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[ liberal arts-大学生の常識 ]

全問分かる? 目指せことわざ名人

全問分かる? 目指せことわざ名人

スマホ変換で勘違い?

 長く受け継がれてきたことわざや故事成語。上手に使えば会話や文章が豊かになる。正しく使っているかどうか、ネットで調査した。

 目立つのは、語句を区切る場所の勘違い。「間髪を容れず」「好事魔多し」などは、区切る位置を誤ると読み方や意味まで変わってくる。日本語に詳しい西谷裕子さんは「スマートフォンでは誤った読み方で入力しても正しく変換されてしまう」と指摘。手書きが減ったことが勘違いを助長する面もあるようだ。

 回答者からは「一姫二太郎を女の子1人と男の子2人だと思い込んでいた」(正しくは1人目は女、2人目は男がよいという意味)など失敗談が寄せられた。「自信がないので使わない」との声も。基になる逸話は現代の生活から縁遠いものもあり、連想しづらくなっている。

 ただ、西谷さんは「ことわざは気持ちをやわらかく伝えたいときに効果的」と話す。出会いと別れの季節。正しい表現を再確認して、自分に合った言葉を見つけてみよう。

正しい読み方・漢字は

 習慣もずっと続けていると自然と身に付き、生まれながらの性質のようになっていくということ。「習い」は習慣の意味で、「習い、性となる」と区切って読む。「習い性」と一語扱いして「しょう」と読むのは本来誤用だが、定着しつつある。「広辞苑」など一部の辞書では「ならいしょう」も掲載している。10~20代の正答率が高く、50~60代が低かった。

 すぐさま、即座にという意味。もとは「間に髪の毛1本入る隙間もないほどに差し迫ったこと」をいい、「かん、はつをいれず」と区切って読む。スマートフォンなどで「かんぱつ」と入力しても変換できるが、一語扱いにして読むのは誤り。現在は「入れず」と書くことが多い。60代を除く全世代で正答率が3割を下回った。

 ふさわしい環境を得て、生き生きと活躍する様子。もともと魚の訓読みは「うお」だったが、江戸時代、酒の肴(さかな)を意味する「酒菜」から転じて「さかな」と訓読みするようになった。

 官職を退いて民間の生活に入ること。「野」は民間の意味で、下野するというように「や」と読む。朝廷を示す「朝」に対する言葉。選挙で与党が野党になる時に用いるのは本来誤りだが、定着している。

 人間は打算や損得のためではなく、相手の「心意気」に感じて行動するものだという意味。「粋」は気質や身なり、振る舞いがあか抜けていること、人情に通じていることを意味する。

 驚きや恐れから顔が青くなる、または相手に圧倒されて手も足も出ない様子。後者の意味では「顔色なし」ともいう。漢語に由来するため、「かおいろ」と訓読みせず「がんしょく」と読む。

 一部を聞いただけで全体を理解できるという意味で、理解が早いことのたとえ。「一を聞いて十を知る」と同義。「万」は全てという意味で万物の「ばん」。「まん」は数が多いことを表す。

 赤ちゃんのように道理の通じない人を相手に争っても無駄という意味。「地頭」は平安から室町初期にかけて荘園を管理していた役人。横暴な取り立てで領民は逆らえなかった。

 戦乱で国が滅んでも、自然の山や川は昔の姿のままであるという意味。唐代の詩人、杜甫の句が出典。「やぶれて」は破滅するの意味で、単に戦いに負けたという意味ではない。

 日差しを避けたり雨宿りをしたりするなら葉が茂った大きな木の下がいい。転じて、頼りにするなら勢力のある人の方がよいという意味。「影」には頼れないので注意。

◇     ◇

意味を確認しよう

 逆鱗(げきりん)とは竜ののど元に逆さに生えた鱗(うろこ)のこと。竜はそこに触れた人を必ず殺してしまうという伝説がある。目上の人を激しく怒らせることをいい、目下には使わない。自分の怒りについても使わない。

× 私の何気ない一言が後輩の逆鱗に触れた

 雨が降った後にタケノコが次々と生えることから、同じようなものが次から次へと出てくることのたとえ。雨の後のタケノコの成長も確かに早いが、成長が早いことに対して使うのは誤り。

× 彼の身長は雨後のたけのこのように伸びた

 棹(さお)とは舟を進めるために使う長い棒。船頭が棹で水底をさすようにして舟を押し出す様子から、順調に物事を進めることのたとえ。「水を差す」のように流れに逆らう意味は正反対。

× せっかく盛り上がっているのに流れに棹さす発言は控えるべきだ

 さあ大変、すぐに行動を起こさねばという場合に用いる。鎌倉時代、幕府で一大事が起きると武士が招集されたことが由来。はせ参じるという意味が強く、驚いて逃げ出すときには使わない。

× 地震に驚いて、いざ鎌倉とはだしで逃げた

 良いことがあると邪魔が入りやすいという意味。好きなことをしていると邪魔されやすいというのは誤り。「好事(こうじ)、魔多し」と区切って読む。「好事魔」と一語扱いにするのも誤り。

× 夜の街には好事魔多しだから気を付けてね

◇     ◇

 ランキングの見方 正しいことわざ・故事成語、数字は正答率。

 調査の方法 「勘違い慣用表現の辞典」の編著者で日本語表現に詳しい西谷裕子さん、ことわざ能力検定協会(大阪市)の協力を得て、誤解しがちなことわざ・故事成語をリストアップ。漢字や読み方に関する質問を35問、意味や使い方を19問作成。2月初旬、ネット調査会社マクロミルを通じて全国10~60代の男女に解いてもらい、正答率の低い順にランキングした。有効回答数は1036(各世代とも男女同数)。
[NIKKEIプラス1 2017年2月25日付、日経電子版から転載]

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