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[ liberal arts-大学生の常識 ]

ニュースの見方(42)コンサル会社に就職するために
必要なコト

戸崎肇 authored by 戸崎肇首都大学東京特任教授・経済学者
ニュースの見方(42) コンサル会社に就職するために必要なコト

 就活が早期化していると報じられています。今回も就活をテーマに考えてみましょう。これでいくつかの業種を説明してきましたが、ここでは経営コンサルタント(以下コンサルタント)を取り上げます。高収入であり、公的な場面でも、有名なプレイヤーが様々な形で活躍し、世間から広く注目されている職業の1つです。将来は自分もコンサルタントとして成功したいと考えている人も多いのではないでしょうか。

ボストンコンサルティングやマッキンゼー

 コンサルタントが顧客とするのは企業だけではありません。地方自治体など、公的機関の運営にも関与し、政策の策定、実行を自ら行うこともあります。NPOなどの運営も扱います。

 コンサルティングファームとして有名なのはボストンコンサルティンググループやマッキンゼーなど外資系が多いのですが、日本でも大手金融機関などの傘下にある野村総合研究所、三菱総合研究所といったいわゆる「総研」なども有力で、就職先として人気があります。

 コンサルティング・ファームへの就職については、いったんどこかの企業に就職し、その経験を生かした形でコンサルティングファームに転職するケースが多いようですが、大学卒業後、すぐに入社する道もあります。その場合は、顧客とのコミュニケーションの取り方、効果的なプレゼンテーションの仕方など、入社後に徹底的に鍛えられることになります。実践を通じて顧客、そして上司の信頼を得、激しい社内競争の中で、より上位のポジションを勝ち取っていかなければなりません。

 一般的に、コンサルティングファームの入社試験では、独創力や瞬発的な計算力などが問われます。どのような問題が出るのかについては、『戦略的コンサルティング・ファームの面接試験』(マーク・コゼンティーノ著、ダイヤモンド社、2008年)など、書籍が出版されています。コンサルティング志望ではない方でも、読んでみると面白いと思います。たとえば、富士山を丸ごとトラックで輸送するとすれば、何台のトラックが必要か、といった計算を面接の場で即興的に計算させたりするのです。

MBAは必要か?

コンサル会社では、独創力や瞬発的な計算力などが問われる

 コンサルタントを目指す人がよく通る道は、ビジネススクール(経営大学院)に入学して経営学修士(MBA)を取得することです。ただし、MBAについては、どの大学院を卒業するかによってその価値は大きく変わってくるのが現状です。この点については、『結論を言おう、日本人にMBAはいらない』(遠藤功著、角川新書、2016年)を読んでみると大いに参考になるはずです。

 MBAのコースに入学する際には就業経験が入試の際に重視されますから、大学を卒業してすぐにMBAに入学すること自体が難しいですし、入学してからも実際に働いた経験がないため、講義についていくのがかなり大変になるでしょう。MBAを取得してコンサルタントになろうというのであれば、この場合もいったんどこかの企業に就職してから経営大学院を目指すということになると思います。

 コンサルタントとして成功すれば、年収数億円を得ることは可能です。しかし、それだけの待遇を勝ち取ることのできる「パートナー」と呼ばれる経営者、あるいはそれに準じたような上位のポジションに就くことができる人は極めて限られてきます。この点は弁護士の場合と似ています。

経験をいかして起業も

経験をいかし起業につなげる手もある

 その一方で、コンサルタントとして活動する中で得た経験をもとに起業し、成功を収める人も少なくありません。顧客である企業の活動に関し、その内部情報を十分に吟味しながら、かつ外部からの視点で見ることで、その企業が属する業界がどのような問題を抱えているのかを深く理解することが可能となり、それを改善するためのビジネスモデルを自ら考案し、実践することで、その業界で成功を収めることができるのです。その観点からすれば、将来起業を目指しており、かつどのような分野で起業を目指すのかがまだ定まっていない状況で就職活動を行うのであれば、コンサルティングファームなどはとても有益な経験を与えてくれる場となるでしょう。

 総研の場合にはコンサルティング機能に加えて、何等かのテーマについて研究をするという機能もあります。研究者よりも恵まれた待遇で好きな研究ができるのではないかと総研を志望する人もいるでしょう。ここで気を付けておかなければならないのは、民間企業としての研究所の場合、外部からの受託研究を行うことがメーンとなることが多いということです。民間の研究機関として、収益を挙げて経営を維持していかなければならないので、お金を払ってもらえる受託研究はとても重要であり。それを一定数こなした上で、初めて自分たちが本当にやりたい研究に取り組むことができます。

視野が広がるチャンス

 ここも違った視点から見れば、自分がそれまで考えもしなかった問題意識をもって研究することになるので、視野も広がりますし、研究が委託されるテーマは、それだけそのテーマについての研究に対する社会的ニーズが高いということです。そのテーマについていち早く研究し、その研究の蓄積を自分でも論文などの形で発表していけば、将来その道の専門家として生きていくことも可能ですし、大学教授などへの転身も考えられるようになります。実際、こうした努力の結果、スター・エコノミストになったり、大学教授として華麗な転身を遂げたりした方々を、筆者はたくさん見てきました。

 どちらにせよ、狭き門ではあり、入社後数年は、上司から命ぜられる資料作りに多大な時間を費やさなければならないなど、新卒からコンサルタントや総研の研究員としての成功を目指すのは大変でありますが、「アメリカンドリーム」のような成功者になりたいのであれば、トライしてみる価値のある道だと思います。

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