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[ skill up-自己成長 ]

マジシャン大学生(25)大学生の時こそ、好きなことを味わい尽くす

森屋志政 authored by 森屋志政
マジシャン大学生(25) 大学生の時こそ、好きなことを味わい尽くす

 私にとって、学生時代の経験の中で成功体験よりも失敗体験の方が多かったことは非常に良かったと感じています。なぜなら、自分が思い描いているように想定通りに事が運ぶ事は世の中にはそんなにないということについて、身をもって体感できたからです。どうしても成功体験をたくさん積みたいと、最初はそう考えてしまうことも多かったのですが、小さな成功体験をいくつも積むより、失敗が多く時間はかかっても大きな成功体験を積む方が人を成長させると思います。

目の前の物事に真正面から取り組むこと

 自分自身、マジシャンとして5年、10年という年月を過ごしている中で、自身を取り巻く環境は想像しているよりも劇的に変化しました。そのため、当の本人が思っているほど、世の中計画通りに事が起こらないということを人一倍強く感じていました。

 そんな中で私が強く意識するようになったのは、とにかく今目の前にあることに真正面から向き合うことこそ重要だということでした。中々自分の思い通りにいかなくなると、他のことに目移りしてしまいそうになってしまうのですが、それでもなお、逃げずに真正面から対峙するという経験を積んでおくべきだと私は考えます。

 人生設計の考え方の方向性には、次の2つがあると思っています。

先輩のご厚意で劇団四季の舞台を鑑賞した機会もありました。3時間という長丁場の中、いかに観客を惹きつけ続けるかという点で非常に良い勉強になりました

・将来のゴールから逆算して現在の行動を決めると良いという考え方
・将来について悩むよりも、目の前のことを一生懸命やることを大切にする考え方

 そして、この両者の決定的な違いは、出口があるかないかだと考えています。あらかじめ逆算して設計する場合、いつまでに何をするかという期限がある程度決まってきます。ですから、○○をやったら次は○○にいくというようにステージごとに出口が必ず用意されています。一方で、目の前のことに全力投球する場合、いつ、そのステージから脱出できるかどうかは見えないままです。

 一概にどちらの考え方が絶対的に正しいということは難しいですが、少なくとも学生という時間に限っていうのであれば私は後者の考え方を大切にすべきであると考えます。なぜなら、学生という時期は時間の流れと共に大きく価値観が変化するタイミングであり、なりたい将来像も都度変化するものだからです。将来像をあれこれ模索することよりも、目の前のことにしっかり向き合いながら、自分の意思で行動をしていく経験を積む方が大切だと思います。

挫折は意思決定をする意味で重要な局面である

 大学生に至るまでの20年弱の期間、自分自身で意思決定をする経験が何回あったか考えてみると、ほとんど思い当たる節がない。誰かが用意していたレールの上に乗って走っていくうちに気がつくと大学生。そうした人は他にも一定数いるのではないでしょうか。行動をしていたのは自分でも、行動の意思決定を下していたのは、自分ではなかった。そうなれば、将来どうしたいと言われても具体的な答えをなかなか出すことができません。

 大学生という時間は良くも悪くも極めて自由です。だからこそ、時間の使い方次第で自分の可能性は大きく変化します。自由な時間が潤沢にあるときこそ、熱中する対象を見つけてほしいと思います。そしてその対象をとことん味わい尽くしてほしいと思います。時間がたっぷりあるからこそ多くの失敗を経験できます。第23回でも述べさせていただきましたが、挫折を経験したとき、最も重要なのは自分の力で立ち上がることです。立ち上がるためには、失敗を踏まえて次に自分はどうするべきかという意思決定がそこには伴います。

 どんな青臭い夢を抱いてもいいと思います。格好つけずに、こういう目標を達成してみたいということを決めて、自分で判断しながらやりきってみる。結果がどうであれ、その過程で手にはいるものは大きな財産であると思います。

XJAPANの大ファンであり、ライブにも行っていました。念願のライブを見た時の興奮は今でも忘れられません

とにかく貪欲になれ

 真正面から向き合うからには、自分の中で悔いが残らない形でやるべきです。どんな小さなことでも吸収しようとする姿勢を常に持つと共に、なるべく行動の範囲を限定しない方が良いと思います。

 私は、マジックを大学に入って続けるにあたり、あえてサークルに入る選択をしませんでした。もちろんマジックサークルに入って大学ごとに交流するのも魅力的でしたが、それ以上に、学生だけの集まりに終始することなく、その道の第一線を張る人の近くにいようと決断しました。どうしても何かに所属をするとなると、自分の立場と共に所属団体としての立場も発生します。何かに属することで行動を制限するくらいであれば、いっそ1人で好きなように回ってみる方が面白いというのが当時の考え方であり、結果的にまさかつながるとは思えなかった方々と親しくなることができました。

赤坂にて開催されたサーカス「フエルサブルータ」での1枚。固定概念を破壊するというとはこういうことだ!と言わんばかりのアグレッシブなサーカスに終始大興奮していました

 その気になれば学ぶ対象は様々なところに転がっています。点在しているそういった要素を限られた期間になるべく多く拾い集めて自分の血肉としていく。そのためには、とにかく貪欲に、かつ行動は広くしておくことを薦めたいと思います。

 時には、自分の熱中している分野とは違う物事に触れてみるのも楽しい時間です。私はマジックを続ける中で、演劇や音楽のライブといった生の体験との接点をなるべく持つようにしていました。異なる分野であれ、観客に何かを伝えようと懸命に努力し、汗を流している人の姿というのは極めて美しく、かつ心を動かされるものがあります。

 自由な時間の中で、コレだ!と思うものに出会い、貪欲に、かつ積極的に行動しながら味わい尽くすこと。一人でも多くの大学生にそういった体験をしてほしいと切に願います。