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日本経済新聞「未来面」
学生から三菱ケミカルHD社長への提案
「AIが新たな健康社会への知恵生む」

日本経済新聞「未来面」 学生から三菱ケミカルHD社長への提案 「AIが新たな健康社会への知恵生む」

 日本経済新聞の未来面は、読者や企業トップの皆さんと課題を議論し、ともに作っていく紙面です。共通テーマは「革新力」です。今回は三菱ケミカルホールディングス代表執行役社長・越智仁さんからの「どうすれば若者が夢を持てる仕事になりますか?」という課題について、学生の皆さんから多数のご投稿をいただきました。

 ここで紹介したのはほんの一部です。掲載できなかったアイデアを日経電子版の未来面サイトで紹介しています。

【課題編】「快適な長寿と健康な社会へ何が必要ですか」

越智仁・三菱ケミカルホールディングス代表執行役社長

 我が社は「THE KAITEKI COMPANY」を標榜しています。これは人と社会と地球、すべてにとっての快適の実現を通じて、健やかな持続的成長ができる会社という意味を込めています。

越智仁・三菱ケミカルホールディングス代表執行役社長

 日本は高齢化社会を迎え、平均寿命は男性80歳、女性86歳と世界のトップクラスです。一方で医療や介護に依存せず自立した生活ができる「健康寿命」をみると、男女とも平均寿命から10歳程度、低くなります。このギャップを埋めて、単に長く生きるだけではなく、快適で健康な長寿社会を実現することが、これからの大きな課題です。

 そのためにできることは何か。情報技術の進歩はめざましく、デジタル化の大きな波が私たちの生活を助けてくれます。人工知能(AI)やビッグデータなどを活用し、快適な長寿人生を実現できる方法がどんどん目の前に現れてきました。

 例えば、我が社でも自分の健康管理のための血液検査サービスをドラッグストアの店頭で簡単に利用できるようなビジネスを展開しています。これからはコンビニや駅などで気軽に、様々な健康維持のための検査ができる時代になるでしょう。睡眠をデジタル化して分析し、健康状態を把握したり、声だけで今の体調を管理したり、健康寿命を延ばすための新しい技術は、ますます広がるでしょう。歩数計はすでに個人の健康データを効率よく収集、解析する有効なツールになりつつあります。

 快適な長寿生活を実現するために、会社を定年退職してから始めるのでは遅いのです。毎日の積み重ねが、快適な長寿生活につながる。そんな仕組みを企業が社員のために考える時代ですし、国全体でも考える時代です。今話題の働き方改革も、社員が肉体的にも精神的にも継続的に健康であることが大前提であるのは、言うまでもありません。

 こうして健康で快適な長寿社会が実現できれば、それは将来、高齢化が進む中国や欧米などで活用できる立派なビジネスモデルになるでしょう。高齢化先進国、課題先進国の日本だからこそ、この問題を克服しなければならない。解決のための具体的なアプリケーションを、デジタル化の助けを借りて実現したい。それが我が社のこれからの大きな使命だと思っています。健康で快適に長生きすること、それは私たち一人ひとりが意識を変え、企業や国がバックアップすることで必ず実現できます。快適な長寿と健康な社会を作るために何が必要か、皆さんのアイデアをお聞かせください。
(日本経済新聞2017年3月27日付)

◇    ◇

【アイデア編】

アイデア001 AIが新たな知恵生む
吉田 藍(海陽学園海陽中等教育学校中学2年、14歳)

 快適な長寿と健康な社会を実現するために必要なものは、人工知能(AI)などの技術的なテクノロジーであると思う。まず、正確な健康管理が可能になる。今の時代、体重計がWi―Fiに接続されていることが当たり前になっている。それを利用して、スマートフォンが歩数計や献立表の役割をし、栄養成分を計算して、正確なデータを出すことが可能だ。今後の健康な身体を維持するための計画も立ててくれる。人工知能が人の健康データを分析することで、新しい考え方や手段を見いだすことができる。少なくとも5年以内にはこれらのアイデアは実用化されることだろう。

アイデア002 体も心も健康にする歩数計アプリ
安田 穣(芦屋市立山手中学3年、14歳)

 健康というのは病気にかからないなど、体だけでなく、心の健康も含んでいる。だから健康寿命を延ばすには、心と体のどちらも健康に保てるようにする必要がある。そこで僕は今ある歩数計アプリを改良すればよいと思う。100歩歩くごとに1円、世界中の困っている人々に寄付することになる仕組みにすればどうだろう。資金は歩数計アプリの広告費から調達すればよい。このようなシステムを作れば、多くの人に歩く事を促すと同時に、社会に貢献する喜びを感じてもらう事ができる。そうすれば体と心のどちらも健康に保てるのではないだろうか。また、日本の全国民(約1億2700万人)が毎日1万歩ずつ歩いたとすると、1年間で約4兆6355億円もの寄付金が集まる。これを困っている人々に寄付すれば、それもまた快適な長寿と健康な社会につながるのではないだろうか。このようなアプリこそが必要なのだと思う。

アイデア003 これからの健康管理はトイレに委託
本橋 諒(駒沢大学グローバル・メディア・スタディーズ学部3年、20歳)

 病気は発症してからでは遅い。未然に防ぐことが大切で、健康管理や健康チェックは日ごろから継続することが重要である。しかし、多くの人はそれができないのが実情だろう。我々は毎日の習慣に健康管理を取り入れるべきだと考える。私は毎日する習慣の中で排便、排尿に注目している。排便や排尿でトイレを利用する際に指紋やICチップをかざし、個人データを識別。水を流す際に尿と便をトイレが自動で採取するシステムを作る。習慣から得たデータを積み重ねた上で解析し、結果が食生活などに対するアドバイスとともに毎日スマートフォンに送られてくる仕組みだ。会社や学校でトイレのシステムを導入すれば、大きな規模での健康管理が可能になる。このシステムが成立すれば人々の健康に対する意識を大きく変えることにつながり、健康増進に役に立つとみている。

アイデア004 菜園で世代超え触れ合い
柳田 信一(無職、71歳)

 私は100平方メートル程度の家庭菜園で野菜を作っている。野菜を作ると体をよく動かす。耕す、肥料を運ぶなど、足腰が鍛えられ、太陽も十分浴びることができる。また、野菜の成長を眺めていると気持ちも穏やかになる。このように心身の健康維持・増進に効果がある野菜作りを多世代で共有すれば、様々な世代に良い影響がある。子供たちにとっては、食物を育てる楽しさ、大切さ、生命の大切さを自分で考える機会にもなる。高齢者は自身の経験、知識を伝える場にもなる。壮年の世代にとっては、自分の将来を考える良い時間になる。触れ合いを密にするためには規模は小さいほうがよい。農地と人を確保するために、企業の出番があるかもしれない。健康社会の種まきになる。

アイデア005 歯にセンサー、体調を把握
木本 洋介(歯科医、38歳)

 天気予報アプリでは数分後の天候の状態を知ることができる。リアルタイムで自身の心身の状態を把握できるようになれば健康で快適な生活に一歩近づく。口の中の状態から得られる情報は多い。唾液、微量の血液、歯に加わる筋圧、頭部の傾斜度などを測定するセンサーを歯の表面に接着する。供給電力は圧力で生みだし、情報はWi―Fi(ワイファイ)で転送できれば理想だが、場合によっては充電と情報転送を兼ねた歯ブラシを用いてもよい。歯に接着することに抵抗がある人は、情報が装着時限定にはなるが、マウスピース型を用いれば給電も転送も簡単になる。万が一の徘徊(はいかい)時や、災害時の身元不明の際にも歯は最後まで残る可能性が高い。もちろん管理型社会への議論を深める必要があるのは言うまでもない。

【講評】越智仁・三菱ケミカルホールディングス代表執行役社長

  10代の若者から70代のシニアまで、快適で健康な長寿社会を実現するための様々なアイデアをいただきました。「菜園で世代超え触れ合い」は地域の子供からシニアまでが集まり、1つの共同体をつくるという発想が素晴らしいです。個人主義の台頭や過剰な個人情報保護の影響もあり、今の日本では、共同で何かをなし遂げる機会が減っています。多世代が一緒に体を動かし、野菜を育てることで、肉体的にも精神的にも健康になれます。こうした共同体に地域の医療機関や飲食店、青果店、精肉店などが連携してくれば、新しい流れが生まれる。適切な管理のもとで個人情報をある程度共有すれば、地域での介護や健康ケアにも役立つでしょう。

 「歯にセンサー、体調を把握」は、口腔(こうくう)に着目したのがおもしろいです。人は毎日、食べて生きていますから、口や歯は腸と並ぶ健康維持のための重要な情報拠点になります。何を食べているのか、どんな食べ方、かみ方をしているのか。こうした情報をIT(情報技術)を活用して分析し、各自に最適な食生活を提言できたらいいですね。

 「AIが新たな知恵生む」は実用性の高いアイデアです。スマートフォンなどを活用して、健康な生活ができるように、自分の体は自分で管理する。口腔などから得られる個人の健康に関する情報を、スマートフォンや歩数計などで管理し、それを地域の共同体で共有し、やがて市町村レベルまで広げる。九州のある町では、住民個人の健康情報を共有し、それを地域医療や健康指導、介護などに役立てています。もちろん個人情報の管理は厳格にすべきですが、せっかくの情報をある程度はオープンにしないと、もったいないと思います。健康な長寿社会を実現するためには、地域や職域などで健康などの情報を共有できる仕組みが必要です。
(日本経済新聞2017年4月24日付)

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