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スタディーツアー盛況
ひと味違う「旅で成長」

スタディーツアー盛況ひと味違う「旅で成長」

 旅行のスタイルに変化が出ている。今、幅広い層に人気があるのは、学びの要素を盛り込んだ「スタディーツアー」だ。現代人は国内外の多くの観光地に足を運んだ経験があり、インターネットを使えば疑似体験もできる。普通の行程では飽き足らなくなってきただけに、旅を自身の成長機会にしたり、ひと味違う体験を求めたりする「目的志向」を強めているようだ。

「エシカルなライフスタイルを学ぶ旅」

 「化学肥料や農薬を使わない野菜などオーガニックな選択肢が身近にあり、無理なく実践しています」。旅行大手のエイチ・アイ・エス(HIS)が1月に東京都内で開いたニュージーランドツアーの事前講座には、参加者や関心を持つ約40人が集まった。

 このツアーは「エシカルなライフスタイルを学ぶ旅」「エコ&オーガニックを巡る旅」と銘打ち、エコ先進国の同国で環境に優しい洗剤を扱う店舗や原住民ゆかりの森、一般家庭を訪ね、交流する。事前講座では在住者らが対談し、現地の様子を紹介した。ここで言う「エシカル」とは倫理的という意味で、有機栽培をはじめ環境に配慮した食品やフェアトレード製品などを購入して社会貢献に寄与する行動を指している。

HISのスタディーツアーでは現地の人たちと触れあう(ネパール)

 ツアーは「エシカルファッションプランナー」の肩書で活動する鎌田安里紗さんと企画。参加者限定の2月の旅行は鎌田さんも同行する。より多く募集する4月出発の場合、期間は7日で通常料金は大人34万8千円。エシカル関連情報サイト「エシカ」で写真展も開く。講座に出席した明治大3年の高橋侑里さん(21)は「エコに関わる仕事に関心があり、先進地の暮らしを学びたい」と動機を話す。1人で参加したが同世代の女性が多く「抵抗感はない」。神田外語大3年の大塚真子さん(21)は「思い出をつくりながら成長につながる体験もできればいい」とほほ笑んだ。

 HISがスタディーツアーを本格的に扱い始めたのは2013年。パンフレットをめくると途上国の児童養護施設や貧困地区での交流、学校建設、ものづくり体験、米シリコンバレーの企業訪問、HIS海外店での職業体験まで幅広い。ブータンの観光開発ツアーは特産品を使う土産物を提案し、見習い観光ガイドに改善点も助言。国内では原子力発電所事故の影響が今も残る福島県での農作業ツアーもある。16年のツアー参加者は前年より1割増えた。顔ぶれは学生から主婦、学者、芸術家まで多彩で、年齢別では23~49歳が46%と最多。約8割が1人で申し込んでいる。

HISはツアーの前後に講座を開き、学習効果と参加者のつながりを深める(東京都内)

 ツアーを統括する鮫島卓・専門店グループリーダーは人気の背景に、旅に対する消費者の嗜好と選択基準の変化があるとみる。特に1980~2000年ごろに生まれた「ミレニアル世代」を中心に「明確な目的を持って出かける人が増えた」。生涯学び続けたいとの学習熱が旅と結びついてきてもいるという。

研修と観光を組み合わせた留学旅行も

 通常のツアー商品は差異化が難しくなり、まず価格に注目が集まる。ネットで現地の画像や情報を得られるだけに「驚きや感動も感じにくくなった」(鮫島氏)。そこで投入したのがスタディーツアー。開発に手間はかかるが、ミレニアル世代の価値観にあう。学びの熱意が冷めないように、旅の前後に講座を開催。参加者の結びつきも深めたことで、自発的に訪問先に関わり続ける人も出ている。

 HISだけではない。JTBガイアレック(東京・豊島)では海外の語学学校での研修と観光を組み合わせた留学旅行が伸びている。特に「大人の遊学」と題したシニア向けが人気で、50歳以上の参加は16年に前年比5割増えた。20年東京五輪でのボランティア希望者が早期退職したり有給休暇を取ったりして参加する例もある。

 こちらは1~4週間の日程が中心で、一般家庭に泊まるホームステイやホテルを選べる。英国・ボーンマスで50歳以上の人が4週間学ぶ場合、交通費などのほか授業料約25万円、ホームステイ代が約15万円かかる。決して安くはないが、「行き先を変え毎年参加する人もいる」(担当者)。

 JTBコーポレートセールス(東京・千代田)は「旅いく」の名称で子ども向け職業体験ツアーの販売を強化している。

 JTBの調査では、日本人の1泊以上の旅行総消費額(国内旅行と海外旅行)は16年で推計14兆3800億円。前年をわずかに上回ったが、15兆円を超えていた01~07年より水準は低く、延べ人数も伸び悩む。大手旅行予約サイトの米エクスペディアが21の国・地域のミレニアル世代に実施した調査では、日本は1年以内に海外旅行をしていない人の割合が58%と最も高かった。

 旅行市場が盛り上がりを欠く中で、学びという付加価値を上乗せすることで、消費に結びつきつつある。「何となく」ではなく「明確な目的を持って」出かける。志向の変化を見極めたからこそ、スタディーツアーの人気がある。
(企業報道部 大林広樹)[日経電子版2017年2月17日付]

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