日本経済新聞 関連サイト

OK
[ skill up-自己成長 ]

ジュリアード@NYからの手紙(6)ジュリアード生の春休み
~テック業界探訪inシリコンバレー

廣津留すみれ authored by 廣津留すみれ米ジュリアード音楽院2年生
ジュリアード@NYからの手紙(6) ジュリアード生の春休み~テック業界探訪inシリコンバレー

「#NuggsforCarter」で起こったこと

 皆さん、「#NuggsforCarter」というハッシュタグをご存知でしょうか。4月5日、ネバダ州在住の16歳カーターくんがTwitter上で「チキンナゲット1年分無料にしてほしいんだけど、何リツイート(RT)必要?」と、ファストフードチェーンのウェンディーズのアカウントに向けて尋ねました。

きっかけとなったカーターくんのやりとり

 すると「18 Million」、つまり「1800万RTゲットできれば1年分無料にしてやるよ」という答えが返ってきました。そのユニークな答えに世界中のTwitter住人たちが続々とリツイートを始め、有名人も反応する騒ぎに。

 マーケティングの才能で知られる、アメリカの携帯会社T-MobileのCEOのJohn Legereに至っては、カーターくんが撮ったスクリーンショットを見て、「君がAT&T(米国の携帯キャリア)を使ってるなんて非常に残念だ。もしAT&TからTモバイルに乗り換えてくれたら、僕がチキンナゲット1年分無料にしてあげるよ」と言い出す始末。政治家や有名企業の公式アカウントからの応援リツイートを受けてRT数は驚異の伸びを見せ、3日で180万RT、5日で240万RTという数字を見せつけました。

 世界中から、この若者を応援しようという結束力とSNSのパワーを感じますが、さらにすごいのはこれを活かそうと一歩先のアイデアを思いついたカーターくん。こんなに人々の応援を受けるなら、チャリティー活動にしようじゃないか! と一念発起。ハッシュタグを全面に出したTシャツを作成して、1枚$20でTwitter上で売り出しました。

 利益はガン患者などへ100%寄付とのこと。さらにウェブサイトを作って自分のファミリーヒストリーやチャリティーへの思いをまとめ、募金をしやすくする仕組みを考えつきました。日本にはあまりない募金文化ですが、自分のツイートへの人気と支援を社会に還元しようと発想の転換をする彼には感心しました。(https://nuggsforcarter.com/)

シリコンバレーに潜入捜査

 さて、このようにしてIT企業が強大なパワーを発揮する昨今ですが、私はジュリアード音楽院の春休みを利用してサンフランシスコ・シリコンバレー地域を旅してきました。Twitterを始め、Google、Pinterest、Facebook、Apple......、大小関わらず数々のテック企業が点在し優秀な人材が集まってくるこの都市には一体どんな秘密があるのか? 今回、潜入捜査してきました!

 旅のきっかけは2つ。ハーバード大卒業からほぼ1年が経ち、寮生活で毎日のように顔を合わせていた同級生が突然世界中にちらばってしまい、直接近況を聞けなくなってしまった寂しさ。そして、音楽以外の分野で頑張っている仲間から話を聞けば私のモチベーションも上がるのでは、という思いでした。

LinkedInにて朝ごはん

最初の目的地:LinkedIn

 日本ではまだ浸透していませんが、LinkedInはいわばビジネス特化型のSNSで、自分の学歴や職歴、資格などを記録すると、名刺代わりにも履歴書代わりにもなる優れたプロフィールサービスです。昨年マイクロソフトが262億ドルで買収したことで話題にもなりました。

 大学時代に仲の良かった友達は今エンジニアとして働いており、朝食を一緒に食べよう! と言ってくれたので社員食堂にお邪魔。バイキング方式で、社員とその客は好きなだけ食べ放題。種類も豊富で満足のいく味でした。食堂はとても広く、朝食を食べながら3人ほどのチームで軽くミーティングをしている姿も見られました。

 当日は大変天気が良く、建物の外も気持ちが良かったのですが、LinkedInの敷地は広く、メイン棟以外に部門ごとにいくつものビルがあります。そこで活躍するのが、テーマカラーの青色を使った自転車。各建物に何台か置いてあり、目的地までたどり着くとそこで乗り捨て。時間や場所で自転車の使用台数は変化しますが、LinkedInではアルゴリズムをつかって自転車の配分を決めているそうです。さすがテック業界、どこまでもハイテク。

LinkedInカラーの移動用自転車

 ここで一番印象に残ったのは、自由に使えるラウンジの多さでした。屋内の気持ち良いソファーから、窓際のすっきりとしたテーブル、屋外のビーチチェアまで、ありとあらゆる座席がそろっていて、皆本当に自分の机なんてあるのだろうか、と思うほど充実していました。さらにジム設備はもちろんのこと、無料でドリンクを注文できるスタンド、自由に飲食物を取り放題の冷蔵庫とお菓子棚など、すきま時間に頭をすっきりさせられそうな環境が整っていました。

同級生とグーグル本社にて

第2の目的地:Google

 ハーバードのオーケストラで一緒にバイオリンを演奏していた友達がリサーチ部門で働いています。髪が半分濡れたままの彼女は、「今日はノー出勤金曜日(No Work Friday)なので家でまったりしてた!」とシリコンバレーのワーキングカルチャーが垣間見られるセリフと共に登場。チームメンバーに子育て中のお母さんがいたりするため、チーム一丸となって働き方を工夫しているそうです。

 エントランスにはいきなりロッククライミングの壁があり、実際に社員の方が登りながらお出迎え。「私も自分の部門以外は何がどこにあるのかわからないのよ」と友達が言う通り、端から端までは歩くことができないほどの距離です。その端に位置するVR(仮想現実)部門で働く同級生も誘ってランチをしました。彼はまだ未公開のプロジェクトに関わっているそうで、ローンチして皆に届けられるのが楽しみ、と目を輝かせていました。

ハーバード時代の同級生そろってランチ

Facebookの新オフィスビルMPK20最大の魅力、屋上庭園にて。後ろには海がみえる

第3の目的地:Facebook

 Facebookでは、建築家のFrank Gehryがメンロパークに建てた新しいオフィスビル「MPK20」で仕事をしているハーバードの1つ上の先輩方5人と昼食(2度目)をとりました。食堂は「数えられないくらい」あるそうですが、そのうちの1つで、様々なアジア料理を置いてある食堂にお邪魔しました。この新しいビルはワンフロアまるごとほぼ扉のない設計になっており、奥まで見渡せる不思議な設計と、美しい屋上庭園が魅力でした。

 ハーバードの今年の卒業式はFacebook CEOのザッカーバーグがスピーチをすることが発表されましたが、彼もこの建物にオフィスがあり、出張の合間に顔を出しているそうです。

おまけ(スタンフォード大学)

 その帰りにスタンフォードの大学院で生物学を学んでいるハーバードの同級生を訪ねました。スタンフォード在学生が立ち上げたスタートアップの建物を借りてパーティを主催しており、遅くまで残って研究室で作業をしていた院生や、主催者たちの仲良しの学部生たちが集まってきて大変賑やかな夜となりました。キャンパスを訪問するのは2度目でしたが、夜は彫刻や建物が月明かりに照らされて、まるで違う学校に来たようでした。日頃はニューヨークの小さな建物にこもっているため、広大なキャンパスがうらやましくも思えました。

スタートアップでのパーティー

最後に

 サンフランシスコ・シリコンバレーで見てきたテック業界の待遇は、日本ではあまり見られないレベルでした。あまりの環境の良さに、「一度大きいテック企業で働き始めると、甘やかされすぎて、その世界から出られなくなる」という皮肉な見方もあります。また、ハーバードなど東海岸の学校と比べると、西海岸のスタンフォード大などは学生がリラックスしていると言われることも多いですが、実は"Duck Syndrome(あひる症候群)"と言われ、表面では良い天気の下で楽しい学生生活を送っているように見せていても、実は水面下では忙しく、足をバタバタさせている、という現象もあるといわれます。しかし、私にとってはそれでもかなり刺激的で面白いエリアでした。

 以上、広大な敷地でのびのび自由な発想を作り出すことが求められる、テック大国シリコンバレー訪問記でした。

お知らせ
ブログを始めました。毎日日本時間の朝7〜8時ごろ更新中です!
https://sumirehirotsuru.com/