200社を企業訪問してわかったこと
人事部長のひとりごと(11)
学生の皆さん、こんにちは。株式会社HDEというIT企業で人事部長をしている高橋実です(HDEは企業向けのクラウドセキュリティーサービスなどを開発し、7,000社以上にソフトウエア、サービスを提供しています)。さて、いよいよ就職活動が始まり、企業回りをしている方も多いと思います。今回は「企業訪問」について少しお話ししたいと思います。
時間がある限り、さまざまな企業を見る
僕が皆さんと同じ学生だった頃(はるか遠い昔にはなりますが)、皆さんと同じように、さまざまな企業を回り、就職活動を行いました。当時は今のようにインターネットももちろん就活サイトもない時代で、自宅に申し込みハガキの冊子(就職情報誌)が送られてきて、その冊子についているハガキをせっせと書いてはエントリーをしていた時代です。
「知らない大人の世界が見たい」。僕は、たくさんの企業の情報が書いてあるこの冊子を熟読しました。知っている企業はごくわずか。大手企業の名前のほかにも、こんなにさまざまな企業が社会には存在するんだという驚き。とにかく色々な企業を見ていたい、時間の許す限り企業を見て回ってみよう、と。(スケジュール帳を生まれて初めて手にしたのもこの時でした)
正直言うと、当時の僕は、自分自身がやりたいことがよく分かりませんでした。そのため、自分のアンテナが立った企業はすべて、ひたすらエントリーして、見てみることにしました。冊子だけでなく、ゼミの先輩や、活用できるルートすべて使って企業にコンタクトをしていきました。そこで話していただく内容は僕が全く知らないビジネスの世界。この話をお伺いするのが、とても楽しみな時間になりました。
時間が合えば、さまざまな企業の人と会う。半年ぐらいかけて、平均すると1日1社以上のペースで企業訪問し、結局回った企業は約200社。自分でもよく回ったものだなと感心します。
見てみないと、分からないものはある
「200社も企業を回っても、無駄じゃないか」。確かにそういう意見もあるとは思います。でも、ここで僕が得たものは、とても大きかったのです。
一番大きかったのは、その企業が何をやっているのかを知ることができたこと。日常生活の中で触れる企業名やサービスは、ごくわずか。例えばクルマのメーカーひとつとっても、販売だけをしている企業や、部品の製造だけをしている企業もある。グループ会社には、じつは一見クルマとは全く関係のないような製品やサービスを取り扱っている会社もある。そこで、「なぜこんな製品やサービスを作っているんですか」と聞いてみたら、じつは本業のビジネスと将来的につながる仕組みを作っていたりする。製品やサービスの裏側にある考えを聞けるのです。僕は、この経験を通して、ビジネス社会がどのように構成されて動いているのか、知ることができました。
そしてもう一つは、企業の雰囲気を感じられたこと。会う社員の方々がパワフルでとても企業を愛しているのが分かったり、表向きはとてもいい企業に見えていても、会う社員の人に元気がなく、その企業の将来に不安を抱えていたり(実際にこういうケースは多々ありました)。
会社にいる社員が元気で活き活きと働いているのか。疲れ果てている社員ばかり、という企業もあります。取引先の方が多いのか少ないのか。企業の受付が汚かったり飾ってある花がしおれていたり。こんな企業は細かいことを大事にしない企業だったりします。
今は、ネットでたくさんの企業の情報が手に入ります。就活サイト、SNS、口コミサイト。でもこれは、全て他人が見た情報です。実際に足を運んで自分の目で見てみないと分からないことは、じつはたくさんあるんです。皆さんも是非、さまざまな企業に足を運んで、自分の目で感じるものを大切にしてほしいなと思います。
企業に足を運ぶのは大変です。でも、自分の知らない世界がそこにあり、その分必ず自分の力になります。是非、たくさんの企業を自分の目で見て、就活を思い切り楽しんでください!
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