聞いても、一般化して受け止めるのは危険です。掲示板サイトなどの情報も、参考にするのはかまいませんが、振り回されないようにしてください。

曽和利光(そわ・としみつ) 1971年生まれ。京都大学教育学部卒。リクルート人事部ゼネラルマネージャー、ライフネット生命総務部長などを経て2011年、主に新卒採用を対象にしたコンサルタント事業の人材研究所を設立。著書に「就活『後ろ倒し』の衝撃」(東洋経済新報社)、「『できる人事』と『ダメ人事』の習慣」(明日香出版社)などがある。
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[日経電子版2017年2月15日付]

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