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[ career-働き方 ]

ホンネの就活ツッコミ論(6)簡単そうで難しい、
自己紹介の使い分け

石渡嶺司 authored by 石渡嶺司大学ジャーナリスト
ホンネの就活ツッコミ論(6) 簡単そうで難しい、自己紹介の使い分け

自己紹介からわかるもの

 早速ですが自己紹介の例を3点。どれが一番いいでしょうか?

A:「東洋大学から参りました石渡です。本日はよろしくお願いします」
B:「東洋大学社会学部の石渡嶺司です。石橋を叩いて世を渡る、と書いて石渡です。細かいことを調べる作業が大好きです。本日はよろしくお願いします」
C:「東洋大学の石渡です。アニメ『ガールズ&パンツァー』が好きで、好きなキャラクターは秋山優花里です。あの参謀キャラがいいな、と思う今日この頃です。秋山グッズのバリエーションを調べたのでそのうえで本日は色々とお話しできればいいな、と思います」

 さて、どれがいいでしょうか?

大正大学オープンキャンパスでの書道部のパフォーマンス

意外と奥が深い自己紹介

 まあ、大体の方はAかBを選ぶでしょう。が、答えは「時と状況による」。まず、ごく少数のガルパン(『ガールズ&パンツァー』の省略形なのです)ファンでさえ敬遠するであろう、C。実はこれだって、正解。例えば、同好の士が集まるイベントとか、あるいはこのアニメのキャラクターを使ったグッズを作る会議とか。

 就活の面接だと、AかBを選ぶ学生が大半でしょう。ところが、これも状況によって分かれます。面接担当者から次のように言われた場合は同でしょう。

 「では所属大学と名前を述べた後にご着席ください」

 こう言ったのであれば、断然Aでしょう。相手が「所属大学と名前」と条件を指定しているのですから、長々と話すのはどう考えてもアウト。当然ですが、Bだと話しすぎ、となってしまいます。

 一方、次のような指定があったら、どうでしょうか。

 「自己紹介を一言、お願いします。その後にご着席ください」

 これだと、Aだとあっさりしすぎています。その点、Bだとちょうどいいくらいでしょうか。

就活イベントのマナー研修の一コマ。挨拶も大事だが自己紹介も大事

あえて短く話すことも有効

 では、Bくらいの長さがいいのか、と言えばそんなことはありません。仮にグループ面接で、「一言」と指定されていながら、所属サークルから自己PRまで長々と2分、3分と話してしまう学生がいたとしましょう。ま、結構な確率でいます。問題はその後です。

 先に話した学生の話の長さにつられて、次の学生も長く話してしまう連鎖反応が結構、起きやすいのです。このとき、面接担当者は笑顔を見せつつ、内心では相当焦っています。と言うのも、面接、それもグループ面接は選考序盤に持ってくる企業が大半です。人物を見極めつつ、それでも選考対象者が多いわけです。そのため、時間をある程度、区切ってさくさく進めていく必要があります。ところが、自己紹介のところで長く話す学生が続くと、その後の予定が大幅に狂ってしまいます。

 と言って、質問回数を減らすわけにもいかず、面接担当者は内心ではかなりイライラしています。こんなとき、学生があえて短く話すとどうでしょうか。

 「東洋大学から参りました石渡です。テンポよく話すよう努力しているところです。本日はよろしくお願いします」

 おそらく面接担当者の評価は、この短さだけで相当上がるはずです。なお、短く話すかどうか、これは学生の所属も同じです。普通はせいぜい学部くらい。余裕がありそうなら学科・専攻まで話してもいいでしょう。逆に余裕がなさそうなら大学名だけで終わらせる方が無難です。

龍谷大学大阪梅田キャンパスの相談コーナー

誰に対して話すのか、状況は?

 自己紹介と言えば、名前ひっかけネタ、有名人と同姓アピールネタ、一言アピールネタ、趣味ネタなどいろいろあります。これも話す相手、それから状況によって、いくらでも変わります。たとえば6人のグループ面接で、5人、名前ひっかけネタが続いたとしましょう。

 小林「小林です。名前は小さな林、目指すはお客様にとっての大きな林の小林です」
佐藤「佐藤です。名前はサトウですが、シュガーのサトウではなく、ビターな味を目指す佐藤です」
谷「谷です。谷より深く、直球勝負と書いて谷です」
時井「時井です。時は金なり、なんて言いますが時間を正確に、そして井戸より深い人間を目指す、時井です」
三坂「人生には三つの坂、『あんな坂、こんな坂、まさか』があるとよく言います。まさかの時でも落ち着いた対応を目指す三坂です」

 それぞれ、微妙にうまいと言えなくもない自己紹介です。さて、最後に福本さんという学生がいたとしましょう。ここで名前ひっかけネタを出すとどうでしょうか。

 福本「福本です。あなたと仕事をして本当に福が来た、と言われる社会人を目指します」

 悪くはありませんが、6人連続で名前ひっかけネタだと、やや印象が薄いですね。となると、あえて他のネタに行くのは有効です。それから、誰に対して話すのか、そこも考える必要があります。

 たとえば、この福本さんが、「福本です。元NMB48の福本愛菜と同じ福本です」と自己紹介したとしましょう。福本愛菜さんを知っている関西圏の20代ないし30代くらいの社員ならまだぎりぎり有効です。が、福本愛菜さんを知らない社会人であれば、全く意味が通らない自己紹介になります。

 もし、この福本さんが野球ファンで、「福本です。野球ファンで盗塁王となった福本豊と同性です。業界の盗塁王と言われるように頑張ります」と話したとしましょう。もし、相手が40代ないし50代以上で野球ファンならかなりグッとくる自己紹介です。
しかし、これも福本豊さんを知らなければ全く通じない自己紹介となります。

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たかが自己紹介でも学生がよくわかる

 学生はこれまでの会話は同じ学生同士、狭い世界観に基づくもので十分でした。ところが、就活、それから、社会人生活となるとそうはいきません。営業に配属されて、得意先の社長の趣味が相撲だったら、相撲のことをある程度知っている必要があります。別の得意先の社長の趣味が競馬なら競馬も知っておく必要があるでしょう。

 では、学生のうちから相撲と競馬を知っておけばいいのか。そんなことはありません。そもそも得意先の社長の趣味なんてバラバラで、就活時点でわかるわけがありません。また、得意先の社長によっても性格は分かれます。趣味の話を喜ぶ人もいれば、友達じゃないのだから、と仕事の話しかしない人もいます。雑談の中で業界事情を話してくれるタイプを好む人もいます。

 要するに千差万別なわけで、どのタイプに当てはまるか、学生が今から無理に考える必要はありません。しかし、バラバラにしても相手に応じて会話を変えられるか、それとも自分の狭い世界観でしか話ができないのか。

 面接では採用担当者がさりげなくではありますが、その点もチェックしています。よく、「わずか数十分の面接で何がわかるのか」との批判があります。もちろん、数十分で学生の全てがわかるわけではありません。全てはわからなくても、一部をわかるには十分なのです。

そして、わかるきっかけの一つが自己紹介です。さて、学生諸君にお伺いしましょう。

 「あなたの自己紹介をどうぞ」

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