日本経済新聞 関連サイト

OK
[ liberal arts-大学生の常識 ]

日本の漫画、米で人気
表紙デザイン独自に

日本の漫画、米で人気表紙デザイン独自に

 米国で日本の少年漫画の人気が盛り上がってきている。「オタクしか読まない」といわれてきた漫画だが、動画配信サイトで日本のアニメが流れるようになり、「進撃の巨人」などがヒット。米国版では米国人受けする表紙にするといったマーケティング手法も取り入れている。

 「『NARUTO(ナルト)』などの日本のテレビアニメを見て、少年漫画を10年ほど前から読むようになった」。米中西部のミシガン州に住むニック・ベイヤーさん(27)は、フルタイムで働くようになった今でもたまに漫画を読んでいるという。

 「『スーパーマン』などのヒーローが活躍する勧善懲悪もののアメコミ(米国のコミック)よりも、日本の漫画はまじめなテーマでストーリー展開も練られていて面白い」とベイヤーさんは評価する。

 米国で特に人気があるのが、日本の少年漫画だ。「ナルト」や「ワンピース」といった架空のストーリーが、10代の青少年に受け入れられている。対照的にサラリーマン向けなどの青年漫画は、日本のカルチャーや習俗といった面がどうしても色濃く反映されるため、一般の米国人には共感を得にくいとかなじみにくいとされているようだ。

 アニメの動画配信がきっかけで売れ行きが好調なのが、「進撃の巨人」だ。米国では漫画本のコレクターもいることから、表紙のデザインが日本よりも重要な意味を持つ。

 講談社USAでは、アメコミのファンも漫画に引き入れようと、5巻分をまとめた愛蔵版(約60ドル=約6800円)の表紙デザインを、アメコミのデザイナーにまかせるといった挑戦的な試みも行っている。

米国版の「進撃の巨人」は、表紙をアメコミ風に工夫する

 さらに、「進撃の巨人」の世界観を基本にしつつ、米国人の20人以上のアメコミライターに、新たなストーリーを描いてもらった。

 新ストーリーは「アタック・オン・タイタン・アンソロジー」(約30ドル)として2016年10月に発売された。米国の漫画市場では初版1万5000部で「好調」というのが目安だが、この新ストーリーは初版5万部。ヒットへの期待が込められ、実際に売れ行きもよいという。

 米漫画市場は、08年のリーマン・ショック後に落ち込んだものの回復してきた。講談社USAによると、14年に前年比19%増の4700万ドル、15年には同31%増の6200万ドルと成長を続けている。それでもまだ日本市場の30分の1程度の規模にすぎないが、「進撃の巨人」のヒットで漫画への関心が広がり、徐々にネットに流れていた客足が書店に戻ってきているという。

 米国では少年漫画が今なお主流だが、最近では、中高生向けの恋愛ものなど少女漫画の出版にも注力している。コンテンツの幅を広げ、読者層を広げて、市場が頭打ちにならないようにという戦略だ。

 講談社USAパブリッシングの小出花菜ジェネラル・マネジャーは「市場が活性化しているうちに、少女漫画や青年漫画などの出版にも挑戦していく」と意気込む。

 先々が楽しみなマーケットだが、課題もある。オンラインの海賊版だ。米国で漫画1冊を出版するまでには、翻訳作業や配給などを含めて3~4カ月はかかる。出版前にオンラインで英語の海賊版が無料で出回るケースも少なくない。

 実際にベイヤーさんはオンラインで漫画を読んでいる。海賊版の取り締まりが難しいなか、出版社は愛蔵版や米独自の企画本など、コンテンツとしての魅力にさらに価値を加える。そして読者をつなぎとめ、新たな読者も広げようとしているのだ。
(ニューヨーク=高橋里奈)[日経産業新聞2017年2月20日付、日経電子版から転載]

「日経College Cafe」のお勧め記事はこちら>>