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お悩み解決!就活探偵団2018就活はセレンディピティー
可能性を広げよう

authored by 就活探偵団'18
お悩み解決!就活探偵団2018 就活はセレンディピティー可能性を広げよう

 3月1日、経団連加盟企業の新卒採用活動が解禁となり、就活の序盤戦、「企業説明会」が本番を迎えた。一口で説明会といっても、学生3万人を超える大規模合同説明会や、大学内で開かれる学内説明会、有名大と人気企業だけが集まるプライベートイベントなどさまざまだ。学生の目にはどう映ったのか。就活生たちの1日に密着した。

早大生限定、大企業ずらり

 1日午後1時、千葉・幕張メッセに数万人の就活生を集める大規模説明会の様子が、テレビで放映されるのを横目に、早稲田大学3年女子のNさんは大学のそばにあるリーガロイヤルホテル東京に足を踏み入れた。ふかふかのじゅうたんをしつらえた3階の会場に、リクルートスーツの男女が続々と入ってくる。1300~1400人の学生のほぼすべてが早大生だ。参加企業は50社で、三井物産や三菱商事などの大手商社、日本政策投資銀行、東海旅客鉄道、三井住友銀行、ソフトバンクグループ、サントリーなど人気企業がずらり。

 このイベントは、就職・転職支援のリーディングマーク(東京・目黒)が主催する「レクミーLIVE」。有名大学の学生に限定し、人気企業の説明会を実施している。

就活では予想外の出合い「セレンディピティー」も追いかけよう(イラスト・篠原真紀)

 Nさんは昨年12月からいくつもの説明会に参加してきた。感銘を受けたのは日本マイクロソフト。「日本国内の研修だけでなく、海外にいる同期と合同でやる米国本社での研修などもとても魅力的で、働き方の様子がわかった。日本法人の社長とのフラットな関係性なども写真をまじえながら教えてくれた」と満足げだ。人事部の担当者も、冗談をまじえながら歯切れ良く話していて好印象。「行きたいなと感じた」という。

 逆に志望度が高かったのに幻滅したのが、ある財閥系大手デベロッパーだ。「御社で働くやりがいはなんですか」と担当者に質問したら、「やりがい? うーん......」とあいまいな答えしか返ってこなかったという。「正直、興味を失った」と率直な感想を聞かせてくれた。

早大生1300人と有名企業を集めた「レクミーLIVE」の会場(東京都新宿区)

 多くの就活生にとってこの日は就活のスタートだが、昨年12月から会社研究・業界研究をしてきたNさんにとっては、「自分に合う会社をしぼりこみ、取捨選択をする日」。みんなが行くような合同説明会には行かないのと尋ねる探偵に、「いえ、ここで思い切り話を聞いたら、あとはSPI(適性テスト)やTOEICの勉強、エントリーシートの作成の時間にあてたい」と笑顔で返し、軽やかに会場を後にした。

 それにしても、早大生1300人といえば、1学年の就職希望者の1割強に当たる。リクナビやマイナビといった就活情報サイトが開催する従来型の合同説明会とちがい、個別大学の学生集客力を武器に、人気企業をひき付ける新興勢力だ。

 同社の山田桐汰プロダクト統括本部シニアマネジャーは、「企業は高学歴の学生だけと出会える、学生はしぼられた人数のイベントで、高学歴の学生が好みそうな企業の説明を聞けるメリットがある」と話す。この日は早大以外に、東大生750人を集めるイベントを東京・秋葉原で開催している。9日までに東京、大阪、名古屋、京都、仙台、福岡、北海道で9回のイベントを開き、京都大学、北海道大学などの国立大学や、慶応大学、関西の有力私大などの学生を集める。

人が多すぎる 学内でアットホームに

「大学の説明会なら人数の制限は気にする必要もないし、場所も分かるし遅刻の心配もない」とIさん(東京・豊島区の立教大学)

 合同説明会の規模があまりに膨れすぎたため、それを敬遠する傾向も出ているようだ。立教大学3年Iさんは、当日午前1時までパソコンにかじりついていた。「マイナビが午前0時に解禁だったので、企業にエントリーしようと思ったのですが、企業の画面を開こうとすると『アクセスが集中しています』と出て全然つながらない」。30~40分格闘したが、あきらめて寝てしまった。

 翌朝参加したのは立教大学の学内説明会。午前10時半から昼すぎまで、IT(情報技術)系、繊維系、材料系の3社の説明を聞いた。特に繊維系の会社では、「資料にないことでも、担当者が自分の経験を交えながら話してくれたのが良かった」という。海外の大学で勉強させてくれる制度の説明の際には、実際に留学をした社員が、3カ月のカリフォルニアでの経験を話してくれた。

 「合同説明会は人がとにかく多くて、ブースがすぐ埋まってしまう。説明を聞けなかったら事前のスケジュールがくるってストレスになる。大学の説明会なら人数の制限は気にする必要もないし、場所も分かるし遅刻の心配もない」(Iさん)。もう一つの利点は、立教大学の先輩が就職している企業が多いため「採用実績があるので、個人的な見解ですけど、勝率が上がりそうな気がする」。

偶然の出合いを求めて

すでにベンチャー企業の最終面接まで進んでいるY君だが、「合同説明会は、いままで知らなかった企業に出合える機会」と話す(1日、千葉市美浜区の幕張メッセで)

 レクミーも学内説明会も、地道に合同説明会に通う就活生が脱力してしまいそうな「プライベートイベント」だが、そんな優先ルートが用意されていない学生はやはり苦難の道をたどるしかないのか。リクナビの合同説明会が開かれるJR海浜幕張駅で待ち合わせていると、憂鬱な気分をふっとばしてくれるようなフットワークの軽い学生に同行することができた。

 首都圏の公立大学3年生のY君は午前11時半、幕張メッセに到着。リクナビを選んだ理由は、国内で最も多くの企業が集まる説明会であることに加え、「興味のある企業の人事部の人の態度を見ること。それに、これまで知らなかった企業も知れたら。いわゆるセレンディピティー(すてきな出合い、予想外の発見)ですね」。

 興味がある企業は日産自動車、東日本旅客鉄道、川崎重工業、全日本空輸など。中でも日産は「横浜F・マリノスが好きで、そのスポンサーだから」だという。だが、Y君がまず足を向けたブースは西濃運輸やキヤノンシステムアンドサポート。「お目当ての企業以外に、いろいろな企業を回るのが目的」なのだ。特にキヤノンシステムアンドサポートの人事担当者の説明のうまさには感じ入った。学生をひきつけるしゃべり方が絶妙だ。「入社したら、ああやって人前で話すスキルが身につくのかな」。知らない企業だったが、少し興味がわいたという。

 お目当ての日産では2つのことに感動した。椅子に資料が置いてあるのではなく、わざわざ人事担当者が持ってきてくれる。説明の最中少し冷えてくると、「遠慮なくコートを着てね」と気遣いも。「ひいき目もあるだろうけど、すてきな会社だと思った」

さて、次はどの企業のブースを回ろうか……(1日、千葉市美浜区の幕張メッセで)

 川崎重工は、「説明会で話される内容に中身がない。ネットで企業のホームページで調べられる範囲」と手厳しい。トヨタ自動車で渡された資料は「エンジニア向け」と書いてあったので、営業志望だと伝えると「営業向けの資料はありません」とそっけない。「大手企業だから学生が腐るほどくると思っている余裕の表れかな」。隣のブースは人材派遣のインテリジェンス。金髪に巻き毛の女性が資料を配る。「へえ、こういう雰囲気の会社なのかな」

 時計が午後3時をさすと、「もう限界。これ以上ここにいると頭がおかしくなる」と笑って会場から退出した。午後6時からは渋谷で別の就活イベントに行くという。

 「明日もまた来ます。明日はもっと多くの企業を回る。また、キヤノンシステムアンドサポートみたいな面白い人がいる会社に出合えるかもしれない」と爽やかな笑顔を残して去った。

可能性を広げよう

 レクミーに参加したNさんを「取捨選択型」とするなら、Y君はあちらこちらと広くあさって歩く「渉猟型」といえるかもしれない。Y君も昨年3月からインターンを始め、ベンチャー企業の最終選考に残っている。Nさんと同じ先行組にも関わらず、合同説明会には魅力を感じている。

就活は出合い。可能性を広げよう(1日、千葉市美浜区の幕張メッセで)

 会場ではそんな「渉猟型」が他にもいた。武蔵大学3年のT君は、「いろんな業界それぞれ、2社ずつは回りたい」と腕まくり。エイチ・アイ・エス、眼鏡店「JINS」のジェイアイエヌ、三菱東京UFJ銀行、アパホテルなど多彩な企業の説明を聞いた。さらに予定になかったベストブライダル(東京・渋谷)のブースにも呼び込まれ、「形のないものを売るのもいいな」と好感を持ったという。セレンディピティーにも「ちょっと期待している。呼び込みの雰囲気が良ければ、そのまま説明を聞いていくやり方でいきたい」(T君)。D2C、サイバー・コミュニケーションズ、博報堂など大手広告代理店を中心に回った慶応大3年のRさんも、予定になかった新興企業のネオキャリアのブースに呼び込まれ、「これもアリかなと思って説明を聞いた」。自分の想定していた企業像と違うタイプの会社に触れて、「視野が広がった」という。

 彼らが大規模説明会にあえて参加するのは、Y君が言うとおり、自らの可能性を広げるセレンディピティーに期待しているからだ。

 世の中を見回せば一流企業の思わぬ挫折が後を絶たない。東芝は主力事業を切り売りし、三菱自動車は日産の傘下となり、電通は過重労働の不祥事が噴出した。企業のネームバリューに頼るのでなく、行きたい会社は自分で見つける時代。運を信じて街に出れば、未来を切り開く出合いが待っているはずだ。
(岩崎航、松元英樹、松本千恵、夏目祐介、飯島圭太郎)[日経電子版2017年3月2日付]

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