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[ career-働き方 ]

曽和利光の就活相談室グループディスカッションで
人事は何を見る?

authored by 曽和利光
曽和利光の就活相談室 グループディスカッションで人事は何を見る?

 就活生の皆さん、こんにちは。人材研究所(東京・港)の曽和利光です。今回新たに集まってくれた3人の就活生には、グループディスカッションをしてもらいました。面接と違い、自由な議論です。それをもとに何をどうやって選考するのか。自由にみえて、実はお手本となる手順と、明確なチェックポイントがあるのです。3人の議論をのぞいてみましょう。

今回の参加者
▽大杉佳代さん(関西大学化学生命工学部3年)
▽鬼崎未羽さん(東洋大学経営学部3年)
▽日下太郎さん(早稲田大学商学部3年)

人事が見るのは「知的能力」と「性格」

日下さん 曽和さんから、「新卒採用の問題点と改善策」というテーマをもらいました。まず問題点を話し合おうか。何かある?

今回は学生に自由に議論してもらい、曽和さんが講評した

鬼崎さん どこの企業も自社の良い点しか言わないので目移りしちゃう。あと、なんでそもそもこの時期にみんな同じように就活しなきゃいけないのかって......遅れたらダメなのかって思っちゃう。

日下さん 僕は、たった数分の面接で自分が判断されてしまうことがどうにも納得できなくて。だから企業もインターンシップをやったりしてるとは思うんだけど。でもインターンって、優秀な人しかいけない部分があるでしょう。

大杉さん インターンに参加できないと、会社を知ることもできないし、自分が悩んでる段階で、優秀な人が先に進んでしまうから、追いつけなくてしんどいと思います。

日下さん いま挙げた中で、いちばん問題と感じることってなんだろう。

鬼崎さん 私は最後に出た、優秀じゃない人には最初からチャンスがないってところだと思います。

大杉さん 私もそう思います。企業が良いことしか言わない問題は、OB訪問で対策できる部分もあるし。

日下さん じゃあ解決策を出していこうか。この問題に対して何をすればいいのか。

 3人の議論を見て、読者のみなさんはどう感じたでしょうか。グループディスカッションで採用側が注目する大きな柱は、「知的能力」と「性格」だといっていいでしょう。「知的能力」とはテーマをどこまで深く認識しているか、論理的に議論を進められるか、制限時間の中で段取りをつけられるか、など。「性格」は、積極的なのか、協調性があるのかといったことです。

 第一の「知的能力」。これを測るために、議論の進め方が、ある手順に沿っているかが重要視されます。順に言うと「現状認識」→「問題の明確化」→「原因分析」→「対策の検討」となります。

原因を突き詰めないと対策は練られない

 最初の「現状認識」では、就活ってこんなことが起きているよね、という認識を共有できたのはよかったですね。「問題の明確化」では、少し残念なポイントがありました。何が問題かを把握するときには、評価の軸が必要です。就活が、学生にとって困難な点を追究するのか、社会的に損失があるという視点で捉えるのか。3人の議論は自然に「学生にとって」になっていましたが、少し立ち止まって、どんな軸で議論するのかをはっきりさせたほうがなおよかったと思います。

 問題を特定できたら、次は「原因分析」です。このプロセスを3人は飛ばして、対策の検討に移ってしまいました。その問題がどうして起こるのかを把握しなければ、その後の対策が有効かどうか、判断できないはずです。インターンが狭き門だというなら、なぜそうなっているのか、を考えなければいけません。インターンに担当者をそれほど投入できないという企業側のマンパワー不足が原因なら、別の対策が必要になるからです。続きを見てみましょう。

その対策、実現可能?

鬼崎さん 私思うんだけど、就活解禁のときにみんながインターンのエントリーをするような感じで平等ならいいのにって。全員がインターンに参加できるように、入り口が広ければいいと思います。

日下さん 数分の面接で評価されるのが困るってことにもつながるけど、長期インターンみたいに学生が企業と触れる機会を増やせばいいと思う。学生生活を幅広く評価してもらって入社できる仕組みができたらいいなって。

鬼崎さん そうすれば学生も、もっと早いうちから就職を意識できるかもしれないかな。

日下さん まとめようか。インターンの機会が増えて企業を深く知ることができれば、最初にあった、企業がいいことばっかり言ってるっていう問題も解決できるよね。

大杉さん 選考の前に、企業ともっと関わり合える環境をつくるってことですよね。賛成です。

 対策を検討してくれているようですが、これでは対策とは呼べません。「企業と関わる機会を増やす」のは理想的ですが、それができないから困っているんですよね。問題点をひっくり返しても対策にはならない。文章にするとその間違いがよく分かりますが、緊張している本番ではよくあるミスなので注意してください。

3人のアイデアは抽象的すぎて検証レベルに達していなかった(グループ面接を講評する曽和さん)

 例えば、人事が学生と直接会うにはマンパワーの限界があるなら、せめて仕事の実情を説明している動画をホームページで公開したらよいのではないか――。こういった具体的な対策が出て、初めて「それが実現可能なのか」というような評価の俎上(そじょう)に上がるのです。3人のアイデアは、ちょっと抽象的すぎて、実現可能性を検証できるレベルにまで練り込まれていなかったと思います。

 「どれほどの効果が望めるか」も同様に対策を評価するポイントです。「直接会うのは100人が限界だけど、動画なら10倍の1000人には伝えることができる」といったように、アイデアの効果を曲がりなりにも見積もることができればベストですね。10倍という数字が妥当かというよりも、きちんと効果について検証してみたというプロセスが大切です。

 それでは、議論の終わった学生からの質問を聞いて、さらにグループディスカッション対策を詰めていきましょう。

どのポイントで自分を売り込むか

 ――みなさん、お疲れさまでした。どんなふうに議論を展開すればうまくまとまるのか、イメージはつかめましたか?

鬼崎さん 質問です。グループディスカッションで評価されるポイントというのは、企業によって違うものなんでしょうか?

 なるほど、いい質問ですね。「現状認識」「問題の明確化」「原因の分析」「対策の検討」という手順をたどるべきなのは、基本的にはどのディスカッションにも共通といえます。それぞれについて、企業側がチェックしたいポイントは何か。現状認識では、与えられたテーマについて日ごろからしっかり考えているかといった、アンテナの高さや感受性が問われます。問題の明確化では、皆さんの価値観や問題意識が大切になります。価値観次第で、問題と認識するかどうかも変わりますから。

 原因分析で重要なのは、論理的思考能力です。5回「なぜ」を繰り返すと真の原因に到達するなどと言われますが、そういった「なぜ」を通じて、どこまで問題の原因を深掘りできているか、ということになります。対策の検討は、発想力や創造性がポイントです。創造性は実は知識の量に比例する、つまりはどれだけの引き出しを頭の中に持っているかで左右される面もあります。知識のインプットはおろそかにしてほしくありませんね。

 手順の中のそれぞれのポイントは、企業や職種によって重視される度合いが異なります。まさに鬼崎さんが疑問に思った通りですね。例えば商品開発やマーケティングといった職種なら、創造性を重視するはずです。自分の強みと照らし合わせて、どこのポイントで積極的に発言したらよいか考えておいたほうがよいでしょう。

情報量が足りなければ落ちる

大杉さん インターンの選考でグループディスカッションをしたことがあります。そのとき、参加者の1人が仕切って、原因分析もしっかりやって、とにかく全部持っていっちゃいました。そんなときに自分がどう頑張ればいいのか、よくわからなくて......。

 なるほど。グループディスカッションでどう振る舞うか。人事が見るもう一つの柱が「性格」です。大杉さんは、他の2人と比べると発言は少なめで、意見を追認する役回りだったように思います。控えめなことは美徳ですが、就活の現場ではリスクにもなります。発言が少ないことは、面接官からみると情報量が足りないということなのです。判断材料がなければ、選考では落ちる可能性が高いです。大企業の場合、筆記試験や面接など選考の各ステージで、だいたい3分の2ずつ落としていきます。どんどん絞り込んでいかないといけないので、特に悪い理由は見当たらなくても、「よくわからなかったら落とす」と判断せざるを得ないのです。

情報量がたりないと選考の判断ができない(グループディスカッションを講評する曽和さん)

 だからといって自己主張するばかりではダメです。人事担当者は「アサーティブネス」という言葉をよく使いますが、要は闇雲に自己主張をするのではなく、相手が受け入れやすい言葉遣いに気をつけるという意味合いです。議論に割り込んでいくときには、「ごめん、ちょっと私にも言わせてもらってよいかな?」といった丁寧な物腰で、積極的に自分を打ち出してほしいと思います。

 今回の3人の議論からは、グループディスカッションで就活生が気をつけるべきポイントが明確になりました。まず、論理性などの知的能力と性格の双方が試される場だということを、しっかり念頭に置いてください。能力面では、(1)テーマに対する現状認識や問題の明確化に加え、その問題の原因も分析する(2)対策の議論では、実現可能性や効果を明確に示す(3)議論のどこに積極的に参加して自分の特徴を打ち出すかを意識する――この3点が評価を得る上で重要です。「情報量が足りない」とはならないように気をつけて、グループディスカッションを攻略してください。

曽和利光(そわ・としみつ) 1971年生まれ。京都大学教育学部卒。リクルート人事部ゼネラルマネージャー、ライフネット生命総務部長などを経て2011年、主に新卒採用を対象にしたコンサルタント事業の人材研究所を設立。著書に「就活『後ろ倒し』の衝撃」(東洋経済新報社)、「『できる人事』と『ダメ人事』の習慣」(明日香出版社)などがある。
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[日経電子版2017年3月8日付]

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