日本経済新聞 関連サイト

OK
[ liberal arts-大学生の常識 ]

ニュースの見方(43)銀行員=安定? 志望者が知っておきたいこれからの働き方

戸崎肇 authored by 戸崎肇首都大学東京特任教授・経済学者
ニュースの見方(43) 銀行員=安定? 志望者が知っておきたいこれからの働き方

 金融とIT(情報技術)と融合したフィンテックの台頭や相次ぐ地方銀行の統合など銀行を取り巻く環境は大きく変化しています。しかし、銀行は経済の潤滑油といわれ、経済の中心的な存在であることに変わりありません。就職先としても昔から安定的な人気を保っています。公務員とならんで手堅い職業であり、銀行員は社会的評価も高いというイメージも健在です。大手銀行で活躍することができれば、将来、財界の中でも重きを置かれ、銀行を退社した後でも様々な企業や組織から経営者として引く手あまたとなるでしょう。

日々情報収集

 もちろん、そのためには高度で複雑さを増す金融の仕組みをしっかりと勉強し理解した上で、現実の世界で実践していかなければなりません。大学で金融論などを専門に学んでいれば有利ではあるでしょうが、現場では通用しない部分も出てくるでしょう。市場は常に進化していますので、どれだけ日々情報収集し、柔軟にそれを応用していくことができるかという実践力が問われることになります。

 また、市場から預金を集め、それを企業などに融資して、利ざや(収益)をあげていかなければなりません。優秀な銀行員として評価されようというのであれば、単に企業にお金を貸すだけではなく、貸出し先の企業と共に歩み、それを育て、成長させていくことによって、共存共栄を図っていくことが求められます。

経営にアドバイス

 この観点から、企業経営や組織運営にも通じていることが求められます。借り手に対して適切なアドバイスを行っていくことが必要です。バブル崩壊後大きな批判を浴びたように、相手が必要としないお金を無理矢理貸し付けて、いざ相手がダメになったらそっぽを向いてしまい、何としても貸した金を取り戻そうとする「貸しはがし」をするような者はとてもバンカーとは言えません。

経済環境に応じ銀行も変化を求められている

 借り手に対して適切なアドバイスを行うためには、当該業界の事情にも通じていなければなりません。さらに、ただ通じているだけではだめで、第三者的な観点から斬新なアイデアを提供できるかが鍵となります。そのためには、常に様々な情報を集め、それを有効なタイミングでいかせるような瞬発力を育てなければなりません。

 近年は、銀行が本来持つべきこのコンサルティング能力が非常に低下してきているという批判があります。リーマンショック後は特に内向きの姿勢になってしまい、銀行の社会的役割を果たそうという気概がなかなか感じられません。

 しかし、銀行にはそれだけの社会的影響力があるのですから、これから就職を目指す皆さんはそうした観点から関心を高め、大志を持って活躍できる銀行にアプローチしてほしいと思います。

「銀行=安定」は過去の話

 現在の銀行業界は、安定性が昔とは全く違っています。筆者が就職活動を行っていた1980年代半ば、銀行は絶対につぶれない、最も安定した業界だと信じられていました。財閥系の名だたる銀行へは、一流大学と呼ばれる大学の学生が殺到し、狭き門を争ったものでした。

 ところが、現在、当時の行名のままで継続して営業している銀行はほとんど見当たりません。2000年前後の統合を通じた再編によって業態も名前も変わってしまいました。北海道拓殖銀行のような大手銀行も経営破綻して消滅してしまいましたし、銀行の中で人気の高かった長期信用銀行も、バブル経済の崩壊によって経営破綻し、国有化を通じた再建によって名前を新たにしています。こうした銀行に就職した筆者の同期生達の多くは転職を経験し、現在は外資系企業などに新たな活躍の舞台を見出しています。

地銀、進む淘汰 高まる役割

地銀再編は今後も進みそう(関西地銀3行統合の発表会見風景、3月)

 今後は特に地方銀行(地銀)の淘汰が進んでいくと考えられています。日銀のゼロ金利政策の影響を最も強く受けているからです(この点に関しては、廉了『銀行激変を読み解く』を読めばよくわかります)。地方の大学を卒業して、その後も地元に残りたい、あるいは郷里で就職したいと願っている皆さんにとって地銀や信用金庫などは人気がありますが、その動向については慎重に見ていくことが重要です。

 昨今では地域を超えた地銀の経営統合の話がよく報道されるようになりました。こうして経営力の強化を図ることは望ましいことでしょうが、それだけ地域との関わり方が希薄になり、従来、地域との密接な関係性の中で構築されてきた競争力が低下していく危険性もあります。

 近年、日本の重要な政策課題となっている地方創生を実現していくためには、地銀の役割は従来以上に問われることになります。厳しい競争環境にあっても、公的使命を忘れないという責任感を持てる人にバンカーとなってもらいたいと思います。

銀行業で起業も

 現在は、従来型の銀行だけではなく、セブン銀行などの新しいスタイルの銀行も台頭しています。私たちが銀行を利用するやり方も大きく変わってきました。ネットバンキングは広く普及していますし、デビットカードの出現など、決済の方法も多様化してきました。銀行業は起業の対象としても考えられるようになりました。一定期間銀行で修行を積んで、自分で理想とする銀行を立ち上げてみることも夢物語ではなくなっています。

 大手銀行を目指すもよし、戦国時代だからこそ、特徴のある銀行を選ぶもよし。どちらにせよ、その社会的意義が減ることはない銀行業。これまで関心のなかった皆さんも、是非一度この業界についてよく考えてみてください。

「日経College Cafe」のお勧め記事はこちら>>