立命大生が振り返る関西就活 関東に比べてインターン、OB訪問で苦労
就活生座談会2018(3)
2017年2月中旬、立命館大学東京キャンパスで、今春社会人になる4人の学生が就職活動について語るセミナーが開催されました。18年春卒業予定の学生にとっては、先輩たちの就活体験談は参考になることも多いはず。セミナーの模様を座談会形式で紹介します。
●青地秀介さん(国際関係学部、内定先:デベロッパー)
●熊谷香奈さん(文学部、内定先:IT)
●五十嵐大輔さん(法学部、内定先:損害保険)
●中道彩さん(文学部、内定先:総合商社)
――就活を終えてどのような感想を持っていますか?
青地さん エントリーシート(ES)や面接などの採用選考はテクニックだけでは通過できません。何千、何万人もの学生を見ている人事担当者を納得させるには、自分の人生をしっかりと伝えること。自分はどのような人生を送ってきたのか、どんな価値観を持っていて、どのような思いで志望企業で働きたいと思っているのかを伝えることが大事です。
熊谷さん自分の過去と未来に向き合う、今までにない機会でした。面接ではうまく話せず、「本当にやりたいことは何だろう......」と落ち込むことも多かったです。そのたびに自問自答を繰り返して考え抜き、その思いを面接担当者に伝えました。
中道さん 「他人は他人、自分は自分」という気持ちが大事だと感じました。就活中は「○○企業はすでに内定が出ている」「選考の裏ルートがあるようだ」など、さまざまな噂が耳に入ってきます。そんなとき噂に影響されず、自分は自分らしく頑張ればいいんだと自分の心をコントロールできる力が身に付きました。また、自分1人で悩んでいても何も解決しないこともあります。そのようなときは大学の先生や職員の方、家族、友人などに相談する勇気を持つこともできました。
五十嵐さん 就活を通じて、目標を持つ大切さを知りました。これが一番の自己成長です。就活は自分の目標に向かって、全力で取り組めるいい機会です。これからの人生でも目標に向かって邁進していきたいと考えています。
――関西と首都圏の就活に違いを感じたことはありましたか?
青地さん OB訪問で苦戦しました。志望企業のOBは東京で働いていることが多く、人事担当者に「大阪にいませんか?」と聞いてもなかなかいなかったです。商社も受けていたので、OB訪問数で選考に差が出てしまうのではないかと心配でした。また、企業説明会が東京でしか行われない場合、都内の学生は授業の合間に参加できますが、自分たちは1日授業を休まなくてはならず大変でした。
中道さん IT企業を受けたとき、首都圏の学生はITベンチャーのインターンシップ経験をアピールしていましたが、関西はITベンチャーが少なく、自分はインターン経験をアピールできませんでした。他に首都圏の学生は3年生の夏頃からインターンなどを通じて企業の情報収集をしていますが自分はしておらず、3月の企業説明会が始まった頃に持っている情報量の差に焦りを感じたこともありました。
――企業選びの「軸」は後輩たちが関心を持つことの1つです。どのような「軸」で業界・企業を選んだのですか? 五十嵐さん 就活の軸は人の挑戦を支える仕事でした。学生時代は所属学部の学生委員会の代表委員としての活動と、陸上競技の全盲ランナーの伴走活動などに取り組んできました。学生委員や伴走活動は自分が主役ではなく、他人の挑戦を手助けすることです。自分がプレーヤーではなくマネジャーとして周囲を支えていくことに、やりがいや喜びを感じてきました。そのような軸から金融業界の中でも損害保険業界に絞りました。 青地さん 米国への留学や留学生と一緒に過ごす国際寮でリーダーを務めるなど、人やモノなど多様性のある環境の中で、周りを巻き込んで物事を進めるという経験をしました。その時、自分はこのような力を発揮することにやりがいを感じました。自分が輝ける業界はどこかという視点で探したとき、様々な企業や行政などを巻き込んで街づくりを推進する総合デベロッパーなら力を発揮できると思いました。 熊谷さん 3つの軸があり、1つ目はニュースや広告など伝えることに携わりたいということでした。これは高校生の頃から思っていたことで、大学では新聞部に所属し、3年間活動してきました。他にはチャレンジングな環境に身を置きたい、幅広い職種や業界の人と関わりたいという軸もありました。3つの軸からIT企業と新聞社の選考を受けて、最終的にはニュースの配信や広告など自分がやりたいことができそうなIT企業に就職することを決めました。
中道さん1つ目は海外で活躍できること。私は日本人と韓国人のハーフで、小・中学校の9年間は中華学校に通いました。3つのアイデンティティーを持ち、周囲とは異なる環境で育ってきたということもあり、幼い頃から将来は海外に出て活躍したいという気持ちがありました。2つ目は企業の社会貢献性。3つ目は社員の雰囲気であり、志望先は業界で絞るのではなく企業で絞りました。
――大学での学びが就活に生かされた経験はありましたか?
五十嵐さん 人事担当者の方から「話が論理的」と褒められたことがありました。法学部なので法律知識を身に付けたり、条文を覚えたりすることが多く、学びの中で論理的に話す技術などが身に付き、就活でも役立ちました。
中道さん 卒業論文が必修科目であり、2年間かけて英語の卒論を仕上げました。卒論のテーマに対して、「なぜこういった歴史が起きたのか」など、「なぜ?」と問い詰めながら卒論を完成させました。この「なぜ?」を繰り返す作業は、自己分析や業界・企業研究にも通じるものがありました。
青地さん 何かに興味を持ったら、自ら足を運んで現場を見に行くということです。環境経済のゼミに所属しており、先生から直接現場に行って話を聞くことを勧められ、公害裁判に出られた方や沖縄で社会運動をしている方などに会いに行きました。就活ではそのような積極性などをアピールしました。
熊谷さん 授業で論文やリポートを書いたり、ディスカッションをしたりする機会が多く、自分の考えや疑問に感じたことを言葉にして伝えることは、ESや面接において役立ちました。
――最後に就活中の後輩へアドバイスをお願いします。
青地さん 就活は内定をもらうだけではなく、人生を見直すいい機会です。私の就活は不安から始まりました。世の中には優秀な学生も多く、「自分はダメなのではないか」と感じたこともありました。しかし、自己分析してどういう人間なのか、どういうことがしたいのかなどを十分に考えたことで、満足する結果を得ることができました。
熊谷さん 就活は大変なことも多いですが、自分にとっては有意義な期間でした。「この企業に行きたいけれど、自分は難しいだろう」と考えてしまう学生もいるでしょうが、最初から諦めず、できるだけ自分の可能性や視野を広げて取り組んでください。
五十嵐さん 就活は何か「正解」があるものではありません。100人いたら100通りの就活があります。
中道さん 大学の就活支援の1つに、内定した先輩が後輩にアドバイスする「ジュニアアドバイザー(JA)」制度があります。私は「自分は厳しいかな」と思う場面もありましたが、JAから「君なら大丈夫!」と言っていただき、頑張ることができました。内定した今、私はJAをやっており、後輩たちに「君は無理、不可能だよ」とは絶対に言わず、「一緒に頑張っていこう」と声をかけて活動に励んでいます。
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