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熊本で“恩結び”(1)地震から1年
九州の学生らが立ち上がった お結びとは?

志藤大地 authored by 志藤大地九州学生復興支援プロジェクトお結び 初代代表、九州工業大学3年
熊本で“恩結び”(1) 地震から1年九州の学生らが立ち上がった お結びとは?

 あの日から1年が経ちました。1年前の4月14日21時26分に感じた強い揺れ。あの熊本の地震を機に自分達にできる事は何かないか。その想いで北九州の学生によって作られたのが、九州学生復興支援プロジェクトお結び(以下お結び)でした。

 僕らの活動理念は「恩結び」。これまで自分達が生きてきた間にたくさん貰ってきた「ご恩」を被災地に結ぼう。自分達がやっているのは大それた復興支援活動じゃなく、貰ってきたご恩を結ぶ「恩結び」だ。これが僕らの合言葉でした。

被災地で活動するボランティア

活動は物資の仕分けから

 お結びの活動は4月17日に福岡県、北九州市にある北九州まなびとESDステーションでの物資の仕分けから始まりました。前日にSNSに流した情報を元に、たくさんの人々が支援物資を持って来てくださったり、ボランティアとして参加の意志を表明してくださったりしました。あの日からお結びは、今日までたくさんのご恩を頂きながら活動してきました。

 これまでの1年間のお結びの活動を支えている活動理念があります。それはお結びを「自走式ボランティア団体」にすることです。自走式ボランティア団体とは、僕らが作った造語です。ボランティアを長期的に続けていくには寄付金や助成金だけを頼りにしていてはいけない、自分達でお金を生み出し、そのお金でボランティアを続けていこうという考え方です。それがどういうことかを説明します。

 僕らのメインの活動は学生派遣活動です。北九州で学生を集めて熊本の現地NPOや仮設住宅に派遣する活動です。これまでにお結びは21回の派遣活動を行い、150人をボランティアスタッフとして熊本に送りました。最初は壊れた田んぼの修繕活動から始まり、物資の仕分け、引っ越しの手伝い、仮設支援などなど多岐にわたる活動をさせて頂きました。

阿蘇神社再建のために

僕らが目指す自走式ボランティア団体とは?

 この派遣活動にはどうしても、熊本に行くまでの交通費、宿泊費がかかります。しかし、それを参加費として、お金のない学生ボランティアから取ってしまっては継続性に繋がりません。そこで、僕らは頂いている助成金と寄付を派遣活動に使わせて頂きながら、自分達でお金を生み出せることをしようと、これまで物販、資金調達、防災、食、観光、農業と6つのプロジェクトを立ち上げて来ました。

 つまりお結びの活動理念である、自走式ボランティア団体を実現しようと考えた僕達は、メインの活動である派遣活動を長期的に継続させる為に、お金を生み出せるプロジェクトを同時進行で進めました。その中で代表的な2つのプロジェクトを紹介させて頂きます。

 1つ目は物販プロジェクト。地震で倒壊してしまった阿蘇神社を再建するために熊本の地元の酒屋さんである阿蘇岡本さんが作られたサイダーを活用しました。その名も「蛍丸サイダー」というサイダーで、綺麗な黄緑色をしています。このサイダーを1本買う毎に100円が阿蘇神社に寄付されます。物販プロジェクトではこの蛍丸サイダーを原価で購入させて頂き、400円で北九州で販売しました。北九州の酒屋さんの協力を得て、学生たちが路上で販売した結果、一夏で1000本以上売ることができました。それによって将来のお結びの派遣活動の費用に回すことができたのです。

蛍丸サイダーを販売

「リアル人生ゲーム」で被災者を体感

 2つ目は防災プロジェクトです。熊本の地震をきっかけにお結びは日本における防災の重要性を感じていました。しかし、「防災活動をするぞ!」と言っても、元から防災意識の高い方にしか参加して貰えません。僕たちの防災活動は、防災に興味ない人たちにこそ参加してほしいと考え、「リアル人生ゲーム」というイベントを開催しました。誰もが1度はやったことがある人生ゲーム。これを北九州というフィールドを使ってリアルに再現しようというイベントです。

 当日、参加者は配られた職業とお金(ゲーム内通貨)を持って北九州を移動し、ゴールである北九州市立の宿泊型青少年施設「かぐめよし少年自然の家」を目指しました。移動する度に様々なイベントが発生し、自然の家に着いた参加者はそれぞれ家を購入しました。そこで突然、建物全体に警報が鳴ります。

 「地震が発生しました。直ちに避難して下さい」。このアナウンスに従って参加者は体育館に集められます。そこで行われたのが「リアル避難所運営ゲーム」。参加者は2つの設定にわかれます。1つはせっかく買った家を地震でなくし、避難所暮らしを余儀なくされた人々。もう1つは家が無事だったために避難所の運営側に回った人々です。

 この演出のおかげで、学校でやる防災訓練より、遥かにリアルな被災体験をして貰うことができました。このイベントの収益もその後に続いた派遣活動の費用に当てられました。お結びがこの1年間やってきた主な活動です。

リアル人生ゲームの様子

 お結びは4月15日をもって活動1周年を迎えます。僕らの目には熊本は今、復興という段階がほとんど終わったという所と、復興がまだまだ進んでいない所の差が大きく分かれて来ているように見えます。メンバーからは南阿蘇では水がまだ通っていない地域もあり、壊れた家に住んでいる方もいるという話を聞いています。お結びの活動はまだこれからも続いていきます。頂いてきたご恩はまだまだ返しきれてはいません。お結びがこの1年で頂いたご恩をこれからも、熊本の方々に結び続けたいと思います。

 次回はお結び発足から緊急支援開始までの話を書きたいと思います。

派遣したボランティアたち