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日本の農業や漁業を体験、
合法民泊サイトが人気

日本の農業や漁業を体験、合法民泊サイトが人気
京都など観光地でも民泊は人気

 一般住宅に有料で旅行者を泊める「民泊」。日本でも利用が急増しているが、旅館業法を無視した違法物件が多い。百戦錬磨(仙台市)の子会社、とまれる(東京・千代田)は合法物件だけを集めた民泊仲介サイト「STAY JAPAN(ステイジャパン)」を運営している。農業や漁業などの体験にこだわり、訪日外国人客からも注目を集めている。

 「船さのりだがったら、うちんこい!」。ステイジャパンで人気を誇る、岩手県久慈市の菅原忠信さん(72)夫婦の宿のキャッチコピーだ。とまれるの手を借り、14年に紹介ページを作成した。

 初めは小学生の研修を受け入れていたが、スキマ時間でステイジャパンの宿泊者を泊める。日本人のほかスリランカやブータンからの海外旅行者など、これまで約30人を迎え入れている。

 菅原さんは漁業体験などをしながら宿泊できる「農林漁業体験民宿」を運営している。宿泊者の起床時間は朝5時。一緒に漁船に乗り、タコ漁などを体験してもらう。季節や天候の関係で漁に出られない時は、山菜採りや郷土料理作りといった体験も提案している。

ステイジャパンでは農業、漁業などの体験型宿泊を提供している

 ステイジャパンには現在、約500件の登録物件がある。民泊世界最大手の米エアビーアンドビーの4万8千件と比べると規模は小さいが、うち半数が内容の詰まった体験型の宿という少数精鋭だ。菅原さんの宿も2食体験付き1泊8500円で、充実した内容が人気を呼んでいる。

 三口聡之介社長は「地域に密着したディープな体験ができる」と強調する。農林漁業体験民宿は専用の法律があり、特区などでマンションや戸建て住宅の民泊物件を運営するのと比べて参入しやすいことに注目した。

 サイトの使い方は簡単だ。検索ページで行きたい場所と滞在日時、宿泊人数を入力すると最適な宿を表示する。宿の紹介ページにはイチオシ体験や食事内容、貸主が決めたルールを掲載。宿泊者の口コミも読める。

 体験民宿の1泊あたりの平均宿泊料は1万円程度。とまれるは宿泊料の10%を手数料として徴収する。

 体験は農業や漁業だけではない。民芸品づくりといった田舎体験ができる築100年以上の古民家、2千冊を超える漫画に囲まれた部屋、ヨガや写経が体験できるお寺――。何度利用しても楽しめるよう、様々な宿を用意している。各地の酒造会社と提携し、年内にも酒蔵見学や限定酒を堪能できる宿を開く予定だ。

 農林漁業体験民宿は60歳を超えた貸主が中心で、外国語が壁になることもある。そこで今春にもタブレット(多機能携帯端末)を使った通訳サービスを導入する。外国語が話せなくてもジェスチャーで交流している貸主も多いが、苦手意識がある人を助ける。

 ステイジャパンのもう1つの特徴が合法物件だけを扱っていること。民泊は現在、東京都大田区など特区を活用する場合を除けば、旅館業法で定める「簡易宿所」の許可が必要だ。現実にはこうした基準を満たさない物件が大半を占める。

 こうした背景から、とまれるは登録物件を厳しく審査し、物件を登録するごとに近隣住民へのポスティングや説明会で周知を徹底している。農林漁業体験民宿を除く物件は全て特区内だ。

 政府は年間180日の上限を設けたうえで、全国で民泊を解禁する新法を検討している。三口社長は「正直者がばかを見ないよう、新法制定に期待したい」と打ち明ける。
(吉田楓)[日経MJ2017年3月1日付、日経電子版から転載]

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