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フリーミアムからIoTへ
日本は挑戦が必要

フリーミアムからIoTへ日本は挑戦が必要
authored by 森川 亮C Channel社長

 インターネットが商用化してすでに20年以上たちました。様々な産業がインターネットの誕生により変化しました。

 特にエンターテインメント産業における変化は顕著です。ネットを通じてコンテンツをダウンロードしたり、ストリーミングで楽しんだり、ソーシャルゲームのように対戦したりするなど、新しい事業やサービスの形態が登場しました。スマートフォン(スマホ)が誕生してからは「プレーヤー」と呼ばれるハードウエアの市場がスマホにシフトしています。

 そのことにより、CDやDVD、書籍が売れなくなりました。旧来のエンターテインメント企業は苦しい状況に追い込まれています。アーティストが収益を上げる機会が減ったという事実もあります。こうした流れも、大きな歴史の中では、小さい動きにすぎず、社会的そして産業的変革は始まったばかりなのかもしれません。

 エンターテインメント産業は書籍やレコード、ビデオなどのパッケージが生まれることにより、大きく成長しました。

 レコード販売は1870年代に始まりました。このことにより、音楽というコンテンツが初めてパッケージとして販売できるようになり、音楽産業が成長しました。

 その後、この市場はCDへ移っていきます。家庭用ビデオはその約100年後の1970年代に発売されました。レンタルビデオの誕生などにより、市場が拡大し、DVDへと進化しました。

 こうしてみると、エンターテインメント産業におけるパッケージ事業の歴史は、誕生から150年程度という段階で、オンライン化によって大きく変化していることがわかります。そしてパッケージ事業の動きの多くはソニーやパナソニックといった日本企業が主導してきました。

 新たに生まれているオンライン事業の動きの1つが「フリーミアム化」です。まずコンテンツを無料で提供し、その中における新しい体験を販売して収益をあげるというビジネスモデルです。無料でゲームをダウンロードしてもらい、ゲームを有利に進めるための「アイテム」を販売するのが代表例です。

 「モノ」を所有するよりも、斬新な体験をしたいという「コト」を消費者が求めるようになっていると言われています。フリーミアムに沿ったサービスはこれからも伸びるでしょうし、そのようなサービスに向けて新しいコンテンツのフォーマットも求められるようになるでしょう。

 フリーミアム化をけん引したのは韓国企業でした。ブロードバンドが普及した韓国では、コンテンツをだれもがコピーできるようになり、新しい収益モデルを作らないとエンターテインメント産業が育たないという課題に直面しました。その課題を解決する過程でまったく新しいゲーム体験が生まれたのです。

 日本のエンターテインメント企業はコピーを恐れるがゆえに、インターネットへの対応に関しては出遅れました。既存事業を守るために変化を遅らせた方が利益になるという考え方があったからだと思われます。

 これからエンターテインメント産業を変えると目されているのが、あらゆるモノがネットにつながる「IoT」です。米アマゾン・ドット・コムが開発した自動応答スピーカー「エコー」がその象徴です。

 エコーには音声認識機能があり、利用者の発する言葉に応じて音楽を検索します。人工知能(AI)で利用者の好みの音楽を探り当てて配信することもできます。アマゾンのようなIT(情報技術)企業が消費者に関するデータを持つようになると、日本企業の居場所がなくなってしまうかもしれません。新しいサービスモデルを日本から生み出すための挑戦が求められています。
[日経産業新聞2017年2月16日付、日経電子版から転載]

森川亮(もりかわ・あきら) 1989年筑波大卒。ソニーなどを経て2003年ハンゲームジャパン(現LINE=ライン)入社、07年社長。15年3月退任、4月C Channelを設立し、代表取締役に就任。

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